びんのながいたび
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、なまえはございません。
ひかりも、においもわかりません。
なぜなら、ただのびんなのですから。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、てあしはございません。
なにかが、わたくしのなかにはいりました。
おもさは、とくにかんじません。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、ぷかぷかうかんでいます。
なにかを、なかにいれながら。
からだが、すこしつめたいです。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、ずっとうかんでいます。
あつさや、さむさがおそってきます。
なにかが、わたしをつついてきます。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、どこかへつきました。
どれだけ、じかんがたったのでしょう。
なんだか、したがあたたかいです。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、ずっとうごいていません。
このまま、ひとりでいるのでしょうか。
どなたか、みつけてくれるのでしょうか。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、なにかにつかまれました。
なかみを、ぬかれてしまいました。
かわりに、なにかがはいりました。
はてさて、ながいたびでした。
わたくし、ふたたびうかんでいます。
なかみは、いったいなんなのでしょうか。
おもさは、とくにかんじません。
はたして、ながいたびでした。
わたくし、なまえはございません。
ひかりも、においもわかりませんが、
これから、またどこかへいくのでしょう。