【毎週ショートショートnote】クリスマスカラス
※すでにお題の募集は終わってますが、自分でも面白い話だと思ったので、投稿しまーす。(めっちゃ長くなっちゃったけどご愛嬌を)
あえて、#毎週ショートショートnoteをつけておきます。
カラスは魔女のつかい、と言われている。
ある日、一匹のカラスが魔女からお呼びを受けた。
魔女「私は魔女として怖れられているみたいなんだけど、これからの時代、好感度を狙っていくのが一番だと思うの」
カラス「カァ〜(正直どうでもいいんですけど…)」
魔女「もうそろそろクリスマス。そこで、私はこの一大イベントを利用し、魔女の好感度アップ大作戦を敢行いたします。協力してくれるわよね?」
杖を突きつけながら迫ってこられたらそりゃ〜
カラス「カカァ〜(はーい喜んでー!!)」
ということで、カラスは内心イヤイヤになりつつも、魔女のあくどい作戦に乗ることにした。
どうやら、かつての恋人であるサンタクロースがソリに乗って、プレゼントを配り子どもたちから人気を得ていることが悔しくてたまらないらしい。
口には出さないものの、日頃から魔女のそばにいるカラスからしたら、ほぼお見通しだ。
魔女「でも肝心の作戦内容が全然思いつかないのよね〜。何かない?」
カラス「カァ〜(そうっすね〜)」
小さい頭で一生懸命考えていると、あることを思いつく。
カラス「カカァ〜(思いつきました!)」
魔女「なにぃ〜!!ナニナニ?」
そう言って、カラスは魔女の耳元で自分の考えを伝えた。
勢い余って耳を突かないように気を配りながら。
その作戦内容を聞いて、魔女は驚いた。
とても小さな頭から捻り出されたアイデアとは思えない。
なんといっても、魔女の強みとカラスの忌み嫌われる点を最大限活かしたナイスアイデアだと思った。
そのアイデアに乗った魔女は早速、魔法のクスリを作り始めた。
クリスマスまでは日がない。
魔女は寝食忘れてクスリ作りに没頭した。
実験台になったカラスたちは時に、自分の体が赤になったり、吐き出された息が黄色になったりという現象に戸惑ったが、そんな苦労を乗り越えクスリは無事完成。
12月25日。クリスマス当日を迎えた。
魔女は、カラス一匹一匹にクスリを飲ませ、家族や恋人で賑わう街中へと彼らを放った。
早速彼らは、人々の頭上を飛び交い、フンを落とし始める。
当然人々は迷惑し、子どもは泣き出す始末。
カラスが落としたフンによって車同士がぶつかったり、フンを避けようとして転んだりと、あちらこちらで小さい騒動が起き、パトカーが出動してくる大騒動となってしまった。
だが、次の瞬間に不思議なことが起こり始めた。
落とされたフンが何やら光り始めたのだ。
その光は、赤くなったり青くなったりを繰り返し、まるで電球のよう。
ところどころで落とされたフンはやがて、光の粒となって街中を煌めき出す。
先ほどまで泣いていた子どもはいつの間にか泣き止み、その光景に釘付けになっていた。
恋人たちは肩を寄せ合いながら、色とりどりに輝く木々を見つめていた。
七色に輝くそれは、人々が寝静まる時間になっても、変わらない輝きをいつまでも放っていた。
この不思議な出来事は後世語り継がれ、それを再現すべく始まったのが、イルミネーションクリスマスといわれている。
役目を終え、清々しい気持ちになったカラスは魔女の元へと帰っていく。
その時、ある一匹のカラスが思わずフンを落としてしまった。
それがなんと、サンタクロースの肩に落ちたのだ。
サンタクロース「ん?なんだ?この光る物体は?」
キレイだなぁと思いしばし見つめるサンタクロースは、かつて愛したある人のことを思い出していた。
せっかくのクリスマスだ。会いにいくぐらい良いだろう…。
こうしてサンタクロースは、ある人へのクリスマスプレゼントを胸に、
ソリを走らせたのだ。
そして、年が明け、幾千の季節を経て、再びクリスマスがやってきた。
妻「いってらっしゃい、あなた」
髭もじゃのほっぺにキスをしながら、妻は最後まで夫の無事の帰宅を願った。
夫「いってくるよ」
赤い服に、トナカイのソリ。先ほどからカラスがトナカイにちょっかいをかけている。
それを妻は止めながら、続ける。
妻「まさか今年はこんなに幸せなクリスマスを迎えられるなんて。あなたのおかげよ」
夫「僕もだ。愛しているよ」
そう言って、プレゼントを待ち侘びる人々のために飛び立った。
トナカイが通ったところが七色に光っている。妻が作ってくれた魔法のクスリはトナカイにも効くようだ。
去年よりもだいぶ穏やかな表情の魔女は、カラスたちと共にいつまでも、夫であるサンタクロースの姿を見つめていた。
(これはシロメガネが勝手に作ったフィクションです)