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「本の世界をめぐる冒険をめぐる」
キャラメル・マキアートの甘いぐるぐるがミルクの泡の海へ刻一刻と沈んでいくのを気にしながら、マンハッタンポーテージの黒いリュックで陣取ってあった壁際の席へ小さなトレーを置いた。奥にある四段昇った広いスキップフロアには、天窓から差し込む光がスポットライトのように床と本棚とにコントラストを与えている。
「自然科学、四。ええと、天文学・宇宙科学、四四〇。ここだ」
目当てのコーナーへ入り、一番大きくて
『「本当に消去しますか?」Yes/No 』
この街は雨の日が多いです。自転車通勤の身にはちょっと厄介です。店長によるとこの一帯に集まっている「人間の心を扱う店」のオーラがそうさせているらしいのですが、真偽のほどは分かりません。
『消去百貨店』という、完全に名前負けしているオンボロの小さな路面店が僕の職場です。鍵の開け方にコツがありまして、左斜め上に力をかけて同時にドアノブを奥に押して鍵を回します。午前十一時にclosedの札を裏返して消
猫を飼って名前は「トミザワサン」とか「キシモトサン」とか「スミレサン」とか「ゴロウサン」とかにするのがわたしの夢なんだ。
架空の副題
「〜隠密の壇蜜が精密な三密を壊滅〜」
がんばるひとと、たしろさんと、しつどが、だいすき
シメシメシメシメ……
進む、進む、列をなして。
昨日の雨と打って変わって今日は朝から春の太陽が照る。窓際に重たく溜まっていた湿気が急速に蒸気となって消えてゆく。
シメシメシメシメ……
進め、進め、目指すは台所のシンク下。常駐の湿気は栄養価が極めて低いが、こう晴れていては贅沢も言っておられぬ。
シメシメシメシメ……
「シッ」
一本の線のごとく続いていた列が乱れた。引き戸の溝に一匹がつまずいた