不可解事件簿、続・アンティーク
前回報告した富岡鉄斎のストーリー、実は後日談があったのだ。
親父がガサゴソと出してきた物は、まさしく本物であると、おふくろ様がお墨付きを出したのだ。
一時期は、額に入れて飾ってあったとの事だが、その時は既にかなり黒ずんでいたらしい。
それを、引っ越しか何かの際に、風呂場の上にほったらかして置いてあったのを、着物箪笥に仕舞い込んで現在に至っているという。(なぜ、そんな湿度の高いところに置いたかは不明らしい。)
ま、今となっては、国立美術館勤務の修復匠がバンザイをするぐらいの黒い紙に変身してしまっているからどうしようもない。
最後に、「欲しかったらあげるよ」と言われたが、いや、結構ですと丁重にお断りさせていただいて一幕を閉じたのだった。
少し話はズレて時を更に遡るが、
思い起こせば、幼少期からアンティークではないものの、切手収集、古銭・コイン収集、仮面ライダースナックカード収集、スーパーカー消しゴム収集と、一通りの英才教育は受けてきた口だ。(めんこは、買い集めるという要素よりも奪い合うというギャンブル性が高いため、別枠扱いとするのが相応しいだろう。でも、かなり持っていた。)
その中でも、仮面ライダースナックには、箆棒な数の青春ドラマと涙のストーリーがあるから一言では語れない。
興味のある若人諸氏に置かれては、近隣の50代以上の賢人にお尋ねいただくのが良いだろう。
うおーッ、仮面ライダースナック、もっと書きたいな。
当時20円だったとか、カードは駄菓子屋のおばさんが手渡しでくれたとか、友達との交換バトルとか、、
でも、ダメだ、そっちに行くと間違いなく文字数制限に引っかかる、トーッ♪。
さて、アンティーク。
もう一つのストーリーはニュージーランドだった記憶がある。
土曜日の朝、日課のランニングを終えたシェアメイトのVivian(ビビアン)が、近くでガレージセールがあるみたいだから行ってみないと誘ってくれた。
Ya-、行く行く。(Ya-は、Yesのスラングね、試験に出るぞ!)
だが、ガレージセールとは何だろう。
基本的に、誘われたらどこにでもついて行く私だから ”No” はないのだが、ガレージセールとは初耳だ。
ま、行ってみれば分かるとVivianについて行った。
ガレージセール、直訳すれば、「ガレージを売っている」だろうが、Vivianがガレージを買う分けもない。
まして、そんな買い物に誘われても一緒に行く意味が分からない。
日本では、どうなんだろうか。このガレージセールという言葉、理解されているのであろうか。
ちょっと、ググってみたが、日本では少し広い意味でリサイクルショップの様なものまで含んだ形で使われている事が多いようだ。
しかし、この時のシェアメイトが連れて行ってくれたガレージセールは、こんな感じだった。
それはそれは、驚きの満載のガラクタ市だった。
近所の人が、広場に集まって家で不要になったものを売り捌く、ゴミの日かと見間違う代物であった。
割れた食器、足が3本の机、動かないドライヤー、1950年代製造と言う掃除機に至っては使うとお尻からホコリを巻き散らかす「汚す掃除機」だと販売者が笑っていた。
でも、まあ、これらはまだ何とか理解できる。
極めつけは、自分の読んでいた本とメガネ、履いてきた靴を汚い布の上に乗っけて”SALE”と手書きの紙を、その3点セットの横に置いていた兄ちゃんだった。
もし、売れたらどうするんだろう。裸足で、メガネなしで真っすぐ家に帰れるんだろうか。
売れませんようにと心より願ってあげた不思議な体験だった。
それでも、Vivianは、近所のおばさんが売っていたお皿3枚を購入するにあたり、私にアドバイスを求めてきた。
これなんかどうかしら、、
年代物だが、白地の中皿で、薄いグリーンの花模様があしらってある可愛いお皿だった。
Vivianは、この皿にあなたの料理を盛り付けるのよ、すごく良いと思うのと、何のお約束もしていない料理の話を割り込ませてきた。
はいはい、そうですね。分かりました。それにしましょう。
この皿を買った後に食材を買いに行くんですね。だから、私をここに誘ったのね。確信犯だ。
あー、そう言えば、シェアハウスにあるグッズ類、結構ガタが来ているし、不思議なものが多いけど、
きっと、ここから来てるのねえ。
掃除機は後輪が一つ欠けていて使いにくいし、スプーンやフォークはサイズと絵柄がバラバラだ。
お借りしている電気ストーブは、部屋がサウナになるんじゃないかと言うほど熱を出す、、
そうだったのか、それで理解できた事件を一つ思い出した。
先週末、ジョッシュ君10歳(Vivianの子供=離婚して別居)が遊びに来た時にその事件は起きたのだった。
朝食はシェアメイト4人がそれぞれに摂ることになっていたから、キッチンが結構込み合うのだ。
先週末も、時間がかち合って込んでいたから、キッチンが空くのを待っていた、
その時だった。
ボン、
かなり大きな、爆発音とほぼ同時に、
ドサッ、
人の倒れる音がした。
リビングでキッチンの空くのを待っていた組が顔を見合わせ、キッチンだね?
駆け付けた。
ジョッシュ、ジョシ-、Vivianが呼びかける。
何と、ジョッシュ君がキッチンでぶっ倒れているのだ。
右手には、フォークを持って、意識朦朧だ。
キッチンに、焦げたニオイが充満していた。
なんだ、
わッ、トースターから煙が出ている。
そうか、分かった。
このトースター、2枚のパンを上から差し込んで、レバーをガチャリと下ろすタイプで、かなりの年代物だったのだ。
レバーを下ろしてパンは普通に焼けるし、レバーもガンッと戻るのだが、パンだけが中に引っかかって飛び出してこない事が多々あるのだ。
ジョッシュ君は、その引っ掛かったパンを取り出そうとしてフォークを上から突っ込んで、バンッ、感電したらしいのだ。
速攻で、車に乗せて病院へ運んで事なきを得たが、とてもヤバイ出来事であったのだ。
もしもし、ビビアンさん、今日のガレージセール、お目当てはお皿じゃなかったのですか、、
その手に持っているのは、ひょっとして、トースター!
また、ここで買うのかー。
*教訓、トースターにフォークを突っ込んではいけない。