抱っこマンと歩きマン

息子は、2歳のほとんどを抱っこで過ごした。保育園の行き帰りは例外なく抱っこ。14㎏前後の息子を抱えつつ、仕事かばんと保育園の荷物を肩にかける。雨の日は、これに傘もついてくる。

自宅から保育園までの距離は、大人の足で7分程度。これが結構キツい。2歳になりたてのころは、「まぁしょうがないか、3月生まれでクラスのなかでもヒヨコちゃんだし」と受け入れていた。

でも、一向に自分で歩こうとせず、わたしが迎えに行くなり「抱っこ」と両手を広げてくる息子に、「可愛い!」と心の中できゅんきゅんしながらも、いつまでこの過酷レースが続くのだろうと心配にもなった。

それが、あるとき突然変化があった。息子が自分で歩いているのだ。そして、これまで頑なに手をつなごうとしなかった息子が、「ママ、手つなぐ?」と小さな手を差し出してくる。

はじめて自分の足だけで自宅まで歩いて帰った日。それは、まもなく3歳を迎える幼児にとって、それほどすごいことではないのに、ゴールの見えない過酷レースを闘ってきたわたしにとって、スタンディングオベーション級だった。

しかし、それはそれで、うまくいかないこともある。息子を抱っこして歩くと、体はつらいが10分もあれば保育園に着く。でも、息子が自分の足で歩けば、ときには30分くらいかかることもあるのだ。

まっすぐに歩けば15分くらいの距離を、「この道はちがう」と今来た道を戻ったり、「ピョンするの」と、段差という段差に登ってはジャンプしたり、ねこちゃんやわんわんなどの生きている動物だけでなく、近所の庭に動物の置き物など見つけては立ち止まり、「ひつじがいたよ」などと、毎回報告をしてくれる──。

抱っこがなくなれば自分の体が楽になる一方で、息子への許容を広げなければ、保育園の送迎時間が楽しくない。とっても可愛いのだけど、時間がない朝は、心に余裕がある日は稀だ。これからは、腕の筋肉を鍛えるよりも、心を寛く保てるかが勝負どころ。

こうやって、子どもの成長とともに、親は人間性を成長させていく。まだまだママ3年生、人生これからだ。

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