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9.13 ふくらんだ黒猫

13日の金曜日。信号が青になるのを待っているとき、黒猫が道路を横切るのを見た。

「黒猫だ」と気がついたときには、黒猫は道路の半分以上を渡っていてとくに目が合うこともなく
黒猫はわたしのことを隣の木とほぼ同義の物体と捉えただろうし
わたしも黒猫のことを13日の金曜日でなければとくに意識しなかっただろう

いや待て、もしかしてあれは暗闇によって黒に見えるだけの茶色の三毛猫かもしれない?
夏の暑さは残るけれど陽が落ちるのはだいぶ早くなった。

わたしの前を横切った黒猫はとても膨らんでいた。

あなた、暑さで膨張しているの?

黒猫にすらりとしたイメージがあるのが間違えたか。

とてもふわふわで、膨らんでいる猫だった。
13日の金曜日だから脳みそが勝手に黒く染めたかもしれないなと疑ってみたけれど、やっぱり黒かった。
黒くて膨らんでいた。

「ふくらんだ黒猫」というタイトルで絵本を描くなら、きっとわたしもふわふわに膨らむんだろう。
アルベルトジャコメッティと対局の方法でアルベルトジャコメッティの世界観をできそう。

こんなよくわからんことを書いてるのは、美術館に行けてないからだろうな。

びっくりしてしまうくらい日にちが早い。

ゆまちゃんが「今日は13日の金曜日ですよ、気をつけてくださいね」と言ったことで、わたしの中の今日が「金曜日だな」というところから「13日の金曜日だな」に変わった。
何に気をつけるかわからないけど気をつけようと思ってお店を出た矢先に冷蔵庫の春巻きを持ち帰るのを忘れていて、ゆまちゃんが自転車で春巻きと共にわたしをおいかけてきてくれた。
ゆまちゃんが追いかけてくれている間のわたしは春巻きのことをすっかり忘れてMARTに寄ろうと決めちゃって歩いていて、
手元に春巻きが追いついてくれたけれど、さっきのMARTの気持ちを消せなくて春巻きを持ったままMARTに向かうことにした。

春巻きのことをカバンに隠したわたし。
閉店30分前でSOLDOUTじゃなかったからとかいう言い訳を持ってチョコレートケーキを食べた。
今朝の「チョコレート食べたい」の気持ち(パンケーキ食べたい♡みたいなやつではなくて、優しいお味噌汁をください…みたいな温度のやつ)を満たすことに成功し、ぎりぎり隠せていたかわからない春巻きをカバンから取り出して帰り道を歩いて、そしたら膨らんだ黒猫が横切ったわけだ。

月は半分より大きかった。これは欠けていくんだったか満ちていくんだったか、どっちだったかしらと考えて
ゆまちゃんは過去の日記から黒猫のダジャレをくれた。

満ちている。
そうか、中秋の名月へ向かうから、月は満ちていくことへ向かおうとしてるのか。

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