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自分の人生も、きっと誰かの背中を押している

私の人生は、いつも誰かの言葉に励まされながら進んでいます。それは身近にいる人だったり、全く面識のない人だったり。今回は、そんなターニングポイントで私の背中を押してくれた人達のお話です。


◆19歳でダンスを始める

高校生最後の年、私は大学受験のために各大学の学校説明会に足を運んでいました。

高校に入って宝塚歌劇団を知り、さらに宝塚部というミュージカルやダンスを披露する部活で自身も演じる側を経験した私は、昔から持っていたミュージカル熱が再燃し、いつしか舞台に関わりたい気持ちが強くなっていきました。しかし当時は歌やダンスを習っていたわけでもなく、部活でやる演技ですら苦手だった私は、演じる側はとてもじゃないけど目指せないと決めつけていました。そこで考えた末に、舞台上の色を操る照明スタッフを目指すことにしたのです。

こうと決めたら一直線。照明コースや舞台に関わりを持てそうな学科を調べ上げ、実際に話を聞いてみることにしました。

迎えた学校説明会。その学科では映像やダンス、演劇を心理学と紐付けて学べるというものでした。実は、高校生活でダンスにかなりの興味を持っていた私は、わずかな可能性として照明以外の道も視野に入れておこうと、この学科を候補の一つにしていたのでした。

そんな軽い気持ちで入った教室で、私の運命が決まります。当時映像監督をするとともに学科長でもあった教授の話が始まりました。内容はもうすっかり忘れてしまったのですが(ごめんない…!)、とにかくこの学科長がいるところで学んでみたい…!そう思わせてくれる話でした。

そして次に話をしてくれたのが、こののち私がみっちりダンスで鍛えてもらうことになる、コンテンポラリーダンサーの教授でした。ダンスが好き、でもこの年齢からやるのは無謀なんじゃないの…?そう思っていた私の前で、教授自身がダンスを始めた経緯について話してくれました。それは、活躍している人はみんな子どもの頃からやっている、そんな勝手な私の固定観念を見事に壊してくれるものでした。

彼は19歳からダンスを始めた、と切り出しました。それまでやってきた絵を描くことを辞め、ダンスを始め、今ではパリオペラ座のバレエ団の振付けをしたり、自身も国内外問わず公演をしたり。もはやコンテンポラリーダンスの世界では知らない人はいない程の存在の人が、貴重な経験を語ってくれたのです。

短い時間の中で話されたその内容は、あまりにも衝撃的で。迷っていた私の気持ちが、一点に向かって急速に動き始めるのを感じました。この教授に習いたい。私もダンスを始めたい。くすぶっていたダンスへの想いに本格的に火がついた瞬間でした。19歳で始めて成し遂げている人がいるという事実は、私へ一歩踏み出す勇気をくれました。

そこからは4年間、ダンス漬けの毎日でした。日中は大学でダンスをし、終わるとアルバイトへ走り、それが終わると今度はダンススタジオに行き夜遅くまで踊る。合間に歌や演技のレッスンも入れ、照明スタッフという夢から大きく方向転換、ミュージカル俳優を目指すようになりました。

◆20代後半からのデビュー

幼い頃から習っている人には中々追いつけない、基礎を作るだけでも精一杯。けれど昔からやっていないからこその強みもある。そんな様々な感情に揺さぶられながら、舞台に関わりたいという思いを抱えて毎日必死だった頃。

舞台出演の後押しになると考えてミスコンに出場。そこで受賞したのをきっかけに、ダンサーとモデルを抱える事務所に入りました。が、入ってはみたものの、この先どうしたら舞台に出れるのか…そう思い悩んでいたとき、モデルの仕事が舞い込んできます(身長があったため、モデルのオーディションにも行かせてもらっていました)。

それはマンションのPVプロモーションビデオ撮影で、俳優の方と夫婦役での出演。自転車で川沿いを走ったり、橋に寄りかかりながら何気ない会話をしたり…今とは全く異なる種類の仕事でしたが、この日があまりにも楽しくて、、、モデルを目指したいかも…!突如、そう思い始めます。

もしかすると、この仕事をやったことで、今まで想像をしていたモデルへのイメージがくつがえったからかもしれません。それまでは、怖いくらいに美しくて、痩せるためにお腹に虫を飼っている(小学生の頃にどこかで聞いたみたいです)、煌びやかな世界の住人だと思っていました。が、モデル業にはこんな仕事もあるんだと知って、やってみたい気持ちがムクムクと湧き上がってきたのです。

そして、モデルを極めるんだったらそれ専門の事務所で海外にも挑戦したいと思い、すぐさま当時の事務所社長に連絡をし、正直に気持ちを伝え、辞めることを承諾してもらいました。

私はこの時点で23歳。モデル事務所の応募条件を見てもわかるのですが、始めるにはだいぶ遅い歳。当時は、19歳や20歳までの募集をかけているところがほとんどでした。ダンスを始めるか迷っていたときとまた同じ。私はいつも始めるのが遅い。目指すことを決めたけれど、この歳で本当にやれるの…?

勢いよく辞めたものの、どこか弱気になっていたとき。背中を押してくれてたのは、今も私が憧れるオランダ人モデル、サスキアでした。TVでやっていたショーのバックステージインタビューに、彼女が写ったときのことでした。普段のマニッシュなランウェイ姿とは打って変わって、母である柔らかさを持った彼女の笑顔や話し方に、何て素敵な人なんだろうと衝撃を受けたのを覚えています。それまでも好きだと思っていたけれど、そのギャップにさらに心惹かれました。

サスキアはティーンでモデルを始めたけれど、デザインを勉強するために一旦モデル業をやめ、再び20代後半で始めてブレイクしたトップモデル。この経歴が、当時の私を後押ししてくれました。端から見れば、私と彼女では持っているものが違うし、同じようにしても全く同じモデル人生を歩めるわけではないのはわかっています。けれど、何かあと一つ、背中を押してくれるものが欲しかった。もしかしたらという可能性が欲しかった。「絶対」という保証はないし、要らないとも思うけれど、わずかな可能性を見出みいだせれば頑張れると思ったのです。

そうして私は、24歳で正式にデビューしました。そこからのモデル人生は本当に忙しいもので、何度も辛くて涙を流すような出来事も経験しましたが、同じくらいかそれ以上に心震える嬉しい出来事があり、現在も続けることができています。

◆今が最速

よく「〇〇歳なんですけど、モデルを始めるには遅いですか?」と質問をいただくことがあります。答えはほぼ「YES」です。やっぱり早ければ早いほどいい。それは実際に私が始めてみて思ったことでした。

けれど遅くから始めたからこそ、他に経験してきたことを活かせる強みもあるし、遅いとわかっているから貪欲に頑張ることができたのかもしれない。遅いかどうかはやってみなければわからないし、実際にやってみた人が結果として言える言葉だと思っています。

何かを始めるには「今日が一番早い日」だと聞いたことがありますが、まさにその通り。いつだって今が一番早いのです。

上に書いた2人の経歴が、私にそのことを教えてくれました。踏み出すための勇気をくれました。もちろん私が勝手に感銘を受けただけなので、当人たちはそんなこと知るよしもありません。

でも、それでいいのです。どこかで、誰かが勝手に勇気をもらえる。そんなことって実は、日常に多く溢れています。いつも誰かの人生が誰かにとっての後押しになっています。だから私も自分の経験を書き続けて、このnoteがどこかで誰かの背中をポンっと押せるようなものになったらいいなと思います。

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鈴木亜美
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