1-15 本性2
皆が席について待っていると塩田と林山が入ってきた。
当たり前のようにシンイチもそれに続けて現れて、一番後ろの特別席に座り、いつものようにふんぞり返った。
「皆さん、お集まりいただき感謝します。皆さんの日頃の働きはエホバもきっとお喜びでしょう。」
林山のこういう社交辞令的な挨拶から始まり、次に塩田が口を開く。つまりここからが本題だ。
「はい、みなさん。ではね、今日は巡回監督からも言われてることなんだけどね。まずは個人研究(個人的に聖書の理解を深める作業のこと)できてるかな。」
そのあと彼の語った内容は要約するとこういう事だった。
巡回監督はとくに若い人の霊性を気にかけている。(霊性とはクリスチャンとしてのクオリティを指す)
個人研究を定期的に行い霊性を高めるように
そして塩田は続けた。
「で、みんなは若いから人のことを気にすることあるよね。でもね、それはエホバも喜ばれないから、まずは自分の信仰をしっかりとしたものにするように自分自身を築き上げて行って下さい。」
聴衆である若者たちは真面目にメモを取っている。
「でね、人を見て、あれ、これはおかしいなと思った時もね、まず自分のことだけ見ましょう。良心も人それぞれだし、だったらまず自分の信仰築き上げていく方がいいよね。」
皆うなづく。
「若い皆さん、頑張って下さい。」
話はここで終わり、解散となった。私も皆と一緒に会場を出ようとした時、呼び止められた。
「あ、私くん、ちょっといいかな。」
塩田だ。私は手招きされるまま、元の席に戻った。