三文芝居、独白、エピローグ
いつも通りの夜に溶け込むように
肩を丸めてそぞろ歩く
並んだふたつのはずの影なのに
ひとつしか見当たらなくて
あれ、おかしいな
三文芝居に思わず吹き出す
気付かぬうちに消えてなくなってしまった
それを見て見ぬフリをする自分がいて
悲しくなるじゃない
泣きたくなるじゃない
それだけでみじめになると言うのに
泣いたらもっとみじめじゃないか
君の言葉は踏み切り越しの
最終電車に飛び乗って行ったね
昨日と影、それから僕
夜の沈殿物、踊るように混ざりこむ
よどみ、沈み、舞い上がる
点滅する遮断機、警報機
その目を爛々と光らせて
語りかける静かな合図
沈黙は独りごちるための食前酒(アペリティフ)
そこに取り残されていたのは
夜と繋いでいた手の温もり
僕の気持ちに反比例するばかりに
冷めていく君の表情が
言葉よりも、僕の胸を撃ち抜いていく
それが君の答えなんだよな
君が僕の知らない場所に行くのなら
僕も夜に消えて無くなろうか
それで君を忘れられるなら
今夜は清々しいほどに星が降る夜
君を恨むなんて思わないけど
君が僕を恨むなら、好きにしてくれ
君は僕を忘れていくだろう
僕も君を忘れていくだろう
もし、いつかどこかの街で
すれ違うことがあるなら
君の胸の奥は少し痛むだろうか
僕の胸の奥は少し痛むかもしれない
その時、もう君は誰かのものだろうから
胸は痛まないだろう
僕も誰かの為に、胸を痛めるよ
さようなら、僕が恋をした人
君の背中を夜に紛れるまで見送るよ
さようなら、僕を愛してくれた人
冷えたチューハイ、身体に注いだ
暗闇が笑いかけ、その手のなるほうへ