良い日の最後に脳出血9


 入院3日目。昨晩は隣のおばあさんが自分で腕の管を引き抜いたとかで、ちょっと騒がしがった。看護師さんが「わわわっ、たいへん」「もう血だらけ」「泣きたい〜」と言いながら、気丈にがんばっていた。結構時間もかかっていたが、その間おばあさんを責めるようなことも言わずに。この若い人を育てた方々が見たら、立派さに泣くと思う。

 左腕から点滴を外してもらう。入院以来、一番ほっとした。自由に動かしてみて左肩から胸の上、脇腹あたりまで痺れがあることを自覚した。以前、腰痛で整形外科にかかったときに受けた電気治療の痺れによく似ている。重たい圧迫感を伴うビリビリ。これから先、ずっとこうなのか。自業自得だけど悲しくはなる。せっかく肉体労働に慣れてきたのに。2年半前に転職したばかりなのに。明日の正午までに雇用延長を希望するかどうか、意思を職場へ伝えなければならない。こんな体で続けられるのか。悩む時間があまりないのがよいのか、よくないのか。

 点滴から飲み薬に切り替わった。ニフェジピン20mgを朝夕だ。夜間に何時間かおきだった血圧測定も、一日3回になるという。

 15時にお風呂。一人で十分にできる。上がってすぐに母が見舞いに来てくれた。高齢の母で買い物もひと仕事の母が、身の回りのいろいろな物を買って持ってきた。パンツがいちばんありがたかった。ノートやペンを入れてくれたこともありがたかった。出血した日に一緒に買いに行った新しい靴が届いたと、履いてきた。びっくりするほど軽くて歩きやすいらしい。喜んでいてうれしかった。黒い服を着て行くのが嫌だった、と珍しく白ベースのコーディネートだった。明るく振る舞ってくれ、見舞う気持ちがありがたかった。母とはいろいろと関係がうまくいかなくて、絶縁宣言を解除した矢先がこれだ。これからどうなっていくかは、わからない。

 飲み薬になってから、血圧が上がり始めた。深呼吸して、何度も測り直す。微熱と頭痛も出て、鎮痛剤(カロナール)をもらう。

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