1-11 巡回訪問3
巡回訪問の週は、通常の週と異なり、火曜日の集会から始まる。
私は火曜日の集会が終わると、巡回監督と話をするため近づいた。
巡回監督に挨拶をして、もし、自分が間違いだったら改めたい旨伝えて、今回の件を話した。
最初は忙しそうに書類や原稿をめくっていた巡回監督の手が止まった。
「もう一回聞かせてくれますか?」
私は巡回監督の隣に座り話を始めた。その様子を見た塩田はいつもなら遠巻きにしていた巡回監督のところにやってきて話を遮ろうとした。
だが遅かった。
長老たちの取り扱い方がどんなものだったのかについて監督から尋ねられ、全て話し終えたあとだったからだ。証人が二人いることも伝えた。
「あら、あら、あら」
巡回監督はそう言うと、口をへの字に曲げた。監督が塩田を見る目は明らかに普通ではなかった。
巡回訪問中、巡回監督は会衆の必要となるポイントを押さえて特別な話を行ったり、会合を開いたり、特定の家庭を訪問したりする。
それはあらかじめ決まっており、変更されることはまずない。なので、巡回訪問中に何かが起こることは考えられなかった。
しかし、週中に何度も監督から家に電話があり、この件は仲間の信者として監督の職にあるものとして、適正に取り扱われるようにするので、どうか信仰を強く持ってくださいとの励ましをもらった。
これも異例の出来事だった。
しかし、どちらかと言えば信仰が破綻している向こうにこそ必要なのにと複雑な気持だった。
そうこうしているうちに、一週間の巡回訪問が終わり、次の週の月曜日になっていた。
この日は巡回監督は休日か移動日のはずだった。が、この日我が家に巡回監督の電撃訪問があった。おかげでもう少し詳しく話をすることができた。
監督が直接的に何かに触れた訳ではなかったが、塩田は長くこの土地にいるため、それによる弊害が起こっていて、別の問題が既に生じているような感じだった。
そして監督は違う会衆へと旅立っていった。
「エホバは見ておられます」
巡回監督の言葉が印象に残った。