ガーナの裁判システムの面白いところ
2020年3月3日、AccraのThe Law Courts Complexという裁判所を訪問しました。インターンとして人権問題に取り組む前に、ガーナの裁判システムを知ってほしいという上司の取り計らいで実現した訪問でした。見学させていただいた裁判の内容は、必要な手続きを踏まずに輸入した製品の中に マリファナが含まれていたというもの。
今回の裁判見学で、ガーナ特有の面白いと感じた点がたくさんあったので、今日は3点に絞って書きたいと思います。
まず、基本的なガーナの司法システムについて。
ガーナの裁判所は、下級裁判所→高等裁判所→上訴裁判所→最高裁判所(憲法裁判所も兼ねる)という順で構成されているそう。高等裁判所の中には、「人権裁判所」「人道裁判所」など、分野によってスペシャライズされたコートがあるのが特徴的です。(参考) http://www.judicial.gov.gh
1、英国裁判を模した裁判
ガーナの法律のほとんどは、1957年までガーナの植民地支配国であったイギリスの法律に基づいています。イギリスのCommon Lawを採用しているため、裁判の仕組みもイギリスの裁判の形を完全に再現しています。
裁判所に入って一番最初に驚いたのは、LawyerからJudgeまで、みんな古代イギリスヘアのカツラをかぶっていたこと。黒いガウンを羽織って、服装までバッチリイギリス人です。外見の全く異なるガーナ人が、イギリスの金髪カツラをかぶっていることが違和感ありありでした。私の目には旧支配国のイギリス人に似せることで、ガーナ人のアイデンティティーを否定しているようにも見えたのですが、ガーナのLawyerにとってこれを被れることは一種の誇りでもあるらしいです。しかし、イスラム教を信仰する女性弁護士は、裁判中にはHijabを着用することが許されない(カツラを被らないといけないから)など、宗教との衝突もあるようです。
ここまで英国裁判を完璧に再現しようとしているのはなぜなのか。それは、ヨーロッパのような司法システムが当時全く確立されていなかったガーナに、司法の威厳を見せつける意味があったようです。司法システムがガーナ国民に信頼されることが、政治的安定につながるからと、このようになったそう。面白いですね。
2、「聖書に誓うか、コーランに誓うか」
裁判を見ていると、witnessが発言する前に、「あなたは聖書に誓いますか、コーランに誓いますか」というようなことが聞かれていました。そのwitnessが選択したのは「聖書」。その後、隣の弁護士が聖書の誓いの言葉を読み上げていました。
ガーナはとても信仰心が強い国です。最新の2010年の調査によると、ガーナ全人口の71.2%がキリスト教、17.6%がイスラム教を信仰しているそう。二つの宗教が争いなく共存しているのもガーナの独特な点ですよね。(参考) https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/fields/401.html
そのため、裁判でも、自分の発言に嘘がないか、宗教によって誓いの言葉が変わるのです。
3、Court Translatorというお仕事
ガーナの裁判でユニークなお仕事に、Court Translatorというものが存在しています。裁判所だけで働いている通訳さんです。これは、ガーナで話されている現地語の多様さに関係しています。
ガーナのOfficial Languageは英語です。そのため、裁判中に話される言葉も英語に統一されなくてはなりません。しかし、ローカルな言語が250以上あると言われているガーナ。証言をする人々も多様な現地語を話します。裁判中に彼らが現地語を話すと、隣にいるCourt Translatorが即時に英語に訳します。
たとえJudgeやLawyerがその現地語を理解していたとしても、「裁判は英語で行う」という形式を守るために英語に通訳されるのです。面白い。
ここでもう一つ疑問が上がると思います。ガーナのOfficial Languageは英語で、どうして証言者たち(のほとんど)は現地語で話すのか。それは教育普及度の低さが理由です。学校では英語で勉強するけど、すべての人に教育が行き届いているわけではない。Ofiicial Languageは英語なのに、ガーナ国民全員が英語で話せるわけではないのです。もどかしく感じてしまいます。
以上ガーナの裁判のユニークなこと3点でした。
他にもCourt Typistのタイピングがとっても遅かったり、裁判の前半は弁護士さんが必要書類を揃えていないことの説教に1時間を費やしたりと、ガーナらしいルーズさにも驚きました。(笑)
ガーナに行く際にはぜひ裁判にも注目してみてください。
次回もお楽しみに。