【月刊あめのもり】2022年6月「ボスに学ぶ、経営、ブランディング、生き方」
みなさん、こんにちは。アイタイスの雨森です。
例によって公開日の前日の夜中にキーボードを叩いております。もうそこには触れなくて大丈夫ですね。
先ほど配信されたメルマガでもお伝えした通り、先日、スタッフとの打ち合わせの中で、ジャストアイデアレベルで、Webサイト上でのコンテンツ案をブワッと挙げていました。
例えば〇〇が〇〇するとか。あと〇〇を〇〇して、〇〇にするとか……。
そんな具合で、深い考えもなく、“適当に”話していく僕。
そこで伝えたかったのは、アイデアはたくさん出せっていうことです。練りに練られた最高の1案なんて、いりません。まずは取るに足らないもの、荒唐無稽なものも含めて、たくさん出していくという姿勢が必要があるからです。
(この記事は2022年6月30日に株式会社アイタイスの公式サイトに公開されたものの転載になります。)
今日はラッパーになった気分でいきまSHOW! YO!!(ダサい)
そんな中、僕は無意識にこんな例も出していました。
例えば俺ならブルーハーブが好きやから、ボスのリリックを引用して語るとかさ。
「ブルーハーブ」というのは、日本のヒップホップグループの名前。この記事の文頭にある画像が彼らの写真です(公式サイトから拝借)
そして「ボス」というのは、そのグループのMC(ラッパー)の名前。写真の一番左、手で「25(=25周年を意味しています)」を示している男性です。「ボス THE MC」や「イル ボスティーノ」が正式な名称ですね。
ブルーハーブのことをご存知の方も、そうではない方も両方いると思いますが、実はアイタイスのコラムなどにもよく出てきております。例えばこれ。
拝啓 ボス THE MC様 新作『2020』のリリースに際して。
あとはプロフィールページの「雨森武志をつくった9枚」にも当然ノミネート。過去のメルマガでも、たしか2ヶ月連続でボスのリリックを引用したことがある気がします。
前置きが長くなりましたが、今日はそんなボスのリリックを引用しながら、仕事や経営をする上で感化される言葉を紹介していきたいと思います。
1:経営に関するもの
「経営」という観点からグッとくるもの、とりあえず4つ集めてみました。
これは2007年にリリースされた3rdアルバム『LIFE STORY』の「SUPASTUPID」からの1節。結局は数字だろうと。いくら稼いだかだろうと。直球ですね。
ちなみにメッセージ性の強さや攻撃的な表現が評価されがちな彼の歌詞ですが、僕がいちばんすごいと思うのは、暗喩や擬人化などを含む“たとえ”の巧みさです。
ここでもそうですね。「通帳に数えさせる」という擬人化で一発KOされます。そんな秀逸なたとえがここからもたくさん出てきますよ。
同じく「SUPA STUPID」から。ほしいのは金。食っていくため。またまたストレートな言葉です。
ここで大事なのは「血と涙を連れて」というところ。冷酷になりきるわけではなく、そこを捨てずにドラスティックに意思決定をしていく。経営者としても必要な素養ですね。
こちらは2002年の2ndアルバム『Sell Our Soul』の「BROTHER」から。
後半「失敗はつきまとう〜成功した時こそ〜」のくだりは、僕が経営者として数字を見ているときに、いつも念頭においている考え方です。
音楽業界では、わりと簡単に「伝説のライブ」的な表現が見られて、それを見るたびに僕は「んなことあるかい」「うそくさ!」と思うのですが、そんな中でも、このライブだけは「伝説」と呼んで間違いないと思います。
2000年のフジロックのブルーハーブのライブです。特にこの「Ill Beatnik」は半端じゃありません。この映像を見てピンとこない人とは、友達にはなれないような気がします(笑)
その仕事を俺にくれよ くれ! くれ!!
という印象的なフレーズから、経営グループに入れておきました。僕は営業ではないので、そんなことは言ったことがないですけどね。
もちろんこれはボスが誰か特定の誰かに「仕事をくれ」と請うているわけではなく、自分の内側にいる「閃き」に語りかけている1節です。
YOUTUBEの映像がなくなっていたので、ニコ動を貼っておきます。特に後半(5:00くらいから)、ヤバいですよ。今でも鳥肌が立ちます。人生ベストライブ映像かもしれません。
2:ブランディングに関わるもの
つづいて僕がクライアントに対してやっているブランディングサービスと
相性が良さそうなフレーズを、同じく4つご紹介。
3rdアルバム『LIFE STORY』の「The alert」から。
自社にしかできないこと。そしてそれをやり続けている理由。ブランド構築の際に徹底的にヒアリングすることと同じです。
ボスはブランドコンサルタントの仕事もできるのでは?
これまた3rdアルバム『LIFE STORY』に収録されている「HIPHOP 番外地」から。ブランド構築の中でペルソナを設定する際に、お客さんから「ターゲットは絞りきれない」「絞った結果、そこから外れるユーザーを取りこぼしそう」と不安の声を聞きます。
しかしそうではありません。誰にでも刺さる表現なんてものはこの世になく、それはつまり、誰にも刺さらないクリエイティブになってしまいます。だからたった1人のペルソナを設定しなければならない。
いつも説明しているそのことが、このリリックから思い起こされました。
同じく3rdアルバム『LIFE STORY』の「MOTIVATON」から。
再現性を高めて、売れるべくして売れる状態をつくる。ブランド構築がもたらす効果のひとつです。
それと同じことを言っている歌詞ですね。
こちらはブルーハーブではなく、ボスのソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』の「…RELEASED ALL」の1節です。「ここまでたどり着いたあなたなら」というフレーズは、最終曲だから。
それなりの価格(といっても一般的なCDと同じ3000円(税抜)だったと思います)だけど、聞けば相応の価値があると解ると伝えています。自らそんなことを言うなんて、カッコいいですよね。
ブランディングの狙いもこれに近くて、つまりは「価格競争に陥らない」ということ。
やっぱりボスはブランディングの根幹がわかっているなぁ。。。
3:クリエイティブに関わるもの
続いてはクリエイティブワークに関わるもの。特に僕のようなコピーライターは、ボスと同じく言葉で勝負をしているので、感覚として共感できるものが数多くあります。
これはタワーレコード限定の音源で、クラムボンというバンドにボスがゲストボーカルとして参加した「あかり from HERE」にあるフレーズです。
心に刺さる言葉ではありますが「伝わるか伝わらないかなんかは関係ない」という部分は、プロのコピーライターとしては、共感してはいけないところですね。
我々はお仕事としてやっているので、伝わらなかったらダメ。当然のことです。
こちらは2019年の5thアルバム『THA BLUE HERB』の「阿吽」から。
これまでもよく書いてきた話ですが、僕がやっているコピーライターという職業は、デザイナーなどと違って、誰だって書ける日本語を、高いお金で売る仕事です。
同じくラップだって、最近は学生たちが休み時間に遊びでやっているんでしょう。そんな中で「金を払う価値があるものをどうぞ」といえる自負心。たまらないですね。
僕も「金を払う価値のある日本語をどうぞ」とさらっと言いたいです。言ってますけど。
こちらは2000年発売のオムニバスアルバム『響現』に収録された「CREATOR’S DELIGHT」からの1節。
「砂浜を歩く」「わずか一つの石を探す」という例えを使って、莫大な可能性の中からたった一つの答えを探している様を表現すると同時に、いまだ誰も到達していない領域を見据えていることを「先に来た人の足跡はなかった」という例えで伝えています。
震えそうなほどにカッコいいですね。本当に優れたレトリックです。
「どれだけつらく苦しくても、モノづくりは神聖な信仰のようなもの」もうここに答えはありました。クリエイターとして長く信じ抜きたい言葉ですね。
4:生き方に関するもの
さあ最後は、もうちょっと広く、生き方全般に関するものです。僕はいま42歳ですが、この年になったから響く内容も多々ありますよ。
2ndアルバム『Sell Our Soul』の「I’M PRIVATE ARMY」から。
「ポケットが足りない」は、人への感謝が溢れ出して、入れておく場所もないっていう例えでしょう。さらに「ありがとう」という謝意を主語にして擬人化するっていう離れ業までやってのけています。
こんなに奥深い表現はなかなか見たことがありません。
3rdアルバム『LIFE STORY』の「UNFORGIVEN」から。
過去のコラムでも書いたと思いますが、僕は大きな自負心を持っていて、しかもそれを口に出せる、いわゆる“ビッグマウス”みたいな人が大好きです。
なぜなら人間は、偉そうでいるより、謙虚でいる方が圧倒的に簡単だと思っているから。(一方でただ偉そうなだけの人は、それはそれでカッコ悪いなと思いますけど)
その上で、この1節はすごいですね。他者の犠牲があってはじめて自分たちが成功していることはわかっている上で、それでも下手(したて)には出ないと宣言しているわけですから。
あまり見たことのないレベルの自負心です。あ〜、カッコいい。
2004年にリリースされた「智慧の輪」は、数あるブルーハーブの曲の中でも、僕的にはベスト5には入るであろう好きな曲。
上の1節は、仏教の思想にも似た価値観が語られているフレーズですね。
ソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』の「MATCHSTICK SPIT」から。最後の「限りあるってことが生きていくリーズン」という歌詞が、特にこの年になると、ココロに沁みてきます。言い回しはルー大柴みたいですけど(笑)
5thアルバム『THA BLUE HERB』の「今日無事」から。
これも同じく、この歳だからこそ、深く共感できる内容です。
まだ小さかった頃は、例えば社会の地図帳を見ながら、エジプトのピラミッドだって、ナスカの地上絵だって、なんとなく「いつかは見れるんだろう」と感じていたと思います。
でもいつの間にか、ほとんどのことは見れないし、ほとんどのことはできないんだろうな……なんて、自然と達観するというか、そういう物悲しさみたいなものを、「〜ai(ない、だい、かい……)」で韻を踏みながら語られています。
あのイチローですら退職願い
なんてフレームもとても印象的ですね。ちなみにボスはイチローより2歳年上だったはずです。
2ndアルバム『Sell Our Soul』の「SMILE WITH TEARS」から。これもかなり好きな曲です。
僕がとても大事にしている考え方として、自分にとっていいことは、すべて他人のおかげ。自分にとって悪いことは、すべて自分のせい。というものがあります。これは座右の銘と言ってもいいかもしれない。
上にあるのは、それに通ずるものがあるリリックですね。辛いこと、悲しいこと、生きていればたくさんあるけど、人のせいにはしない。不幸自慢もしない。
そんなメッセージが込められているようで、ガッチリ共感できます。
5th『THA BLUE HERB』の「LOSER AND STILL CHAMPION」から。ボスが若き日の自分自身を回想した歌詞だと思います。
ライブのギャラを半額にされた後、ホテルに戻る前に、わざわざコンビニでバイト情報誌を見て、「俺はどこにも雇ってもらえない」と再確認し、改めて覚悟を決める、みたいなすごい内容です。
僕も経営者となった今、自分の会社を潰さない限りは、転職をする可能性もなくなり、いわば覚悟を決めています。その状態を重ね合わせながらこの歌詞を聞いていました。
ちなみに僕なら、ボスみたいな肝の座った若者ならすぐに雇いますけどね(笑)
さあ最後です。5th『THA BLUE HERB』の最終曲「MAKE IT LAST FOR…」から。
やるか、やらないか。その“はざま”は、最初は小さいけれど、どんどん大きくなっていく。だからアクションを。
シンプルながら、とても本質的なメッセージですね。何の後ろ盾もない中、行動を起こすことでのし上がっていったボスだから言える言葉でしょう。
はい、今日はここまで。
はぁ、疲れました。歌詞カードを持っているわけではないので、細かい表記などは間違っているかもしれません。ご了承を。
本文内にも書きましたが、やはり年齢を重ねることで、グッとくる部分も変わるものですね。ブルーハーブを知った20年ほど前は、他人を鼓舞しまくるようなメッセージ性の強い歌詞に共感していました。
聞くタイミングで感じ方が変わるのも、音楽の素晴らしいところ。時間がなくて貼りませんでしたが、割とYOUTUBEで聞けるので、興味がある方は、検索してみてください。
最後にメルマガにも貼っつけた20代の僕のYOUTUBEをここにも貼っておきます。この凹んだお腹を見てください! 羨ましい!!
ではまた来月に!