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オーディションで落ちても否定された気持ちにならない、めげない

モデルになったら誰しもが経験する、オーディション。仕事を得るためにその都度受け、合否の判断を下されます。その数、年間で数十本〜数百本。
例えるなら、学生時代に経験したあの「入試」を毎回受けているようなもの。1本のオーディションに多大なプレッシャーがかかります。

そんなオーディション、行くもの全てに受かるなんてことは、まずありえません。どこかで必ず落ちることになります。

その落ちたときの気持ちといったら…自分という人間を否定されたような気になることも。がっかりすることはもちろん、悲しかったり悔しかったり、なんだか恥ずかしいときまであったりして…。そんな気持ちを、オーディションが終わる度にどうにか立て直さなければいけません。

◆10秒で決まる仕事がある

ショーのオーディションでは、審査員の前を1〜2往復歩きます(歩かせてさえもらえずに帰ることもあるけどね。。)。早ければ、時間にして10秒。一瞬で合否が決まります。
そこで審査側の興味を引けばフィッティングに進み、そのブランドの洋服を身につけて再度歩きます。その後何着かフィッティングするのか、もしくはそこで終了。

フィッティングしなかったからといって落ちると決まったわけでもないし、オーディションに来た全員がフィッティングする場合もあるし、なんならフィッティングに進んでも落ちるときはたくさんあるけれど。
一つの判断材料であり、大体はそのときの感触でわかります。

そして翌日なのか数日後なのか、結果が出る。
そこで落ちた場合、たとえなんとなくの雰囲気で事前にわかっていたとしても、多少はへこむ。期待とかしていないものでも、実際にそういう事実を目の前に突きつけられると、やっぱりテンションは下がるんですよね。。

本当は落ち込む必要はないんだけど。
ただ、今回はコンセプトに合わなかっただけで。
審査側の好みもあるし。

こちらがどんなに歩き方やポージングなどの技術で頑張っても、そんなこと関係なく、ぱっと見の印象で判断されることがほとんどです。
だから10秒で落ちたとしても、気にしないのが1番。

ただ、憧れの仕事でどうしても受かりたかったものだと、やっぱり悔しい気持ちが出てくるんだけど、、、そういうときは

「他に自分にしかできない仕事がきっとある」

と言い聞かせて、次に目を向けるようにしています。どこにでも当てはまる人なんていないし、どこにも当てはまらない人もいないから。

ちなみにこれは余談ですが、私の中で"これは落ちたな"とわかる瞬間は、歩いている最中の背中に向かって「大丈夫です」って声をかけられるとき。絶対に落ちたじゃん…ってわかるのと、何かを途中で遮られる行為って、やっぱり結構つらいんですよね。でも、日本でも海外でも何回もありました。
泣きそうになるんだから〜!笑

◆忘れない、何気ない先輩の一言

新人のとき、何をやってもこの人には勝てない、、、!と思うモデルの先輩がいました。今思うと全然ジャンルが違うのに、その頃は勝手にライバル視してしまっていました。

当時、ショーに出演できるショートヘアモデルの割合はとても少なく、全体で10〜15人モデルがいる中の、1人か2人。
私もその先輩もショートヘアだったのですが、自分が落ちたブランドの当日の写真を見ると、先輩が写っていることがほとんど(に感じられました)。どのオーデイションに行っても、この先輩がいたら私はダメなんじゃないか…そう思うようになっていました。

そんなある日。某有名ブランドの大規模なオーディションが行われました。受ける人数も多く、審査員の前を次から次へと歩くモデルたち。どうやら、可能性のある子には例のごとくフィッティングをさせているようでした。

私も気合い十分、ドキドキしながら列に並びました。

いざ、私の番。1往復か2往復か、どのくらい歩いたのかはすっかり忘れてしまいましたが、フィッティングはできず、一瞬で帰されることに。

ダメだったなぁ…と俯きながら出口に向かう途中のことでした。いつの間にいたのか、背後に例の先輩がいて

「今回はショート(ヘア)は違うみたいだね!」

と明るい口調で声をかけてきたのです。
どうやら先輩もダメだったらしく、この感じからするとフィッティングもしなかったんだろうとすぐにわかりました。

先輩でも受からないものがあるんだ…。なんでも受かる人なんているはずないのに、なぜかその先輩は落ちることとかないんだろうなと思っていた私。
はっとさせられると同時に、「今回は」「ショートは」という言葉に、とても救われた気持ちになりました。「私」が何かダメだったわけじゃないんだって。ブランド側が求めているものと自分が、たまたま一致しなかっただけなんだって。

これ以降、私はオーディションで受からないことがあっても「今回は違ったんだな」と心の中で思うように。1つ1つでいちいち落ち込んでられない。そんな数十秒で自分の人間性を否定されてたまるかって感じです!

◆空いたところは埋まる

仕事ってどうしてこうも重なるんでしょう。同じ日に何個も重なったことがありました。オーディションの早い日にちのものから受けていったのですが、

1本目×
2本目×

と連続で選ばれず、連敗記録に悲しくなっていたとき。直前で3本目のオーディションが入りました。しかも、私としてはかなり憧れのブランド!

結果、受かることができました。そして有り難いことに、その後数年間に亘|《わた》り、そのブランドのショーに出続けることになりました。

どこかでダメでも、どこかで選ばれればいいんだと実感した瞬間でした。今考えると、逆に1本目と2本目で受からなくて良かった〜!とさえ思います。それくらい、自分にとって素晴らしい仕事に巡り会えたのです。


◆逆も然り

毎シーズン出ていたのに、「今回だけ落ちた」なんてこともあります。

周りのモデルからしたら「オーディションに来る必要あるの?」って思われるくらい、レギュラーのように出演していたショーがありました。しかし私としては、いつ他のモデルと交代してもおかしくないぞ…と常にプレッシャーを感じながらオーディションを受けていたのですが。。
ついに、「そのとき」がきました。

いつものオーディション、いつもの審査員席。だけど、何か雰囲気が違う気がする。今まで通りにフィッティングして歩いて…和やかに終わりましたが、結果はいつもと違いました。

外されたことをマネージャーから告げられたときは、もちろんショックでした。けれどそこには明確な、私自身にはどうすることもできない理由があったのです。
それは、今回に限りショーを開催する会場の雰囲気が大きく異なること、加えて、いらっしゃるお客様も変わることでした。当然、それに合わせてモデルも変える。結果、今まで選ばれていたモデルたちとは全くタイプの異なるモデルが選ばれたとのことでした。

クライアント側の事情でモデルが変わるなんてこと、いくらでもあります。ブランドのイメージを刷新したい、ターゲットとする年齢層を変えたいなど、理由は様々。

そもそも、こちらはどんなモデルを探しているのか明確に知らない中でオーディションを受けているので、なぜ受からなかったのかを自分で考えようとしても、どうしようもないのかも。

それでも私の中であまりにもショックが大きいものは、こうしてマネージャーに理由を尋ねたりもします。そうすると自分の知りえなかった事情を聞けることがあり、無駄に気持ちが沈むことも避けられます。(もちろん、マネージャーが詳しいことを知らない場合もあるんだけど、話すだけでも解消することはたくさんある!)

一つ一つのオーディションを大切にしているからこそ、「落ちた」という結果に僅かでも衝撃を受けるのは当たり前。その気持ちをどうやって立て直して次を迎えられるのか、モデルを続けていく上では絶対に経験する悩みの一つかなと思います。

経験を通して強くなるもよし、先輩たちの話を聴いて勇気づけられるのもよし、マネージャーに理由を聞くもよし。どんな方法でもいいので、落ち込みすぎずに続けられる人が増えたらいいなと思います。

◆おまけ

最初のトピックで、ショーのオーディションで歩きもせずに帰されたことがあると書きましたが、幾つかある中でも一番に衝撃を受けたのは、NYFWのとき。

9月のNYFW。その日、私がその会場でサインインしたときには、すでに300人以上のモデルが受けた後だったのですが。名前を呼ばれ、デザイナーの前に行ってBOOKを差し出すと、

「もっと美しくて歩けるアジア人モデルいたよね?」とすぐ後ろに控えていたスタッフに話しかけ、BOOKを開くこともなく、「(帰って)大丈夫」と言われたことがありました。

悔しかった、、、!
入った瞬間からオーディションが始まっていて、最初の印象で決まることはわかっていたつもりだったけど、、BOOKも見てもらえない、歩かせてももらえないほどにダメだったのか…と自分に落ち込みそうになりました。
一緒にいた白人モデルの友達が、「あれは酷い!」って怒ってくれたから、まだ心を折らずにいることができましたが。中々にショックの大きい出来事でした。

ちなみに、数シーズン後に同じブランドのオーディションに呼ばれたときは、まさかの歩くことができました!結果は落ちたけど笑
とことん縁がなかったです!笑

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鈴木亜美
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