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眉毛がもたせてくれた自信

何か1点、自信を持てるものがあれば変わってくる。私にそれをもたらしてくれたのは、眉でした。ブリーチして黒からハイトーンの金色へ、いわゆる"眉なし"状態の時期がありました。今回はそのときのお話です。


◆きっかけは海外での作品撮り

実は、日本でモデルの眉をブリーチすることは、気軽にはできないと聞きます。
理由としては、肌の弱いモデルだと荒れてしまったり、なんとブリーチを施した人が元の色に戻すのを忘れて帰ってしまったり、そうかと思えばモデル自身がその状態を気に入ってしまい「戻さなくて大丈夫〜」と勝手に判断したり、、、とにかく次に入っている仕事に支障をきたすことが多く、モデル事務所側でNGを出すところも少なくないんだとか。

私が日本で一度だけ経験したときも、メイクさんが恐る恐る尋ねてきたのを覚えています。
そのときはマネージャーが同行しており、撮影が終わり次第元の色に戻すことを条件に、実行に移すことができました。

しかし、それ以降は何年も機会がなく、ブリーチした自分の見た目なんてすっかり忘れていた頃に、再びその機会はやってきました。

今回の場所はNY。
事務所に依頼が来た作品撮りの現場でした。ヘアサロン勤めで撮影も行うヘアメイクさんと、ヨーロッパから数週間だけ来ていたフォトグラファーとの3人でのセッション。

当日待ち合わせ場所のサロンへ行くと、ヘアメイクの彼が「実は眉をブリーチしたいと思っているんだけど、どうかな?」と尋ねてきました。

前回の経験から自分の肌が荒れないであろうことも知っていたし、何より当時は、モデルとして出来ることはなんでも試したい!という気持ちを強く持っていたため、私もやってみたいという気持ちを伝え、その場で事務所に連絡。OKをもらい、久々のブリーチに臨みました(もちろん、終わった後は黒に戻すという約束のもとで行われました)。

さすがサロン勤務の彼、カラーに関してはエキスパート。アジア人の黒が脱色しにくいことも把握していて、うまくブリーチしてくれました。
その眉がまた、マッシュルームカットだった私の髪型と相まって、想像以上に似合っている、、、!元の眉よりも断然いいのでは?!と、私自身かなり気に入ってしまいました。

そこからの撮影も順調で楽しく、あっという間に時間が過ぎていき、いざ元に戻そうというとき。彼が言ったのです。

「ブリーチした眉、Amiにすごく似合ってるよ!もちろん戻すことも簡単にできるけど、戻さない方がcoolじゃない?」と。

正直、気に入り始めていた私にとって、これは嬉しい提案でした。そして、チャレンジ好きなNYの事務所なら、この提案を受け入れてくれるかもしれない…!と思い、再びマネージャーに連絡。「ブリーチした眉、戻さなくてもいいかな?」と聞くと、すぐさま「いいよ!」と返事が来ました。

こうして、人生で初めての眉なし生活が始まりました。

◆積極的に褒める文化がくれたもの

作品撮り以来、街で声をかけられることが格段に増えました。

「その眉、めちゃくちゃ格好いいね!」

歩いているとき、レジでお会計してもらってるとき、もちろんオーディションでも。男女問わず。素敵だと思ったら口に出して伝える、積極的に褒めるというアメリカの文化を、これほど嬉しく思ったことはありません。

日本から初めて来たときは、街中で急に声をかけられることに驚いたり、怖がったりするばかりでした。しかしこの頃には、そうした文化にも慣れ、とても素敵な考え方だなとも思っていたので、言われたことに対して素直に「Thanks!」と返せるようになっていました。

眉なし期間中。NYのカフェにて。

何度も何度も声をかけられたことは、私の中で確実に自信へと繋がっていきました。

実は私、海外に行って他のモデルと関わるうちに、自分に自信がなくなっていた時期がありました。「上には上がいる」という言葉があるように、海外で活躍するアジア人には独特で個性的な顔立ちのモデルが多く、日本では「個性的だね」と言われていた私も、この中では自分は薄いな…と気弱になっていたのです(濃いだけがいいことじゃないって今では思えるんですけどね。薄いも個性!)。

そんな時期に何気なく承諾した、眉ブリーチ。他に何が変わったわけでもないのに、その小さな変化が与えてくれたものは、私にとっては凄く大きなものでした。海外で仕事が増えたのはもちろん、帰国しても様々なクリエイターとの仕事が待っていました。

特筆すべきは、ショーの仕事。中々思うようにいかず半ば諦めていたNYFWで、10本ものショーに出演が決まったときには、自分でもびっくりしてしまいました。何年もやってきて、こんなことは初めて…!
眉ブリーチが目を引いたのかと思いましたが、本番は眉を描かれることがほとんど。これは私の推測ですが、新しさを取り入れたことで得た自信が、顔や雰囲気から出ていたんじゃないかなと思います。

何かを少し取り入れるだけで、自分の心持ちが一変する。そしてそこで変化した気持ちは、新しい道に自分を導いてくれる。眉ブリーチをしただけで、そんな経験をしました。

それから約1年半くらい、眉なし生活は続きました。2週間ほどですぐに黒く生え変わってしまうので、ブリーチ回数は中々に多かったのですが…黒がポツポツ生えてきてもそれはそれでいい感じ、とゆるく考えていたためか、難なく続けることができました。

”完璧な状態じゃなくても、それはそれで味が出ていいんじゃん?”と楽観的に考えられるようになったのも、この出来事があったからかもしれません。お陰で、普段の生活もだいぶ楽になりました。

◆言葉の威力

実は海外では好評だった眉なし、日本でも仕事では受けが良かったのですが、日常生活となると話は別なのか…ギョッとされることが多かったです。笑
やはり日本では黒い眉が定番なので、見慣れないのかな?アメリカとは逆で「その眉どうしたの?」とか「眉ないんだね!」と言われることが多かったです。

はっきり言って、その言葉だと自信なくしちゃう、、笑
「その眉どうしたの?…格好いいね!」とか「眉ないんだね!…それも似合ってて素敵!」って言ってくれたら嬉しいのに…って何回も思いました。
見たままを言うのではなく、「事実+褒め言葉」だとお互いハッピーだなと。だってその言葉が、受け取った相手の人生を変えてしまう可能性だってあるのだから。

かくいう私も、今まではきっと事実だけを口にしていたことも多かったんだろうと思います。自分が体験してみて初めて、言葉の持つプラスの面に気づけたし、だからこそ気をつけようと思うことができました。一見するとマイナスな言葉ではなくとも、相手を傷つけてしまうことがあるんだとハッとしました。

あのときブリーチしたお陰で、それを続けてみたお陰で、色々な気持ちに気づくことができました。そう考えると、ヘアメイクの彼には感謝の気持ちでいっぱいです。眉なし生活は本当に楽しかった!タイミングがあったらまたやりたいな〜なんて密かに考えています笑

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鈴木亜美
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