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余韻、黄昏、黄梅の味

黄梅をひと口齧る
白い歯を突き立てる
その薄い肌から果肉が弾ける

黄昏色の台所、縁側、衣擦れに憂う日
風は頬を撫で、風鈴を揺らす
残す音が耳につき、あなたの声に似て

ガラスのコップ、飲みかけの
あなたの名残、酔いざめの水

鳴り止まぬ蝉時雨
私も泣いて叫んでしまいたくなる
鳴り止んだ黒電話
うつむいて、押し黙ったまま

肌に焼けつく、陽の名残り
衣擦れの袖、躊躇いの傷

黄梅、裏側をもうひと口齧る
一筋の傷が走る
あなたも同じなのね、私も同じ傷

台所、鍋の中、茹だる黄梅
差し込む黄昏にも似た色
くつくつと煮えている

甘い香りだけが、あの瞬間を忘れさせる
酔いざめの水を流すように飲む

汗ばんだ、貴方の浴衣
羽織り、袖を通し、衣擦れる

肌に触れた絹の感触
まるで私と貴方みたい

触れて、熱を帯び、ゆっくりと燃える
離れてからは冷々しくて、他人のように

木戸の縁、蝉の抜け殻、ひとつふたつ
貴方と私、私と貴方

もうすぐ日が暮れる
静かに月が照らしてくれる

お願い、いつかの躊躇い傷も隠して
お願い、月明かりを私の胸に突き立てて

そして、また一日が終わりを告げる


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