こちらあみ子/今村夏子
▫️あらすじ
あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。
▫️感想
表題作『こちらあみ子』、「花束みたいな恋をした」で取り上げられていた『ピクニック』を含む短編集。こんな濃度の高い短編集はじめて。『こちらあみ子』は、あみ子の視点で描かれているからこそ、あみ子の行動に感情移入してしまう部分が大いにあり、弟の墓を建てる場面は共感性羞恥を感じてしまい、目を細めて読み進めてしまった。(それくらいあみ子の行動や言動がイキイキと描かれており、神視点や周囲の視点で描かれていない点がこの作品の救いなのだろう…。)
『ピクニック』は読み終わってもなお心がザワザワする作品だった。これこそ今村作品の真骨頂なのだろう。日常の中に潜む人間の怖さというか、物語だからといって脚色した怖さが描かれていないところにこの本のリアルさがある。
▫️こんな人におすすめ
・心がざわつく本を読みたい方
・話題作に挑戦したい方
・短編を読みたい方