焦がす【ショートストーリー】
最後の運動会。午前の競技が終了した。お昼の時間だ。同級生たちはみんなグラウンドで、家族と一緒に食事をしている。わたしは一人教室に戻り、弁当箱の蓋を開けた。
運動会が大嫌いだ。元々あまり運動は得意じゃないし、自我みたいなものが芽生えてからは、母のいない自分の家庭を同級生たちに見られるのが恥ずかしかった。普段の食事はお惣菜が多かったけれど、行事の度に父の作る弁当は、運動会のように豪華で食べきれないほど持たせてくれた。わたしはいつもそれが自慢だった。甘い卵焼きは少し焦げていて