1-4 なすべきこと1
シンイチの窃盗事件の翌日。
この日は日曜日で、公開講演と言われる一時間くらいの話と、ものみの塔研究というこれまた一時間くらいの合わせて二時間の集会があった。
私もいつもどおり出席した。集会終了後は母親が他の信者と世間話をしたりする。これは仲間の信者たちとの「交わり」と言われ、推奨されている。
この間、私も同じ会衆の何人かの友達と話をしていた。
すると、シンイチが向こうからやってきて話しかけてきた。いつもは一部の人を蔑み、近づくことすらしないのに、だ。
「ね。いまちょっといい?」
シンイチはそう言うと会場のすみに私を連れて行った。相変わらず偉そうにしている。
「きのうのことなんだけど、誰にも喋らないでね。わかってると思うけど。」
シンイチはそう言った。やはり上から目線の口調だった。
「え?まだ自分の親に話してないの?」
私はそう返した。
「話すかどうかは良心の問題。」
シンイチは悪びれもせずそう答えた。
私は聖書からの根拠を示しながら彼に次のことを話した。
盗みは聖書の教えからして悪行であり、悪行を犯した信者は監督の職にある人、つまり長老にそのことを告白する必要があること。
もし彼が自らそれを実行しない場合は、私と友人と二人で、目撃者としてシンイチの代わりに長老に窃盗事件について告げなければならないこと。
そうしなければ、神の目から見て私たちも同罪になること。
これらのことを話し終えた時、シンイチは青ざめていた。どうやら、私のことを何も分かっていない、ただ親についてきているだけのやつと思っていたようだ。言葉で脅して言いくるめれば良いと思っていたのだろう。
でも、聖書をそれなりに深掘りして調べていた私にはごまかしは通用しない。しかも、神様から嫌われる大罪を見逃すことなんてできるわけがない。
「どうなるかわかってる?」
シンイチはそういうと不機嫌な様子で去って行った。
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