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小説を書いています、クラウド安見子です。 クラウドは「北斗の拳」の雲のジュウザが好きでつけました。

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マガジン

  • 私のためのシリーズ

    なにかがわからなくなる前に書きとめておく備忘録シリーズです。

  • 勝手に短編シリーズ

    短い短編を連ねていくシリーズです。

  • しょっぱくて、意外と癖になる

最近の記事

『坂の上の雲』の脇役たちが気になった私のために

小説家のはずの司馬遼太郎。 でもつい、私は彼の作品を史実であるかの如く読んでいる。 『新選組血風録』で私の新選組のイメージは固定され、他の説が出てきても「でも司馬遼太郎はそう言ってるし。。」と、学説並みに信じきっていた。 「あれは小説なんだ」と、言い聞かせながらも吸い寄せられる史実感。そんな私が、全肯定したくなる感情を抑えつつ読んだのが『坂の上の雲』。 やはり彼の説得力はすごいと驚嘆しつつ、できる限りフラットな目で見ることを努めるも、筆力の素晴らしさなのか、主役級ではなく

    • 流れるから、きらめく川

      年をとったせいなのか、季節のせいなのか、学生時代を思い出していた頃だった。 勉強も部活もそっちのけで、俺の生活の中心にいたあの子。 あの子が放った言葉でさえもキラキラ眩しく輝いていて、口数の少ないことを残念に思ったり、横顔を眺めているだけでも幸せだと感じたり、俺は何度もご両親に感謝の念を送っていた。 今で言うところの“推し“なんだろう。俺は彼氏でも、友人でもない、一年かぶっただけのクラスメイト。なんとなくグループが違って、なんとなくの距離を保ったまま、あの子との点線は過去の

      • ヒーローたる所以

        「きみ、もしかして佐山くんじゃない?」 たくさんのぎこちない新入社員が混じった雑踏の中、僕は朝の駅前で声をかけた。 「違いますけど?」 佐山くんは僕の方をチラッと見ると、顔を逸らして答えた。 「え、佐山くんだよね? 僕がきみを見間違えるはずないもの! 久しぶり。覚えてるかな、僕のこと。中学校で一緒だった志村です。出席番号が後ろの!」 「……いや、違いますって」 「そんなはずないよ! きみは佐山寛くん! 丸々中学校二年四組、出席番号7番! 高校を中退したあと、二歳年上の女性と

        • 御手洗潔と石岡くんの会話にしか興味がない私のために

          ミステリー小説。元々嫌いじゃなかったんですけど、今年に入りアガサ・クリスティーにハマり、「一昔前のミステリー素敵だなぁ」なんて思ってるとどんどん見たくなり、でもでも積読してた本は購入順に読まないと訳分かんなくなるし、ということで洋物の最新ではないミステリーにハマっていた私が自分のルールに従い読むことにしたのが、島田荘司さんの『御手洗潔の挨拶』。 そもそも積読してちょっと経っているので、これを購入した理由は記憶にございません(政治家風)。今洋物ブームだから、日本が舞台はそんな

        マガジン

        • 私のためのシリーズ
          5本
        • 勝手に短編シリーズ
          20本
        • しょっぱくて、意外と癖になる
          5本

        記事

          春がつれてくるものは

          突然人が増えて、私はとっても不満だった。 いつもだったら乗り換えに近い一番端の車両に乗ったって、八割の確率でゲートキーパーの場所は確保できたのに。 東京の電車事情は殺伐としている。地元だってラッシュ時には混雑していたけれど、人の波の振り幅がもう少し大きかったように思う。 この時間帯は出勤時間だから多い。その時間帯を過ぎれば空いている。ちゃんと理屈にあった混み具合だった。 東京の人口がいくら多くたって、電車の本数も圧倒的に多いのに、どうしてこんなにホームに人がいるんだろう。

          春がつれてくるものは

          クラドック警部を推したい私のために

          ポアロシリーズに負けるとも劣らない人気を誇るらしい、ミス・マープルシリーズ。 このシリーズはポアロほど数がないので、全シリーズ読むことにしました。 そこでもまた、出会いました。愛する存在に! 紹介します! クラドック警部です!! いえ、ミス・マープルもすこぶる好きなんです。ミス・マープルにもし出会えたら、私はセント・メアリ・ミード村の誰に例えられるんだろう?とワクワクします。 ですが、ポアロシリーズでヘイスティングズを愛した私は、ミス・マープルシリーズでも主役以外に愛

          クラドック警部を推したい私のために

          ヘイスティングズはどこ?となる私のために

          映画化などメディア化は色々されているし、わざわざ改めて小説読まなくてもいいかなぁ、なんて思っていたアガサ・クリスティー。 『アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕』 著:霜月蒼 早川書房 軽い気持ちで読んだ上記タイトルの文章がなんだか好きで、そうおっしゃるなら読んでみましょうと、重ーい腰を上げてみた。 まずは有名な『オリエント急行殺人事件』の探偵、エルキュール・ポアロでも読んでみるか、と本当に軽い気持ちで手を出したら。。 沼った。(私なりに) ホームズでのワトソンの役

          ヘイスティングズはどこ?となる私のために

          幽霊はだれだ

          「ここはなぁ? 歴代の先輩たちがずぅっと愛して通った店でな?」 べろんべろんに酔っ払っている、自称先輩が肩を抱いてきた。同性であっても気持ちが悪い。 自称先輩は、半分目が閉じかかっている。とても迷惑だ。 「あの、こういうのアルハラですよね。やめてもらっていいですか」 「んぇ? なんて?」 「だから、昔はどうだか知りませんけど、今はそういう時代じゃないんで。こんなの撮って上げたら一発なんで」 お酒で頬の赤い半目の自称先輩は、上がっていた口角をゆっくり下げると、焦点を合わせて言っ

          幽霊はだれだ

          雨になれない

          全然暇じゃない。 全くもって暇じゃない。 けれど、なんとなく、眺めていた。 リモートワークにすっかり慣れた頃、会社がワーケーションも容認していることに気づいた。「ワーケーション」という響きに惹かれ、ある地方の山裾にある別荘を借りてプチ移住をすることにした。 向いていなければ、やめて戻ればいい。 独り身の俺としては、身軽な世の中が有難かった。 数日の旅行に行くくらいの荷物でやってきたが、家具も備えつけで不便はなかった。最初はシーツの匂いが合わなかったが、洗濯してしまえば不満

          雨になれない

          イアルの野

          校舎の端に、忘れられた図書室がある。 どこもかしこも耐震を考慮された建物に生まれ変わったのに、木造のまま置いてきぼりの図書室がある。 校舎から渡り廊下はなく、一旦靴を履きかえなければならない。靴を履いて、上履きを持って、雨の日にはぬかるみを越えないと図書館には辿り着けない。 この高校の図書室は、自然と足が遠のく場所だった。 「失礼しまーす」 金髪の長い髪をゆるく巻いた、派手めの女子生徒が図書室に入ってきた。司書は奥の部屋にいて気づかない。 顔を上げたのは、カウンター内に座っ

          イアルの野

          菓子パンの中身は

          「なんでこうなっちゃったんですかね」 「あたしに言われてもねぇ」 私鉄の中規模駅沿線から2分の立地にある中規模スーパーは、閉店まで数時間だった。惣菜に値引シールが貼られる20時頃になると、わらわらと一階の惣菜コーナーは賑やかになる。 バックヤードまでは喧騒は聞こえてこない。本来なら出入口で仕事をしているはずの老いた警備員は、困惑する二人の前で「嘘だ嘘だ」とぶつぶつ呟きながら、項を垂れている。 ワイシャツにオレンジのエプロンをつけた二十代半ばの男は、老婆を見下ろすと仕切り直すよ

          菓子パンの中身は

          クラゲの骨

          のらりくらりと喧騒の中をすり抜けて歩くのだけが得意なやつだった。 辺りをうろついては、うまい話はないかと鼻をひくつかせ、その場その場でへらへらと強者にすり寄る。裏切っている感覚もないのだろう、呑気な顔で街を歩いていた。 やつはクラゲ。そう呼ばれていた。 高校のときからやつの印象は変わらない。ただ漂うだけ、半透明な存在感。 俺が大学の仲間と街でたむろするようになると、たまに見かけるようになった。顔もうろ覚え、本名も知らない、言葉を交わしたことすらない。だが、学校でも世間でも構

          クラゲの骨

          葉村晶シリーズの順番がわからなくなった私のために

          『死んでも治らない〜大道寺圭の事件簿〜』(光文社刊)で若竹七海さんの文章にハマり、大道寺さんの続きないかな〜と電子書籍を検索。 すると葉村晶シリーズなるものが。 この主人公は探偵だし、警察とも関わりを持ちやすい模様だったので、大道寺さん出てきたりしないかな、とカメオ出演を期待して手を出してみるとこれまたハマり。 葉村シリーズのくくりになってるものを発行の古い順にソートして読んでいると、ふと「あれ、著者:若竹七海の検索途中で出てきた『御子柴くんの甘味と捜査』の御子柴くんが出て

          葉村晶シリーズの順番がわからなくなった私のために

          口の中に苦虫

          妹から渡された“お迎えカード”。 なにかあったときのための、念の為。 俺が駆り出されることはないはずだった。 その日は、小さなことが積み重なった日。 いつも迎えに行く妹が37.5度の微熱を出し、行けなくなった。 義弟は日帰り出張で、今から戻っても間に合わない。 近くに住む父や母は、珍しく夫婦旅行に出かけている。 電話口の二三の声には、苦渋があった。 「お兄ちゃん、保険としてお願いしていた“お迎えカード”を行使するときが来てしまいました。……頼れる人はお兄ちゃんしかいません

          口の中に苦虫

          ドラマチックはいらない

          「そこをどいて」 「行かせるわけにはいかない」 「いいからどいてよ」 ホテルのラウンジで、私の行く手をふさぐのは親が決めた婚約者。 いかにも清々するといった様子で、私の想い人がもうすぐ海外に飛び立つと告げた。 「あんな奴を追いかけるつもりか! なぜわかってくれない、僕は君を愛して・・・」 「呑みすぎたみたい。トイレに行きたいの」 この人の、すぐに自分に酔うところにうんざりしていた。 「あ、すまない」 こんな昼間から、素面で愛を叫ぶだなんてどうかしてる。 化粧室には寄らずにそ

          ドラマチックはいらない

          妄想と妄想のはざまに

          「昨日ハルキが出てたドラマ観た? ホントかっこよすぎてヤバかった。出てきた瞬間に空気が変わるっていうか、なんていうの、空気が喜んでる? 出演時間13秒のうち6秒目に目が合ったんだけど、まじで射抜かれた。目が合うだけで幸せにしてくれるってなんなんだろ、生き神様かな。ありがたや」 あさっての方向を見てにやにやしている田山のことを、松川は早口のスプリンターと心の中で呼んでいる。今日も開口一番田山の推し語りが始まり、話の中身よりもそれを紡ぐ口元に目を奪われる。 (どうして詰まることも

          妄想と妄想のはざまに