ぐらしあすの「入院中に師長さんが言った言葉」
その病院では、ぐらしあすは4人部屋だった。
隣のベッドの男性は、いつも屈託のない笑顔で、みんなの人気者だった。
まず顔が優しい。仏さんのような顔をしている。
眠剤を飲んで就寝時間を迎えると、その男性はいちころで眠ってしまう。
すぐにいびきをかきはじめ、そのいびきが徐々に大きくなっていき、このいびきで本人がよく起きないなと思うぐらい最高潮に達する。
そしてまた静かになり、いびきをかきはじめるの繰り返し。
ぐらしあすは、そのいびきが気になって、一度気になったらどんどん気になっていき、とうとう眠れなくなった。
1か月くらいかながまんしていたのは。
ある日、担当の看護師さんに、いびきがうるさくて眠れないと伝えたら、すぐにぐらしあすを別の4人部屋に移してくれた。
翌日師長さんがやってきて、「ぐらしあすさん、いびきでずっと困っていたんでしょ。なんでもっと早くいってくれないの。ぐらしあすさんに足らないのは〔これこれしたい、ああしたいっていうのが足らないのよ。もっとどんどん言わなきゃだめよ〕」と。
さすがに観ているなと感じた。
食事の席は決まっていて、テーブルに名前が書いてある。
その日の夕食で、どう見てもぐらしあすのおかずが一つ足らない。
忘れているのかなと思った。
けど、そばにいた看護師さんにそれを伝えたら、「ほんとうだ。言ってくれてありがとう」と。
それはただ単にそうであったのか、妄想的に考えると、師長さんから言われてそうしたのか。
そこは謎だが、ぐらしあすの考え過ぎだろうか。
あまりにもタイミングが合い過ぎる。
いいなと思ったら応援しよう!
![ぐらしあす](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99208496/profile_aef14f365bb28c11e8418b23025ed83f.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)