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第百二十五夜 『この音とまれ』

「学生時代を思い出します。こう部活の試合当日の朝のような。受験日当日の用紙を配られたような。そんな気持ちです。このセミナーを早く人前に立って登壇したくてうずうずしてるんです。」

第2期まず最初の施策は新規セミナーの発表である。

幸いなことに株式会社アメリは昨年、第一弾のセミナーを打ち出し、見事、販促費対効果をみごと黒字転換させ終えることができた。
その方の追加購入も含めると昨年で一番費用対効果の高い手法だったと言える。

しかし、これは実は今業界では非常に難しいことなのである。
多くの会社が反響営業に苦戦し、レッドオーシャンと称し敬遠しているのである。
我々の知りうる限りある特定の不動産商品を扱う中でトップレベルの会社でさえその収益化に苦戦しているほどである。

顧客単価という考えがマーケティングであるが、今はそれが1客10万円ほどになる会社が多いという。
そして、制約単価になるとその10倍、下手したら20倍以上になることもあるほどだ。

昨年のアメリの制約単価は買増分を含め、それらをはるかにした回る。
母数の少なさはあるものの、この数字は誇るべきものであろう。

だからこそ、追い打ちをかけるようにそこに集中投資をすべきなのである。

「急ぎすぎですよ。まだセミナー資料ができていません。」

「Hさんに依頼して1月中にはゲラが上がります。」

「リード文も必要ですね。」

「すぐに用意します。」

「ここまでできれば集客するための登録ができますね。」

そう準備はできたのである。
あとはスタートラインに立ち、スタートの発砲を待つのみである。
試験開始の合図を待つのみである。

株式会社アメリの新セミナーは昨年以上に苛烈に攻めていくものにしようではないか。

そして、1人でも多くの方に資産形成を成功させ、自身の描くライフプランを目標を達成してもらおうではないか。

「先ずはこのリード文でやってみましょう。トライ&エラーで集客は伸ばしていくしかないですからね。」

「そうですね。人事を尽くして天命を待つ。現段階で人事は尽くしました。」

そう言って自身で振り返る。本当にそうだろうか。より精錬させられるのではないだろうか。
本番までにまだいくばくかの時間がある。より間隔を尖らせようではないか。

セミナーの登壇とはその会社の顔としてブランドとして矢面に立つことだ。
代表社員で登壇となればそれはより一層目線は厳しくなるだろう。

「緊張しますか。」

彼は私に問いかける。

「程よく緊張しています。だからこそうまくいくと思います。」

そう緊張は折り合いをつけると集中力に変換される。
その感覚が学生時代に感じたものと同種であった。良い兆候である。
ちょっとした少年漫画の主人公にでも戻ったようだ。

「それは期待ができそうですね」

彼は楽しそうに笑う。その会話は少し懐かしいものであった。

物語の続きはまた次の夜に…良い夢を。

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