ぐらしあすの「社宅という名の檻」
ぐらしあすは今社宅で一人暮らしをしている。
かつて、高度成長期に作られたであろう社宅は、外観は今一つだが、中身は広いうえに、入居の際にクロスはきれいにしてくれている。
32世帯が住める社宅の1棟に、今入居しているは、ぐらしあすを含めてたったの4世帯。
ドアの鍵をかけずに外出しても侵入者はまずいない。
家賃がどえらい安いのは、財布の薄いぐらしあすにはありがたい。
今、夜は外街灯も少なく周りが暗いうえに、聞こえてくるのは鈴虫の音くらい。
そういった環境はぐらしあすにとってはありがたいが、問題がいくつかある。
まず、一つは「むかで御殿」だということ。
ぐらしあすがおののくものは、大きな足長ぐもと、大きなムカデ。
ベランダや畳の隙間にムカデが寄り付かない薬剤をふりかけまくったので、幸い今夏はムカデは現れなかった。
ぐらしあすは週に3回、24時間勤務の日々を送っている。
情実のように家賃の安さはありがたい。
しかし、箱から職場への繰り返しでどうしてもむなしさが募る。
そしてもう一つ、家のすぐそばが、社員の駐車場であり、レースのカーテンをかけていもぐらしあすの家は、夜になると外から丸見え。
部屋を片付けられないぐらしあすは、その部分が恥ずかしい。
職場で常に「なめんなよ」という雰囲気を醸し出しているぐらしあすは、その面においては超恥ずかしい。
もう一つ、もっとも大きなデメリットは、職場の上司が社宅担当で、毎日社宅に不具合がないかと見回りにくる。
時折、その上司は、ぐらしあすの家からこの音楽が聞こえてきたなどと、わざわざいう必要もないのに、それは嫌味ではないけれど、それが故見張られ感が半端ではない。
どこかいつも監視されているように思う。
居心地が言い訳がない。
ぐらしあすは、せっかく都会から移住してきたので、古民家を借りてのんびりとした日々を送りたい。
そのような気持ちが、ぐらしあすはいつも檻の中のオランウータンのように感じて仕方がない。