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田舎者が初めて新宿に行った話。

約半年前、こんな記事を書いた。
『田舎者が初めて秋葉原に行った話。』

書いているとその時の感情や景色が蘇ってくる。それが楽しい。
そんなわけで今回も書くよ。新宿編。
前回同様、初めて行った人間のリアクションをお楽しみください。

田舎者が初めて新宿に行った話。

酒飲みながら色んな分野の学問について話せるよ。

そんな場所があると父親から教えてもらった。
新宿に行ったのは1月15日(日)。世の受験生にとっては共通テスト2日目。僕の妹もそうなのだが。
丁度その日、『宮沢賢治から読み解く、日本人のことばと世界観 』というテーマで何かイベントがあるらしい。実は僕、小さい頃から宮沢賢治が好きなのだ。どれくらい好きなのかなどは後程書くとして。

場所は学問バーKisi。新宿にあるという。
父親の知り合いで、同じ日にそのバーに行く予定の方とも繋がり、新宿に行くことに。
高速バスを予約したり諸々準備を済ませて、いざ行かん。
…まだ酒飲めないけど大丈夫かしら。


せっかく行くなら観光もしちゃおう。

そんな訳で丁度正午ごろにバスは新宿へ到着。
お目当てのバーは18時からなのでそれまでは行ってみたいと思った場所へ行くことに。
それにしても、駅でっっか。道挟んで建物2つってでかすぎんだろ。

映っているのは新宿バスタのある方の新宿駅。


早速圧倒される田舎者。その上方向音痴なもので、毎回目的地に着くのに四苦八苦。スマホでマップを開いてそれを片手に終日移動。
比較対象が秋葉原しかないので何とも言えないけど、新宿は一つのお店や建物の規模がでかいと思った。1個1個のお店が地方都市のイオンモール並みにあるような感覚。その日家に着くまでに約2万2千歩も歩いたらしいのだが、それも納得。南口と新南口ってある時点で頭の中大混乱。

駅の外に出るとスタバを発見。

駅(何口かは忘れた)から外に出てすぐの場所にあるスタバ。

このスタバ、某アイドルアニメの聖地でもあるのだ。僕もその作品を見ているのだが、実物もなんともおしゃれ。
駅を外からぐるっと一周して外の景色を堪能した後、早速お目当てのお店へ。

都会の大きい綺麗な本屋に行ってみたい!

最初に行ったのは代官山にある蔦屋書店。近くにはデンマーク大使館があった。

書店に行くのが好きなのでどんな所だろうと思い足を運ぶことに。
実際に行ってみると、書籍や雑誌の他に文具や映画も売られており、ファミマ!!やスタバ、おもちゃ屋に違うお店のラウンジが2つもあればクリニックもあるという、本屋の枠を超えた最早万事屋よろずやと呼んだ方が良いのではないかというお店の多様さ。そう思えばお店の外では建物に沿って小さなお店が屋台みたい並んで催し物が行われていた。桃のコンポートや食用コオロギが売られていたり。
事前に調べてから行ってみたけど、思っていた以上に何でもあるんだなというのが2番目くらいに出た感想。

当日はあいにくの天気。

外装からしてとても綺麗。そしてでっかい。大体「綺麗、でっかい」が最初の感想になってしまう田舎者の僕。床が木の板で出来ていたり、落ち着いた雰囲気かつ、照明の色も相まって木の暖かみを感じる内装になっていた。これは、少なくとも週一で通いたくなるよ。出来るなら毎日行きたいよ。これは、都会に住む人の特権だな、なんて思ったり。
今回購入したのは、宮沢賢治の作品集1冊と彼に関する本を1冊の計2冊。そしてPILOTのカートリッジ式インクの万年筆一本と、交換用インク。インクは以前文房具専門の雑誌に載っていたもので、テンション上がってそれを購入。16時くらいまで店内を回ったりしながら過ごし、次の目的地へ行くために店を出た。

推しのお気に入りのお菓子を食べてみたい!

もう少し足を延ばして今度は恵比寿にある「青果堂」というお店へ。


青果堂の店前で。

恵比寿の他に、銀座、名古屋にもあるフルーツを使ったお菓子を取り揃えているお店。
このお店を知ったきっかけは自分の推しがよく通っていたから。
常連というより最早VIPだよね、というくらいの嵌りっぷり。
そりゃあ気になるよね、食べなきゃね。
そんな訳で恵比寿へ向かった。

フルーツどら焼き(林檎、柑橘、キウイ)と千雪リンゴジュースを購入。
まずは千雪リンゴジュースから。

市販のリンゴジュースとは全然違う!
市販のものだと喉に絡みつくような感覚がしてちょっと苦手だったのだけれども、このリンゴジュースは水を飲んでいるような感覚
それでいて砂糖も何も使っていないから、りんごそのものの透き通った甘さが口の中にすっと広がって。これは、何杯でもいける。ガロンでもいける!!

続いてフルーツどら焼き。
僕は林檎を、残りの2つはこの後合流するお2人の分。
林檎はこんな感じ。

長野県産の「炎舞」という品種の林檎。縁がほんのり赤くなっているのが特徴。

皮の中にはフルーツの他に白あん、ホイップクリームが入っていた。
その一つ一つが今まで食べてきたものとは段違いすぎてもう感動。
まずは皮。とにかくもちもち!!どら焼きの皮ってこんなにもちもちになるんだ…。
次はホイップクリーム。正直クリームはあまり好きじゃないのだけれども、これは全然違う。甘さが抑えられていて、そして白あんと絡んで全体の協調をしてくれていた。多分、これが無かったらここまで口の中でフルーツと白あんが混ざることは無いと思う。
その次に白あん。こちらもクリーム同様甘さは控えめ。控えめといっても、砂糖の甘さが控えられている分豆本来の甘さが際立っていた。でもその甘さがフルーツの甘さを邪魔することなく、かつ餡子特有の舌触りもあって丁度いいバランスで存在していた。
そして主役のフルーツ。

甘い!とにかくフルーツが甘い!!
そしてシャッキシャキ!スーパーで売られているよくある林檎の食感とは全く違う。果肉を噛んだ時の音が違う。みずみずしさも全然違う。
白あんやホイップクリームの甘さが抑えられている分、果物の甘さだけが口の中いっぱいに広がっていく感じ。
いやあ、幸せ~!!
そんな訳でペロッと完食。ボリュームも丁度良く、もう1個2個は軽く食べれそう。
ちなみに、柑橘とキウイは下の写真(キウイは品種を忘れてしまったのでイメージ的な感じで)。

他にも、苺や桃、葡萄やいちじく、柿など、季節によって品種やフルーツの種類が変わるとのこと。
そして、どら焼きだけではなく、フルーツの入った寒天やパンナコッタなど、さまざまな種類のお菓子やドリンクが売られていた。
これは確かにリピートしたくなる。オンラインショップでも購入できるので是非。
そして推しよ、有難う。貴方のおかげで幸せな時間になりました。

いよいよメインの学問バーへ。

一緒に行く方とも合流し、いざバーへ。
この学問バーというのが、簡単に言えば酒を飲みながら学問の或る分野についてとことん話し合う場所
日替わりで大学院生や教授、研究者がバーテンダーとなり彼らの専門分野についてお客さんと一緒に語らうことが出来る。
そして、その日のテーマは『宮沢賢治から読み解く、日本人のことばと世界観 』
ちなみに、僕が今までどれくらい宮沢賢治の作品に触れてきたのかというと、アニメ映画『銀河鉄道の夜』から始まり、小学校で作品全集を読み(読了する前に卒業してしまったが)、彼の伝記や彼に関する書籍は基本何でも読むというスタンス。そのため、彼がどんな人でどんな人生を送ってきたか、有名な作品はどんな話かは割と知っている方である。
さて今宵、どんな話が聴けるのだろうか。

中に入ると、そこは縦長に細い部屋で、中にあるカウンターやソファなどは黒や茶色に統一されていていかにもバーらしい雰囲気が出ていた。
その日バーの中にいたのはオーナーとバーテンダーを含めて10人ほど。僕はカウンターの奥から2番目の席に座って話を聴いた。
中ジョッキに入ったジンジャーエールが目の前に置かれて、その暫くした後、バーテンダーによる話は始まった。
その日のバーテンダーは、『銀河鉄道の夜』について研究をされている女性だった。元々は興味はなかったのだが、教授の授業が面白くて惹かれたらしい。お話はとても上手で、次々と知識が出てくる。
賢治がどんな人生を送ったか、どんな作品を遺したのか。また、彼に関する研究でどんな内容があるのかなどなど。普段研究で使っている文献なんかも持ってきてくださった。

この本の他に、賢治が遺した和歌全集なども。
その中でも一番驚いたのが、上の写真の全集に入ってる「校異篇」というもの(上の写真のは「本文篇」)。
内容は、一つの作品の初稿から最終稿で表現が変わっているところが全てリストアップされ、話の構成の変化が図で解説され、更には何色のどんな文房具を使って書かれていたのかまで研究され掲載されている。
そこまで調べるのか研究者。
作品の内容は知っていてもその作品が最終形に至るまでの経緯などは知らなかったし、そもそもそんな書籍が世に出ていることすら知らなかった。
賢治に限らず他の作家でもここまで研究するんだろうな。今まで、文学研究で実際にどんな研究がされていたのかを見る機会がなかったので、貴重な経験になった。他にも、賢治と他の作家で比較研究が行われていたり、バーテンダーの彼女の師匠は、当時までに行われた賢治に関する研究をまとめたらしい。
また、文学観点からの研究だけではなく、菌類学や病理心理学など、文理問わず様々な観点から研究が行われているとのこと。他の作家ではなかなかないと思う。森鴎外も医者の肩書を持ってはいたが、作品にはそんな側面は見えない。
賢治が宗教(日蓮宗)の影響を強く受けていたことがあまり知られていないのは少し意外だった。逆に、賢治のことについてあまり知らない、作品を少ししか読んだことがない人から見た賢治の印象も気になった。その話の中で賢治が手持ち太鼓を叩きながら街中を歩き、日蓮宗への改宗を叫んでいたように、この宗教は周りへ改宗を求める特徴を持つという話が出たのだが、バーに行く前、駅で宗教勧誘を受けられそうになったのもあって笑ってしまった(しかも丁度日蓮宗だった)。
個人的には、もう少し深い話も聞いてみたかった。周りになかなか賢治の作品などに興味を持っている人が少なかったので、こうやって長い時間賢治について話せる機会はとても貴重だった。だからこそ、作品についてでも、賢治についてでも良いからとことん話してみたかった。

あっという間に約2時間が経ち、帰りのバスの時間も迫ってきたのでおいとまさせてもらうことに。
出来ることなら、もっと話したかった…!!次行くときは泊まる前提で行かないと全然時間足りないぞこれ。そう思いながらバーを出た。
こういう深い話が出来る場所ってなかなかないと思う。コロナ禍になってからオンラインでのコミュニケーションが発達したが、対面でというとなかなか見つからない(あるけど僕が知らないだけかもしれないが)。対面でこういう話が出来るのはオンラインよりも刺激が強くていいと思う。
帰りのバスの中、ふと、高校の世界史で習った古代ギリシア社会を思い出した。当時の貴族や平民は終日こういう深い話を誰かとしていたのかもしれない。その疑似体験をしているようだった。こういう話が出来る人がそばにいたら良いのに。そう強く思った。

そんな訳で、長い新宿の一日は終了。

また行きたい。次は絶対泊まりで行く。
相変わらず初めての所に行くときは心配事や不安が大きいのだけれど、それ以上の収穫が今回も大きかった。この気持ちや感覚を味わうのが楽しいと思えるようになってきた。また世界がひと回り以上広がった。

次は、どこに行こうかな。

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榛
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