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柳澤亜美
2020年1月20日 14:42
「こんなに歩く生活、お父さんが生きていた頃はまったく想像できなかった」そう母が言ったのは、犬の散歩の帰り道、細い路地を曲がったときのことだった。「わー、お嬢発言でたよ」と茶化した。私は、母の言葉だけを頭の中で反芻しながら、左右に揺れる短いしっぽを眺めた。私は、母と一緒に歩いた記憶がほとんどない。母と出かける時は、いつも車だった。車を運転する母は、前しか見ない。ただ、ひたすら