悪魔の目的地 第五十話
翌朝、いつも通り出勤した。
いや、全くいつも通りではないのだが…。
いつもと違う家から、いつもと違う道を歩き、いつもと違う電車に乗る。
そして、いつも通りの時間に、いつも通りの職場へ出勤する。
職場の前に来ると、また動悸が始まった。
この、いちいち苦しくなるのが本当に厄介だった。
大丈夫…
大丈夫。
私にはシンさんがいる。
もう一人じゃない。
扉を開け、真っ直ぐロッカールームへ向かった。
『おはよう。』
思わず息が止まる。
『…はようございます…。』
辛うじて、声は出た。
『なんで電源切ってるの?携帯。』
『…ごめんなさい。』
『どこにいるの?どこに泊まったの?』
『…。』
『男?』
『…。』
『やっぱり男いたんだ。そうだと思ったよ。俺ばっかり責めやがって。』
心臓が、破裂しそうだった。
『おはざまーす。』
須藤が雑な挨拶と同時に扉を開けた。
『…おはよ。』
『あ、おざまーっす。え…。口、どーしました?』
『ううん。』
私は無理矢理口角を上げ、ロッカールームを出た。
ここから先は
3,518字
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?