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あみあげミトン🧤立ち上げ経緯(あげ&まこ)

気軽にきさくに演劇をたのしむためのお気楽企画「あみあげミトン」。たくさんの演劇関係者たちが、日々あくせくと公演の準備をする中、どうして「気軽にきさくに」なの?発起人で、『Foolish』出演者でもあるお二人に、企画のねらいと立ち上げの経緯について、たずねてみました。


まこ(左) 林揚羽(右)/撮影 yoshikino

演劇を、楽にやりたい。

―企画を立ち上げたのは、何がきっかけだったのでしょうか

まこ 演劇をやることに対して、ハードルを感じていたというのが大きなきっかけです。もともと私は中学校で3年間、演劇部に所属していましたが、高校では演劇から離れました。その後は社会人になる直前の大学時代に一度だけ公演をして、それきりでした。 演じることが好きだという気持ちは常に燈(ともしび)のように心の中にありました。でも、社会人になると演劇はものすごくハードルが高いことのように感じて。それに他の趣味、ダンスとか推し活とか、自分にとって手が届きやすいことをやっていたら、あっという間に時間が過ぎていきました。  


見学に訪れた会場でくつろぐまこ

 まこ そんな中、あげ(林揚羽)とは新卒で入った会社の同期同士で。内定式後の飲み会の場で、お互いに演劇をやっていたことを話して以来、仲良くしていました。
過去の公演のDVDを貸し合ったりもしていたよね。

 あげ 社会人になっても演劇をやっていた人と出会えたことがものすごくうれしかったんです。内定をもらった当時、小劇場で演劇をやっていた仲間に「じゃあもうあげは演劇をやらないね」という言葉を投げかけられて、とてもショックだったので…仲間はずれにされた感覚というか。

まこ 蓋を開けてみたら、あげのほうが何倍もガチでやっていたわけだけど(笑)。
なんとなく関係は続いて、昨年の9月ごろかな?「(演劇を)やってみたいけれど、敷居が高いと感じる」ということを話すと、あげはすごく共感してくれたんです。その時、文言は忘れてしまったけれど「気軽にやってもいいものなんだよ」と肯定してもらったことを覚えています。

まこ あげに話をしてから、一気に目の前が開けた気がして、そこからはもう、彼女の経験や実績や行動力に乗っかった形で話を進めていきました。 

あげ 私の認識だと逆だなあ。企画については、まこが背中を押してくれたんだと思っています(笑)。 私は、所属していた劇団を2022年12月に解散してから、演劇を楽にやりたいという気持ちが次第に強くなりました。劇団の活動だとどうしても、採算を取らないといけないとか、何かにつけて意思決定の大変さがあったので…。

カメラに向かってほほ笑むあげ


あげ まこと同じ会社から転職した後の昨年9月、一緒に飲む機会がありました。演劇をもっと楽にやりたいねという話をしていたところ、私が感じていたハードルをまこがどんどん切り落としてくれて。 例えば、「演出家はどうしようか」という私の問いに対しては、「私たちで演出やればよくない?」というふうに。

あげ 中学、高校の演劇では演出家がいなくて、部員みんなで脚本を解釈して演出をつけていました。でも大学の演劇サークルや小劇場演劇は、演出家がいるのが当たり前という世界で、本当に目から鱗でした。そこに長くいたので、いつの間にか「演出家はいなくてはいけない」という固定観念ができていたんです。 演出だって2人でやれば良いのではないか、小さい場所でいいのではないか…まこにそうやって切り落としてもらううちに、気軽な演劇はできるな、と。 

まこ やりたい、とはずっと言っていたんだよね。ただ私にはやり方がわからなかった。それに私がやるのは、あげみたいにガチでやっている人に対して失礼なんじゃないかとも思って…。でも、話していると、私の思いを排除するようなそぶりは全くなかった。  

あげ まこと話を進めるずっと前に、今回脚本を書いてくれた阿南改さんにも「気軽に演劇をやりたい」という話をしていました。すると本当にすぐに本を書いてくれたんです。2022年の7月ごろだったと思います。 それから1年ちょっと寝かせてしまっていたのだけど(笑)、今度は23年の9月に、まこから「やりたい」という話がありました。そこから、「ちょうど本あるよ、やろうよ!」という気軽さでスタートした企画です。 演劇を遊びのようにやってくれる人を探していて、でも回りにそういう人が思い浮かばなかったので、まこの存在がありがたかった。  

あげ 私が長い間取り組んでいた演劇は、トップダウン型でした。つまり、「演出家の実現したい世界を作っていく」というもの。私にとって演劇はずっと、気軽にやれるような代物ではなかったんです。「達成しなければいけないもの」でした。  


会場下見と合わせて撮影をするふたり/撮影 yoshikino

  「自分が出る作品は面白くないといけない」。
そういう気持ちは、今はなくなってきている。

―すると、気軽に演劇をつくり、上演するということに、不安はなかったのでしょうか

あげ 不安は…なかったです。「こういう気軽な演劇ですよ」とお客さんに最初から言っておけばいい話だと思ったから。 すごくちゃんとしたものを見たいという人は、この演劇を見に行かないことを選択してくれるはず。私たちは演劇を楽しむためにやり、それを見たい人たちが見に来てくれるはず…観客への信頼というのかな、安心感があります。  

あげ それは大学時代にはなかったものです。「自分が出る作品は面白くないといけない」。そういう気持ちがずっとあったけれど、今はなくなってきています。 

まこ 私は、「気づきを与えてもらった」という感じです。演劇というのは役者が数人いて、最低1時間くらいを使って、いわゆる「ガチ勢」がやるもの、という固定観念がありました。それが、2人きりでも演劇ができると言われて。固定観念を崩してもらって、自分が演劇をやる大きな取っ掛かりになったと思います。

まこ とはいえ演じることは、かなりお久しぶりになるので、不安がないかと言われると…(笑)。それでもあげは、折にふれて「気楽でいいんだよ」というスタンスで接してくれます。そのおかげでずいぶんハードルが下がってきたなと感じています。 


自宅リビングでの稽古中の様子 まこ(左)とあげ(右)

「正解のないものを、ちょっとやってみるか」

―さしあたって、「気軽な演劇」をどのように進めていますか

あげ これまでの稽古は、会場の候補地を見て、時間が余ったら本を読むという日もあれば、まこの家でひたすら本を読むという日もありました。短編なので2~3時間の稽古でも、何度も読むことができるんです。

まこ 今のスタイルがありがたいです。遊びの延長のような形で、雑談を交えながら読み合わせをしたりして、肩肘はらずにやれています。稽古はもっとがちっと決めるというか、ぴりりとした雰囲気でやるイメージがあったので。

あげ 作品の舞台がオフィスっていうことも大きいかもしれない。場所を選ばずにできるもんね。

 あげ あとは、お互いの解釈を話したりするのも好きです。
そういうのが嫌いな人もいると思います。「役者のアウトプットは演出家が決めること。脚本解釈は、そのアウトプットに合わせていけば良い。役者同士で話しても仕方がない」。こうした考え方の人が周りにはけっこういました。そういう人の前では萎縮してしまう。
「正解のないものを、ちょっとやってみるか」というスタンスで進めています。

―2人が出演する作品について、少しだけ教えてください

あげ 「楽しくてかわいい関西人が演じる作品を」と阿南くんにオーダーしてできあがった、バカな二人芝居です(笑)まこが関西人なので。
どちらが先輩でどちらが後輩なのか、全編を通して本気で論じています。

まこ そうそう、当の二人は大まじめに討論しているんだよね(笑)やっていて楽しくて、その姿を見ている人たちも楽しくなる。そういう現象を体現した作品だと思います。乞う、ご期待!

(インタビュー 常岡あさえ)


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