あめにぬれても

Raindrops are falling on my head雨に濡れてもあなたに会…

あめにぬれても

Raindrops are falling on my head雨に濡れてもあなたに会いたい。散文、ショートストーリー、詩を書いています。

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  • ショートストーリー文披31題2024

    Xで開催されていた文披31題。お題に沿って書いたショートストーリーをまとめています。

最近の記事

野球選手が夢だった②【野球エッセイ】ファイターズCSファーストステージ二戦目

 北海道日本ハムファイターズは、レギュラーシーズンを2位という成績で終え、6年振りのCS出場を果たした。推しの夢が一つ叶った。松本剛外野手。  相手は千葉ロッテマリーンズ。一戦目は惜しくも敗退。松本剛選手は、好守備でチームのピンチを救ったのだが、チャンスに倒れネットでは誹謗中傷が飛交っていた。  二戦目。GAORAは、元ファイターズの杉谷拳士さんと元ファイターズファーム監督、元一軍投手コーチだった荒木大輔さんのダブル解説。  思えば2022年の開幕戦。相手はソフトバンクホー

    • 寒いな。鼻の頭が冷たい。気温13℃。ストーブつけたい。色々、色々あるよね。生き続けるのって辛いな。投げ出したい。ずるい人が嫌い。真面目すぎる自分はもっと嫌い。起きてると色々考えちゃうから温かくして寝よう。明日は夜勤だし寝よう。寝よう寝よう。 ファイターズ勝って良かった。それだけ。

      • うたうたい①短詩まとめ

        書いたものを少しずつまとめていこうと思います。過去作も手元に残ってるものだけにはなりますが、冥土の土産にするためにもできる限りまとめたいです。 9月はショートストーリーを書いていたので詩はあまり書けませんでした。 今回掲載したものは、2024年9月の作品です。5作品中、4つは深夜の二時間作詩からお題をいただきました。 「帰りたい場所」 言葉が迷う 言葉が探す 苦しい恋が眠る街 さよならさえも 言えない速度ですれ違い 癒えない恋を抱きしめたまま 泡になる 「静寂」 あ

        • September〜エッセイ

           わたしの住む北海道では、最低気温が一桁を記録するところも出始めた。札幌はまだそこまで寒くはない。コスモスが風に揺れ、湿度が低く過ごしやすい季節になった。  毎年恒例、家庭用の除雪機やスタッドレスタイヤ、ストーブのコマーシャルも始まり、道民なら程度の差こそあっても、そろそろ来たる冬や雪のことを考え始める時期と言っていいだろう。    9月生まれだ。何十年も生きてきて、ケーキを食べない誕生日は初めてだったかもしれない。毎年、自分に何かご褒美を与えたりするのだけれど、今年はそんな

        野球選手が夢だった②【野球エッセイ】ファイターズCSファーストステージ二戦目

        • 寒いな。鼻の頭が冷たい。気温13℃。ストーブつけたい。色々、色々あるよね。生き続けるのって辛いな。投げ出したい。ずるい人が嫌い。真面目すぎる自分はもっと嫌い。起きてると色々考えちゃうから温かくして寝よう。明日は夜勤だし寝よう。寝よう寝よう。 ファイターズ勝って良かった。それだけ。

        • うたうたい①短詩まとめ

        • September〜エッセイ

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        • ショートストーリー文披31題2024
          31本

        記事

          またね【ショートストーリー】

           たくさん泣いて、たくさん笑った。きみとなら、いつまでもどこまでも行けるような気がした。  この広い世界の中で、たったひとりのきみと出会った。反発し合いながらも、惹かれ合っていった。  一服の清涼剤のように冷たい風が吹く。何年先でもきっときみだけを思い出す。  暗い森の中で空を見上げて、きみがくれた最後のビスケットを口にした。 どれだけ噛み砕いても、わかり合うことなどないと教えてくれた。それが酷く悲しかった。  かけがえのない人が生きているこの街で、星を指で辿るよう

          またね【ショートストーリー】

          色相【ショートストーリー】

          「好きな色って何?」 「ピンク」  言った後、しまったと思った。何故なら彼の住む世界に、ピンクはないからだ。 「はい、プレゼント」  包みを開けると、中には美しい臙脂色のボールペンが入っていた。 「ありがとう。大切にする」 「ピンクだった?」  彼が不安そうな顔をしていたから、わたしは咄嗟に肯いてしまった。 「お店の人に『これ何色ですか』って聞くのも変かと思って聞けなかったんだ」  ほっとしたような顔をしていた。色は関係ない。自分のために選んでくれたことが素

          色相【ショートストーリー】

          焦がす【ショートストーリー】

           最後の運動会。午前の競技が終了した。お昼の時間だ。同級生たちはみんなグラウンドで、家族と一緒に食事をしている。わたしは一人教室に戻り、弁当箱の蓋を開けた。  運動会が大嫌いだ。元々あまり運動は得意じゃないし、自我みたいなものが芽生えてからは、母のいない自分の家庭を同級生たちに見られるのが恥ずかしかった。普段の食事はお惣菜が多かったけれど、行事の度に父の作る弁当は、運動会のように豪華で食べきれないほど持たせてくれた。わたしはいつもそれが自慢だった。甘い卵焼きは少し焦げていて

          焦がす【ショートストーリー】

          ヘッドホン【ショートストーリー】

           誰にも心を許さないと言っていた。誰かを愛することは、即ち心まで預けることだと思っていたわたしには、最後まできみの生きているその世界がわからなかった。  きみは気がついていた。自分が病んでいることを。自分は誰にも理解されない存在だと言うことを。自分以外愛せないことを。それなのに安易な温もりを求めて、結果たくさんの人を傷つけてきた。それでも愛くるしいきみを愛し、救いたいと思ってきた人は、今までもたくさんいたはずなのに、酷く残酷に切り捨てた。  言葉なんて無力だ。きみを救いた

          ヘッドホン【ショートストーリー】

          鉱物【ショートストーリー】

           夫と高校生の娘を送り出した後、わたしは庭に洗濯物を干した。外はからりと晴れている。都心から車で20分。郊外に建てた一軒家。夫が趣味で始めたガーデニング。庭にはよく手入れされた季節の花が咲いている。  あの日誓った永遠。薬指のダイヤモンド。眩いばかりの煌めきも、今は鳴りを潜めて箪笥の奥深くで眠っている。  結婚と同時に退職して、専業主婦になって20年。友人たちはみな子どもの手が離れたからと働き始めた。家庭と仕事を両立させている姿は大変そうだったが、きらきらと輝いているよう

          鉱物【ショートストーリー】

          深夜二時【ショートストーリー】

           誰もいない部屋からメヌエットが聞こえた。わたしはナースコールが連動する院内PHSを握り締め、部屋に向かった。 「410号?空床じゃない?」  個室に入院されていた方は、今日の夕方死亡退院されている。部屋の前で立ちすくんだ。ほかの患者さんが間違って部屋に入ったのかもしれない。意を決してドアを開けた。灯りを付けて病室内を確認する。やはり誰もいない。  有りもしないことが、病院では時々起こる。ドアを閉めて、ナースステーションに戻り、夜勤の相方に異常のないことを報告した。

          深夜二時【ショートストーリー】

          カラカラ【ショートストーリー】

           夏になると届く贈り物。青い水玉模様の白い紙に包まれていた。初恋の味がキャッチフレーズの乳酸菌飲料だ。贈り物の中にはプレーンな味以外に、普段見かけないぶどうやみかんの味があったと記憶している。  茶色の硝子瓶に入った原液をコップに入れる。そこに冷たい氷水を注ぎ、マドラーでかき混ぜる。氷が美しい音を奏でる。  その飲み物は、渇いた喉を潤すだけではなかった。母が自分の為だけに、ひと手間かけ作ることに愛情を感じていた。     少し大きくなってから、自分でも作ってみた。何だ

          カラカラ【ショートストーリー】

          朝凪【ショートストーリー】

          「意外と広かったんだな」  大きな荷物は昨日のうちに、すべて運び出された。この部屋ともお別れだ。  やっと叶えた恋だった。あなたが生まれた美しい海の街。海に近い場所で、二人の暮らしを始めた。たくさん思い出を作ろうと約束した。そんな矢先、あなたは病に倒れてしまった。 「なんか、ごめん」 「こっちこそ、ごめん」 「幸せにしてやれなかったな」  「そんなことないよ、わたし幸せだったよ」  あなたは大きな手でわたしの頭をくしゃくしゃに撫でた。  陸風が海風に変わり、時

          朝凪【ショートストーリー】

          ストロー【ショートストーリー】

           ビルの地下にある喫茶店に入り、母はタバコに火を付けた。今と違い分煙などない時代。紫の煙が空に昇っていくのを黙って見ていた。  いつもはソーダ水なのに、その日母が注文してくれたのは、何故かクリームソーダーだった。  母はストローの紙袋を蛇腹状に剥き、テーブルの上に置いた。ストローの先で水を救い、紙袋に数滴垂らした。蛇腹状になったストローの紙袋がヘビのように動いた。わたしはそれがどうして動いたのか、不思議でたまらなかった。  ゆっくりとバニラアイスがソーダ水に溶けていく。

          ストロー【ショートストーリー】

          雨女【ショートストーリー】

           見慣れない番号から着信があり、留守電にメッセージが残されていた。 「崎本雨の息子です。突然のお電話失礼します。母が昨日亡くなりました。生前、自分が死んだ時はあなたに伝えて欲しいと言われていました。不躾だとは思いましたが、連絡させていただきました」  外は土砂降りの雨が降っていた。居ても立ってもいられない気持ちで折り返し電話をかけた。 「名雲です。お取り込み中だと思いますが、崎本さんがお亡くなりになったとお聞きして」 「ご連絡ありがとうございます。昨日の明け方、息を引

          雨女【ショートストーリー】

          回復はしないのだな。きっと。寛解はあっても。受診していないから病名もないけれど。わたしという人間は、欲と焦りと憎悪と嫉妬と誰かを羨む気持ちだけでできている。メニエールの時に処方された安定剤をお守りのように大事に持っていたけれど、それも底をついてしまった。しんどいなぁ。

          回復はしないのだな。きっと。寛解はあっても。受診していないから病名もないけれど。わたしという人間は、欲と焦りと憎悪と嫉妬と誰かを羨む気持ちだけでできている。メニエールの時に処方された安定剤をお守りのように大事に持っていたけれど、それも底をついてしまった。しんどいなぁ。

          自由研究【ショートストーリー】

           チャララチャララ。心弾む音がする。ポテトが揚がったことを知らせるメロディーだ。熱々を口にする。どうしてこんなにおいしいんだろう。じゃがいもの種類か産地か。  フライドポテトについて調べてみよう。大人の自由研究。考えただけでワクワクする。バーガーと一緒に、トレイの上で整列していたフライドポテトは、あっという間に食べ終わってしまった。  フライドポテトの研究はやり尽くされているだろう。結果が同じであれば、研究自体が意味のないものになってしまう。仕事の傍ら、研究に取り組んでい

          自由研究【ショートストーリー】