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APEX LEGENDSはなぜ多くの日本人をFPS中毒にできたか

ゲーム好き、配信者好きなら知らない人はいないと言って良いと思うが、概要として『Apex Legends』 を説明する。
『タイタンフォール』で知られるRespawn Entertainmentが開発し、EAより2019年2月4日に配信されたファーストパーソン・シューティングゲーム。基本プレイ無料のバトルロイヤルゲームだ。

はじめに自分はこのゲームを一周回って嫌いだ。というか一時期のあまりにもどの配信者もAPEXをやっていて自分のゲームフレンドも全員やりすぎていて他のゲームを誘いづらい日々が続いたので、嫌いというか憎い(嫉妬にも近い)
今回は再三行われたであろうこの議論を自分なりにまとめる。

爆発的ヒットが0に等しかったFPSというジャンル

海外では銃文化が根強かったり、PCでゲームを遊ぶ人口が多いからかFPSの流行が多かった。FPSの歴史については他サイトで散々まとめられているので参照してほしい。

日本でユーザーが増え始めたのは個人的には2007年前後の頃だと思う。
その頃遊んでいたのは、対人ゲームに興味があるヘビーゲーマーかミリタリー好きのオタクしかいなかった。操作はこの上なく難しい(当時と今でコントローラーやキーボードの操作は大して変わっていない)ので後に述べる多様な層にリーチできないジャンルだと自分は感じていた。
それから暫くの間はFPSの画面は知っているけど、これは今でもそうだが「人殺しゲーム」と一括りされてしまう一面もあった。
要はミリオタかヘビーゲーマーしかやっていないギークな領域だった

電撃が走るのは2017年。対人戦シューティングゲームに革命児が現れる。
「バトルロイヤルゲーム」の登場だ。
こちらも著名なタイトル通称PUBGとフォートナイトの登場だ。
従来のチームを組んだり個人での対人戦FPSとの大きな違いは下記の通り。
①1回死んだら終わり、次のマッチへ行くか観戦するか。
②キル(敵を殺すこと)はゴールではなく手段。ゴールは生き残ること。
③マップは固定だが、エリアの収縮位置や物資投下などランダム。
④武器や装備も拾って毎度集めるが、その位置もランダム。

これがこの当時のYoutubeなど始めとした配信ブームと相性が良く一気に認知度が拡大した。手が出しやすいモバイル版として「荒野行動」などもこの頃リリースしている。
著作権の問題など当時話題になったが、多くのライトなユーザーにとっては配信で見ていて面白そうだったあのゲームをほぼ全ての人と一緒にできるのは楽しい限りだった。
ただこれらはあくまで三人称視点(一人称視点モードもあるが)。日本では一人称視点ゲームは流行らない伝説がより色濃くなるのでした。


いいとこ取りしつつ後発で大成するAPEX

正直上記の流行から数多のバトロワタイトルが出てきたが、どれもPUBGとフォートナイトに匹敵するようなヒットが無い中で、市場全体の盛り上がりも縮小傾向にあった。

今もなお根強い続編が求められているタイタンフォール
キャンペーンも対人も共に評価が非常に高い。


そんな中FPS老舗のタイタンフォールなどを手掛けるRespawn Entertainment(以下リスポーン)が開発し、エレクトロニック・アーツより2019年2月に配信されたのがApexLegendsだ。一言で言えば無駄を徹底的に省いている。
リスポーンは非常に過去のバトロワを研究していたと取れる。

  1. 基本プレイが無料
    いわゆるスキン販売手法をとっている。他のバトロワで慣れ親しんでいる若いプレイヤー層は抵抗なく遊び始めることができる。
    参加の敷居を下げることで、パーティーを組みやすくしている。

  2. 徹底した死への対策と心が折れにくい仕様。
    対人ゲームで心折れる瞬間、それは理不尽に「死ぬ」ことだ。それが圧倒的に少ない。まず操作するキャラクターの耐久力が、他のバトルロイヤルゲームよりもかなり高めであり、高所からの落下ダメージもなし。
    万が一にダウンしてもまだシールドが出せる。死んでも復活のチャンスがあるなど、徹底して萎えるポイントを少なくしている。
    また、3人1組のチーム戦のため、たった1人で戦い抜くタイプよりも個人の負担が少ない。

  3. デフォルメされたUIとビジュアル
    良いゲームはさわり心地が良いと私は思う。
    坂道でしゃがめば滑っていくし、壁はある程度の高さをするりとよじ登れる。現実的ではないが、ゲームとしてプレイヤーの触り心地は非常に良い。
    他にもプレイ中に死んだ場合アイテムが散らばったりするのではなく、死んだ場所で色の付いた大きい箱になったり、弾薬が「44mm」など口径別ではなく、「ライトアモ」「ショットガンアモ」など色で分かりやすくなっている等が非常にわかりやすい例だろう。
    初心者からすると分かりやすく、プレイする上でのストレスがない。

  4. 自然と協力を促すシステム
    APEX登場時に評判が良かったシステムとして、最初のマップ降下にジャンプマスターシステム(一人に他2人が強制的についていく)が採用されていたことである。
    またシージやオーバーウォッチであったレジェンド制を採用することで、アビリティ面でのサポートもできる。初心者であれば、敵にエイムを合わせるのが難しいが、サポートすることもゲーム内の選択肢としてできるのがチームでの協力を促している。

  5. 致命的なバグが少ない
    せっかく出てもサーバーに接続できなかったりバグが多いなどは言語道断である。

ざっと上げただけでも上記の部分がある。過去の他のバトロワの良い部分を引き継ぎつつ、丁度よいカジュアルとフォーマルなFPSの中間点を突いていると思う。
FPSという操作は難しい上に、馴染みのないゲーム画面ではあるものの、上記の遊びやすいポイントとバトロワという当時としては既に馴染んでいたシステムが交わることで爆発的なヒットとなった。

不幸中の幸いとも言えるが、翌年から流行したコロナウイルスの影響も、ロングランの一因をになっているように思う。
配信者を始めとしたプロシーンの大会も大いに盛り上がり、APEXから配信者を見始めた人やプロのゲーム大会をしっかり見た人も多いだろう。


APEXから学ぶ触り心地と音の重要性

私がこの記事で一番伝えたいことはこの部分である。
さわり心地が良いゲームが必ずしもバズるわけではないが、バズったゲームは押し並べて触り心地が良いと私は思う。

ここで言う触り心地は、コントローラーあるいはキーボードの入力が入った際の動きからゲーム内で反映される速さ、慣性や重量感をどうするのか、「ヒットストップ」と呼ばれる現実的ではない演出などで決まる部分が半分と音や演出による「手応え」も半分あるように思える。


対戦型格闘ゲームで相手を殴ったり斬ったりする際、自分と相手が一瞬止まることで手ごたえ(のエフェクト)を押し出すものである。主にこのシステムを入れているのは、攻撃する度にピタピタ止まる『ストリートファイターII』『GUILTY GEARシリーズ』などの2D対戦型格闘ゲーム[1]。逆に『バーチャファイターシリーズ』『鉄拳シリーズ』のようなポリゴン対戦型格闘ゲームには、3Dとの相性で入れていない[1]。『無双シリーズ』だとたびたび止まってしまう欠点があり、スピード感を損なうので入れていない[1]
大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』では、独自のヒットストップを導入していることを桜井政博が公言している[2][注 1]。このシステムは自分と相手を止めるだけのヒットストップでも、止めるだけではなく分解して工夫することで、それにより手応えのあるものになっていく「発展途上」システムである[2]

Wikipedia ヒットストップより

私はタイタンフォールからもそうだが、リスポーン社のサウンドエフェクトは非常に心地よい。特にヒットしている音が素晴らしいと感じている。

バババババババババ(銃を発砲する音)
バリバリバリバリ(シールドにヒビが入る音)
バリィィィィン(シールドが砕け散る音)
ドゥドゥドゥドゥ(生身の体にダメージが入っている鈍い音)
ズキュ――――ン(敵をダウンさせた音)
チャキ―――ン(敵の撃破音)

この音すべてがAPEXをやり込んだ者は文字だけで聞こえてくるはずだ。
撃っていて気持ち良い。倒して気持ち良い。射撃ゲームという直接攻撃をしないゲームにおいて敵に当たった感覚は、このヒット音は非常に重要だと考えている。
有名なところでバトルフィールド1のキル音などがある。

すごく良い。この音が聞きたくてやっている人はいないと思うが、知らない間に虜になるような中毒性がある。

同様の仕組みが機能しているゲームとして株式会社カプコンの「モンスターハンターワールド」も挙げられる。
同社の最新作である「モンスターハンターライズ」よりも、ヒットストップが比較的遅く作られており重量感のあるアクションが特徴的ではあるが、サウンドも特徴的である。

本来の肉質とは異なる音がするが、プレイヤーが「切っている感覚」「攻撃している感覚」が非常に優れている。特にスキが大きいが当たれば大ダメージが入る連撃が入った音は非常に気持ちが良い。

今後も様々なゲームがヒットサウンド中毒を生み出してほしいと心の底から思うばかりだ。

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