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突然の変化にどう備える!?地元で人気の観光施設が突然閉鎖!環境変化に負けない宿経営とは③〜「想い」を深堀りすることで差別化に繋げる

前号では、近隣のスキー場閉鎖の可能性が出てきた事例をもとに、解決策を導き出すためのファーストステップとして、経営戦略の策定・立案でフレームワーク「SWOT分析」を用いて内部環境におけるStrength(強み)と弱み(Weakness)、外部環境における機会(Opportunity)と脅威(Threat)の4つの要素について抽出いたしました。

SWOTの各要素を抽出してみることによって、自館の内部と外部の状況を客観的に捉えながら、「自館が今、どのような立ち位置にあるか?」いう宿の現在地が、俯瞰的に見えてきます。

そうした中、本メルマガでご紹介した宿泊施設にヒアリングの機会をいただき、新たに強みの部分について、お伺いすることができました。


・オーナー夫妻が大の楽器好き。館内にはピアノ、フルート、ギター、トランペット、ドラムなど様々な楽器があり、お客様は自由に触れたり使ったりすることができる。

・そのため楽器好きのお客様が多い。とくに音を出せる環境が少ない都内の方は「ここでは自由に思い切り演奏を楽しめる!」と喜ばれる方も多く、コアなファン、リピーターにつながっている。

・尖った趣味を持ち、音楽を通じたお客様との交流を心から愛する名物オーナーの、独自の世界観が感じられる。

・ただ、これらは宿の特徴ではあるものの、プランとして打ち出してきたわけではなかった。強みというよりは、来訪されてから感じていただける付加価値であると捉えていた。

いかがでしょうか。
私たちはこの内容に、宿泊施設のイノベーションを起こすための大きなヒントが含まれていると感じました。

前号では、SWOT分析でStrength(強み)と機会(Opportunity)を掛け合わせることにより、

『日本の地域の文化、暮らしに興味を持つ海外(準)富裕層に、家族経営ならではの行き届いたホスピタリティと日本らしい温かなおもてなし、アットホームな居心地の良さを提供するアンティーク宿』

という新戦略の方向性が見えてきたところまでをお伝えいたしましたが、

ここからさらにお客様市場のセグメントを絞り込む要素として、また、該当の宿泊施設のブランディングの軸として、『音楽・楽器好きの宿』といった、新たな強みが追加されることになりました。


『音楽・楽器好きの宿』というのは、オーナーが創業当時に思い描いていた理想の宿の世界観の一つでもあったのでしょう。

オーナーにとっては、音楽は「純粋に好きなこと」だったため、これまではそれを「強み」として打ち出す発想には至らなかったのかもしれません。

それでも長年お客様を惹きつけ続けた事実は、それが宿にとって大きな魅力であったという他ならぬ証。

おそらくその背景には、ご自身と同じように音楽が好きなお客様に楽器に触れていただき、音を気にせずに演奏できる環境を提供したいという想い、そして、そんな宿でありたいというオーナーご自身の強い理念があったからこそだと思うのです。

音楽は言葉や習慣を超えた、いわばボーダレスな言語です。
楽器を弾いたり聴いたり、共に歌ったりすることで、感動をその場にいる皆で共有、共感し合うことで親近感と強い連帯感が生まれるもの。

そこで私たちは、音楽には特別な吸引力がある。
だからこそ他にはない「強み」としてさらに磨きをかけることで、宿のブランディングに繋げていけると考えました。

国籍を問わず音楽好きな方がこの宿にお泊まりになって、音楽や楽器を楽しめる。そうしてオーナーとお客様、またお客様同士の会話や交流が自然と生まれることによって、宿泊するだけの場所から、文化交流、国際交流の場として価値転換ができるのではないか。さらに、インバウンドのお客様が日本文化にも触れることができる場として、ユニークなコミュニティプレイスへと進化させていける可能性がある。

そんな、宿の未来のイメージが浮かんできました。


さて、この宿に「音楽を楽しめる宿」という新たな強みがあることが見えてきたところで、改めて戦略のフレームを整理していきたいと思います。

『日本の地域の文化、暮らしに興味を持つ海外(準)富裕層に、家族経営ならではの行き届いたホスピタリティと日本らしい温かなおもてなし、アットホームな居心地の良さを提供するアンティーク宿』

                                                                
                                                         
                           『音楽、楽器演奏を通したコミュニケーション』

= 『日本の地域文化、暮らしに興味を持つ国内外の大人の音楽ファンが、
家族経営ならではの行き届いたホスピタリティと日本らしい温かなおもてなし、アットホームな居心地の良さの中で、好きな音楽を好きな楽器で奏で、聴き、語り合えるミュージックコミュニティリゾート』


いかがでしょうか。

前号の後半でご紹介した新戦略からさらに具体性が増したばかりでなく、音楽という世界共通言語を宿の看板(ブランディング)に掲げることにより、客層をインバウンド旅行者に限定することなく、国内旅行者を含めてセグメント市場を広げられることができたと思います。

さらに、音楽のジャンルをジャズやクラシックなどに絞り込むことで、お客様同士やオーナーとの結びつきがより強まり、リピーターの獲得に貢献するばかりでなく、訪れるお客様の質(年収や社会的地位)の確保にもつながるではないでしょうか。

――――

さて、この戦略を具体的に形にしていく前に、すでに顕在化している経営課題についても併せてヒアリングができたので、いくつかのカテゴリーに分けて抽出してみました。

【ヒト】
・オーナーの体調不良を含めたリソース不足

【サービス関連】
・外国人(主に中国人)利用者のマナーの悪さ、壊される備品

【財務/経理】
・ランニングコストの負担増(お客様が一人でも満室でも変わらない維持費)
・館の老朽化に伴う、修繕費の捻出などで困っている

【ハード(建物、施設備品等)】
・建物、設備の老朽化
・ホテル前を走るメイン道路が悪路すぎる(私道扱いのため、所有者が整備しなくなると酷い有様。タイヤのパンク多発)


いかがでしょうか。
これらはいずれも経営者にとっては深刻な課題であり、可能であればすぐにでも対処していきたいと思われるものばかりだと思います。

しかし、宿の経営資源は経営者のリソース(時間や体力)も含めて限られているため、全てに即座に対処するのは難しいケースが殆どなのではないでしょうか。

そこで重要になるのが、今ある課題に優先順位をつけた上で取り組んでいくことです。

実際には、下記のような軸で課題のアセスメントを行ない、優先順位をつけていきます。

(課題のアセスメント評価方法にはいくつかありますが、今回はシンプルに戦略面からとお客様視点の両面から、その影響の大きさを可能な限り定量的に考察していきたいと思います)

①新戦略を実行するにあたって障壁となることが予想される場合、その影響度はどれくらいか。

②その課題が解決されないことによってお客様が被るであろう被害や満足度(顧客体験の質)の低下などの影響度はどれくらいになるか。

上記の軸をもとに、【ヒト】、【サービス関連】、【財務/経理】、【ハード(建物、施設備品等)】の各カテゴリーで抽出した課題を、それぞれ簡易的に5段階評価をしてみるとどうなるでしょうか。

ぜひご自身の宿の課題を洗い出しながら、手順に沿って考察していただけたらと思います。

次号ではこれらの課題のアセスメント結果とその対応策を講じた上で、今回新たに策定したイノベーティブな戦略をさらに具体的に掘り下げて、新たなミュージックコミュニティリゾートの実現に向けたブループリントについて考察していきたいと思います。

是非、次号もお付き合いください!


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