見出し画像

しろいろの街の、その骨の体温の/村田沙耶香

▫️あらすじ
クラスでは目立たない存在の結佳。習字教室が一緒の伊吹陽太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだがー。女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。第26回三島由紀夫賞受賞。

▫️感想
主人公・結佳が小学生から中学生まで、心と体が女の子から女子へと成長していく姿を再開発が進む白くて灰色の街との比較で描いている。特に中学生でのクラスカーストの描写がとにかく痛い。学生時代にあまりいい思い出がない人にとっては自分の鏡のように写ったり、クラスカースト上位のクラスメイトからの言葉の暴力には何度も目を背けたくなったが、結佳の成長を最後まで見届けなければならないという一種の覚悟のようなものも同時に存在していた。しつこいほどに(褒めてる)描かれた彼女たちの痛くて青くて脆い描写はきっと、癖になるはずだ。

▫️心に残った一行
P159 「見返すなんてばかみたいだな、と私は思った。見返すということは、相手と同じ価値観を共有するということだ。ピラミッドの存在を肯定するということだ。

P281 「言葉は色鉛筆に似ている、と私は思った。今までは、太陽を塗るときは赤色、海を塗るときは青色の色鉛筆を、なんとなく大きな力に従って取り出していた。けれど、太陽を真っ青に、海を真緑に、好きな色鉛筆を取り出して塗りあげていってよかったのだ。そんな当然のことを、信子ちゃんはとっくに知っていたのかもしれない。

▫️こんな人におすすめ
・思春期を題材にした作品を読みたい方
・普段、学生と関わる機会が多い方
・小中学生の心情を理解したい方

いいなと思ったら応援しよう!