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「日本のクリスティー」を並べたい私のために

積読のせいで、なにきっかけで知ったか、もう思い出せないけれど。
第3回江戸川乱歩賞を受賞し「日本のクリスティー」と呼ばれた仁木悦子さんの著作を読んでみた。

セリフからも漂う昭和の香り。なんだか落ち着く。

シリーズものは、できるだけ文中の時系列に沿って読みたい。そしてシリーズごとにまとめたい。
子どもの年齢などを参考に文中の時系列順にしたつもりだが、わからないものは刊行順とした。(電子書籍のみ)

シリーズとして認識したのは三つあって、

  • 仁木兄妹シリーズ

  • 三影潤シリーズ

  • 吉村駿作シリーズ

ノンシリーズ扱いは、シリーズの後にまとめた。

仁木兄妹シリーズ

仁木雄太郎(兄)と仁木悦子(妹)。冷静な植物学者、探偵役の兄と、好奇心いっぱい、行動力では右に出るものがいない妹。
二人で解く長編シリーズとは別に、既婚後の別々の活躍を描いた短編集もある。

猫は知っていた 新装版


戦後の跡がまだ残っている昭和が舞台。
ワトソン役の悦子さんの語りで進む。目端のきく子なもんだから、最初はホームズ役なのかな?と思っていた。
倫理観がガチガチじゃないので、そんな選択肢もあるんだァと意外な思い。


灰色の手袋(粘土の犬)


悦子さんが拾い集めた事件の手がかりを雄太郎さんに広げて、犯人を見つけ出すのをキラキラした目で待ってる想像をした回だった。
1977年3月


黄色い花(粘土の犬)


長編だと感じなかったが、雄太郎さんの植物に対しての情熱が際立っていた。
1977年3月


弾丸は飛び出した(粘土の犬)


この時代の新聞は目撃者とかの氏名もがっつり載せられてたんだな〜と思った。学生仁木悦子さん(二〇)。
1977年3月


林の中の家


さすが日本のクリスティー。本家もそうだったんだけど、私の嫌いなタイプの女性を描くのがうまい。
今の世だったら袋叩きに遭いそうな男性が出てきて、「命拾いしたな」とニヒルに口元をゆがめた。
1978年9月


赤い痕(夢魔の爪)


かつてのばあやに呼ばれて、奥秩父までやってきた仁木兄妹。そこでも事件に遭遇するわけだけど、雄太郎さんがいると思うとリラックスして読めるわァ。
1978年12月


暗い日曜日(暗い日曜日)


悦子さんのいいところは、心根がまっすぐなところだな。あんだけ事件のヒントを拾い集めて推理しても違っていて、そこを雄太郎さんに解決されるけど、僻まずまた次の事件に首を突っ込んでいく。
1979年8月


刺のある樹


私が今まで見てきた名探偵は、割とエキセントリックなところがある人が多い印象だけれど、雄太郎さんは穏やかだ。悦子さんはコミュ力が高く、フットワークも軽い。
二人の会話を聞いていると、事件の話をしているのに、まろやかな気持ちになる。
1982年10月


黒いリボン


長編。
悦子さんが知り合いに行きあうことから、誘拐事件、殺人事件にも巻き込まれる。悦子さんが危ない目に遭うのはたまにあるけど、雄太郎さんが被害に遭うのは珍しいのでとっても心配しました。
悦子さん大学2年
1997年2月


初秋の死(凶運の手紙)


子持ちになった悦子さん登場。登場はしなかったが、雄太郎さんの話題がちょろっと出た。
memo: 悦子さんの長男哲彦(4)鈴子(1)、雄太郎さんの嫁冴子、娘こずえ(2)
1978年8月


木がらしと笛(暗い日曜日)


いいんだけど、また悦子さんに会えて嬉しいんだけど、行動力は二重丸でも推理の詰めが甘い彼女なので、なんかミスするんじゃないかと気が気じゃない。
鈴子もうすぐ2歳
1979年8月


子をとろ 子とろ(赤い猫)


子持ちの仁木悦子さん登場。(何気にこのバージョンの話多い気がする)
子どもたちとの会話とか、子どもらの仕草がかっわいいんだよな〜。
memo: 悦子さんの長男哲彦(5)
1984年4月


うさぎさんは病気(赤い猫)


子持ちの仁木悦子さんがピアノの先生をしている描写あり。
他のときって割とすぐ事件に巻き込まれにいってるから、仕事してるの珍しい気がする。
memo: 悦子さんの長男哲彦(4?5?)鈴子(2)
1984年4月


虹の立つ村(夢魔の爪)


それぞれ家庭もってから仁木兄妹が一緒になるの珍しいな! それだけでお気に入りの作品になる。
memo: 悦子さんの長男哲彦(5)鈴子(3)、雄太郎さんの娘こずえ(4)
1978年12月


赤い真珠(死の花の咲く家)


事件に遭遇したとき、今まで事件を一緒に解決してきた兄の雄太郎さんじゃなくて、夫の史彦さんを思い出すところで、夫婦仲いいんだな〜と信頼関係にほっこりした。
memo: 悦子さんの長男哲彦(5)
1979年10月


ただ一つの物語(三日間の悪夢)


子どもたちもヒントをくれるし、家族が仲良しで中和してくれるけれど、解き明かした事件は、なんというか、虚しくなる内容だった。
memo: 悦子さんの長男哲彦(4か5)
1980年2月


ひなの首(赤と白の賭け)


二人の子どもと悦子さん。
おひな様の謎から、悦子さんの好奇心が眠っていた事件を起こすやつ。
いっぱしの口をきく哲彦ちゃんがかわいい。
1982年4月


青い香炉(赤い猫)


仁木兄妹の雄太郎さん登場。
雄太郎さんが語り口ってないんだよな〜、でも「植物の先生」「植物採集」というワードが出てから期待して正座待機してました! こんなさりげない出演が雄太郎さんにはぴったりだ。
理学部植物学科助教授 45、6歳
1984年4月


三影潤シリーズ

夢魔の爪(夢魔の爪)


催眠術と殺人の可能性が言及される。三影さんが大学で心理学を学んでいたエピソードが出た。
1978年12月


くれないの文字(暗い日曜日)


三影さんの相棒、桐崎秀哉のニックネームがジャックだとは知らなかった。
memo: サッチイ2歳
1979年8月


冷えきった街


淡々としてる探偵、三影さん、かっこいい! 腕っぷしが強いわけでもないのに、踏ん張れるなんて、かっこいい! 
ってテンション高くしてたら、どんどん展開が深刻になったので、テンションをあぐらから正座に直して読んだ。
memo: 三影さん35歳
1980年8月


緋の記憶


探偵・三影潤の短編集。
この人が出てくる作品は、なんとも重みがあるんだよなァ。
1983年5月


夏の終る日


三影潤の短編集。
この人な〜、結局優しいよな〜。そんな女、往復ビンタしてほっとけばいいのに、って人にも最終的に優しいんだよな〜。
1983年9月


白い部屋(赤い猫)


三影さんが入院中の一幕。というか、入院の原因が拳銃で胸を撃たれただなんて! 物騒すぎ。そして普通に受け止めすぎ、でも生きててくれてよかった。
1984年4月


青い風景画(青い風景画)


三影さんに持ち込まれた2件の依頼。それをつなぐ一人の男。
あ〜嫌なやつらの生態を見ちゃったな〜。こんなやつらに関わっているんだから、三影さんが定期的に休みを取るの納得する。

文庫1988年7月


数列と人魚(聖い夜の中で)


唾棄すべきクズが複数いて、ものすごく嫌な気持ちになった、最悪。
三影さん、小さな違和感から解決まで持っていってくれてありがとう。


吉村駿作シリーズ

東都新報の新聞記者で、忙しさがたたって病気療養した期間あり。リハビリがてら、事件を相談される。割合裕福な家庭で起きる事件なので、親族などの人間関係が胃にくることも。

みずほ荘殺人事件(みずほ荘殺人事件)


吉村さんが住むみずほ荘で、正月早々起こった殺人事件。地味に吉村さんのファンなので、かつての同僚に「よっちゃん」なんて呼ばれてるんだ〜なんて思っていた。
1979年3月


死の花の咲く家(死の花の咲く家)


相談を持ちかけてきた女性が図々しくて嫌。
事件は吉村さん担当の、裕福な家庭での内輪揉め。吉村さんくらいのスタンスじゃないと、事件解決のためとはいえ、付き合いきれないだろうな。
退院して二ヶ月経ってない時期
1979年10月


殺人配線図


珍しい?吉村さんの長編。やっぱり吉村さんて、シリーズの中で一番クールなんだよなぁ。いつまでも孤高でいてほしいと思ってしまう。
1981年6月


幼い実(赤と白の賭け)


吉村さんは、学芸部の記者として復帰している。やるせない話なんだけど、吉村さんが関わる距離感がよかったんじゃないかな、と思う。
1982年4月


乳色の朝(赤い猫)


この事件自体は短編集『銅の魚』の『誘拐犯はサクラ印』と内容が似ている。ちょっと違うが、結末はこっちの方が後味悪かった。
1984年4月


ノンシリーズ

粘土の犬


短編集。
『かあちゃんは犯人じゃない』小学生の和夫目線。母親の無実を信じて真相解明に突き進む。
表題作『粘土の犬』視点が犯人で、こいつがそこら辺にいそうなゲスで、「逃げおおせることがありませんように」と祈りながら読んだ。
1977年3月


凶運の手紙


短編集。
『花は夜散る』あれ? 『二つの陰画』のとき2歳だった究介くんが出てきた! 桜木正樹くんの同級生として。
『遠い絵図』仁木雄太郎さんの嫁が冴子という名前だと知った後だったので、「主人公冴子はあの冴子か?」「二人の出会いの事件とか?」と思ったが、違った。
1978年8月



短編集。
日常に潜む事件の種にゾッとしたりしたけれど、どの主人公も好きだった。
とくに『幽霊と月夜』の俊平くんがいい。いい感じにドライで、結末の感想が面白かった。
事件の内容などは重いんだけど、主人公の捉え方とか、語り口が軽やかで読後感がよかった。
1979年8月


二つの陰画


大家が殺され、好奇心旺盛な店子の夫婦が探偵役の長編。
探偵役と助手に別れているのではなく、二人でああでもない、こうでもないと頭を捻って解決まで持っていくのがよかった。
二人の幼い子ども、究介くんの言動が可愛くて、めろめろした。
1981年11月


赤と白の賭け


短編集。
いろんなタイプのお話があって楽しかったけれど、『石段の家』の兄妹が好きだった。
1982年4月


灯らない窓


殺人事件の容疑者となった母親。当事者となった父親と息子が交互に語って進んでいく長編。
もー父親がぐだぐだと鬱陶しかった。イライラしすぎて父親のパートは飛ばしたかったほど。最後の方でやっといい所を見せたけど、全然見直さなかった。あの時のやらかしは、私が妻だったら、マジでない。
1982年9月


陽の翳る街


ミステリ好きの男女4人が遭遇した殺人事件を追う長編。
商店街でお店を開いている二人がいて、横のつながりがあってこその情報収集の場面があった。たしかに生活の買い物をすべて商店街で済ませていれば、つなぎ合わされると色々バレるよなァと思った。
1984年8月


赤い猫


『赤い猫』富豪のおばあさんと雇われの主人公の過ごした日々がよかった。
シリーズの方々がたくさん出てきたので、豪華な幕内弁当の気持ち。
1984年4月


聖い夜の中で


『折りから凍る二月の』語り手のおばあちゃんが素敵だったけど、人の心に残る戦争の傷痕が悲しかった。


夢魔の爪


『小さい矢』は生意気盛りの姉妹と、事故で突然車椅子生活になった女性が活躍する。ミステリーだから女性の旦那が、不穏な画策してたらどうしようと思ったけど、杞憂でよかった。
1978年12月


みずほ荘殺人事件


全体的に面白くて、短編集では一番好きかもしれん。
『最も高級なゲーム』はほっこりした。また読み返したい。『老人連盟』も捨てがたい。
1979年3月


暗い日曜日


『うす紫の午後』こういうの後味悪くて怖いんだよ〜。。
『かわいい妻』も資質的には同じかもしれないけど、ベクトルが違うから好きだった。
1979年8月


死の花の咲く家


『巷の騎士』の語り部は東都新報の社会部記者、真鍋敦夫。東都新報率高いな〜、大きな会社なのか世界線が交わることはないようだけど。
『鬼子母の手』こんなママいたら嫌だわ! フィクションでしょって一笑にふせないところがまた怖い。
1979年10月


三日間の悪夢


『三日間の悪夢』お、おばあちゃんがカッコよすぎる! え〜カッコいい、好き〜。おばあちゃんシリーズにしてほしい。
『罪なき者まず石をなげうて』娘の稼ぎ頼りだけど、牧師さんもよかった。
二人とも普段は頼りないのに、さっと事件の真相を掴んで、また平生通りにしてるなんて、必殺仕事人の主水さんのよう! 渋い!
1980年2月


青じろい季節


翻訳会社を経営する砂村さん(33)が探偵役。アルバイトからの意味不明な手紙が届くことから事件に次第に巻き込まれていく。
砂村さん好きだけど、途中恋にうつつを抜かしたからな〜。ミステリー寄りの二人の出会い物語って感じだな。
1980年9月


枯葉色の街で


長編。
人の面倒を見れるほど余裕のある暮らしなわけじゃないのに、面倒ごとを引き受ける主人公・江見さん。この優しい人が人にがっかりする結末になりませんように、と思いながら読んだ。仲良しの小森さんがいてくれてよかった。
1982年3月


銅の魚


短編集。
『誘拐犯はサクラ印』が吉村さんシリーズの『乳色の朝』と展開が似ている。結末は違うしこっちの方が好き。なによりおじいちゃんがカッコよかった! 敦生くんはおじいちゃんを尊敬するようになったし、これから彼はいい男になるだろう。
1984年5月


一匹や二匹


表題作の『一匹や二匹』に短編集『凶運の手紙』の『花は夜散る』に出ていた究介くんが再登場。小学6年生。大きくなったなぁ、淡い初恋まで経験しちゃってさ。
1987年1月


青い風景画


『光る眼』ちょいちょい小学生の主人公が出てくるけど、みんな利発でいい子だ。子どもならではの無謀さに、はらはらするけど。
『偽りの石』主人公の昭子さんがいい。目撃者を名乗る男に電話で脅されても反撃したりして、いざとなると肝が据わってる。かっこいい。
1988年7月


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