【まとめ】Switch版Cresteajuを語りすぎ
Switchクレスを追加イベントも含め全編プレイし、感じたことのまとめです。
当然、ネタバレを含みます。
過去のプレイ感想たち
◆ルナンという主人公
まず、まとめの前に語りたくなったことがある。
ルナンという人物について、ストーリー終盤に来てようやくわかってきた。逆に言えば、それまでわかっていなかった。
Cresteajuにおいてルナンは「実は生命兵器だった普通の女の子」で説明可能だとしても、それでルナン自身の“個性”を理解したわけではなかった。「普通の女の子」じゃ人格を持たない少女みたいだし、「実は生命兵器」っていうのは設定や肩書きの話。
じゃあルナンはどんな人物か。一言で表すとしたら“純真”かなと思った。
ひたすら真っ直ぐな心を持つ少女。というか、それしか持っていないとも言える。
基本的に思ったことははっきり言うし、思ったらそのまま行動。そして妥協を好まない。誰かが困っていたらすぐ助けたくなるし、不平とか理不尽が許せない。卑怯な手や人間を嫌い、そういう相手ととことん正面から対立。
ところが後先のことを考えなかったり、身の程を弁えなかったりもするので、その勢いが悪い意味で周囲を巻き込むことがある。
彼女自身はディザのように身体的な強さがあるわけでも、サヴィアーのように優れた知性があるわけでもない。何があるのかと言ったら“気持ち”だけ。自分が間違っていない限り、たとえ弱くても誰かを助けたがるし、フォールンに立ち向かうし、アズグレイにも怖気づかない。他ならぬ感情でぶつかる。
見方によってはアホだったり偽善だったりするけど、それだけピュアということ。エターナルの強さに人々が怯える中、堂々と「戦う」と宣言できたのは彼女だけ。メンタルバカつよ少女なのか、ただのバカなのかは言葉の違いでしかない。仮に自分が弱いとわかっていてもそれは戦いを諦める理由にはならないんだろう。
そして何より、人の善意を信じてる節がある。性善説というのかな、人の正しい行いを期待しているからこそ、正しくないことを放っておけないというか。
期待してなければ怒りも沸かないし、相手を治らない悪としか捉えてなければ対話も必要ない。それでも常に正面から敵と向き合うのは、人の中の治らない悪とか心の穢れみたいのを根本的に信じていないか、知らないからか。
ラーフィアとの対峙も例になる。セノウの真実を知らなかった最初の頃に比べて、知ってからは対話が積極的だった。相手の動機が悪意でないとわかれば、こっちも意味のない争いはしたくないから。
そして幹部二人がエターナルを辞めた後も、元々傷つけ合った相手にも関わらず普通に接することができる。「たまに見に来るわね」「大人しくしてればいいわ」なんて言って。根に持ったり気まずくなったりしない。
その純粋さが仇となり、利用されてしまったツーリアの一件もある。ルナンとシンディの繋がりを知っていたフォールンの術中にハマってしまう。
ところがルナンは、当然フォールンに並々ならぬ憎しみを向け続けるも、決着のあとは手を下さない。憎き相手でさえ最後には慈悲がある。真ENDルートで倒れた彼にも「これでわかったでしょ?」とまで言える。
人とどんなに争っても、踏みにじったり奪ったりすることは決してしない。正義感とか倫理観ってよりは、ただただ純真なのだと思う。
直情的で頑固なところもあれば、柔らかい心も持っている。
戦い以外のことで言えば、ドーグリ村長がメモリーオーブを偽物と告白した時、非難せず、自分にも強い欲があったことに気づく。ディザと口論になった時も、自分に非があるとわかれば素直に認めることができる。
運命を壊せる意志の固さと、物事を斜に構えず真っ直ぐ受け止める柔らかさ。それが主人公ルナンの個性であり、魅力なのかなと思った。
きっとフィルガルト時代からずっとそうで、今でも、これからもずっと変わらないアイデンティティであると良いなと思う。
◆この物語から伝わること
Cresteajuのストーリーは、ゲームとして飽きずに楽しめるだけでなく、世界観の奥深さや焦点の多さに惹きつけられ、そして登場人物たちの繊細なドラマに心を打たれる。
まとめ……とは言っても、さんざん事細かく語ってきて、今更わざわざまとめる意味があるのか。メッセージ性はすごく単純明快だし、何度も語ってきたことの繰り返しになる。
でも自己満足のために、あくまで個人的に感じたことを、大きく分けて三つ語りたい。
Cresが教えてくれたこと、それは
「“今”を愛すること」、「欲から自由になること」、「助け合うこと」。
・“今”を愛すること
この物語において一番大きな部分。言ってしまえば、ルナンとディザが会話で交わした「“もしも”はあり得ない」が全て。
川の流れのように戻れない時の中で、自分たちはそれぞれの過去を記憶として積み重ね、今を形作っている。過去を失くしたルナンは年齢に対して積み重ねたものが極端に少なく、脆く、形作られる今が揺らぎやすかった。
旅の中でそれを拾い上げ、向き合うことで自己を理解してようやく前を向けた。他のみんなも同じで、それぞれの過去と向き合って今を見つめ直した。
(“神聖なる裁き”も同じで、消し去られたフィルガルトの歴史を神話の解読によって具体的にし、教訓として受け止めた)
それができなかったクレイシヴとの対立は、過去にどんな失敗や後悔があろうとやり直しを望まず、形作られた今を愛して未来を望む姿。
変えられない過去を許すことが、未来を受け入れ、人生そのものを受け入れること。
大切なことだけど、実際すごく難しいことだと思う。
自分たちはみんな数々の後悔を抱えて生きていて、向き合おうとしてもなかなか簡単ではない。生命兵器じゃなくても、生まれたこと自体について考える場合もたくさんある。
きっと重要なのは、その経験によって失ったものではなく“得たもの”に目を向けることかも知れない。
フォールンを倒したルナンの言葉「こいつのせいで故郷は壊滅した。けどそれがあったからみんなと出会えた」。ルナンが得たのは大切な仲間と、多くの学び。だから悲しい過去を受け入れて強くなることができた。
どんな過去も全て、良くも悪くも今を形作る糧となっているから、戻れない時の中にいる以上、全てを許してゆらゆらと流れていきましょう……そんなことなのかも。
・欲から自由になること
この物語には多くの欲望と、それがもたらす破滅の結末が描かれる。それは常に片方ではなく“欲望と破滅”のセットで描かれる。
神話の「神の両手が人には重すぎて、災いの渦が流れ込む」ことをはじめ、エターナル党首が力に固執して焦るあまり自ら死を招くこと、偽メモリーオーブ騒動で奪った者が次々に痛い目に合うこと、ライゼルが過去に盗賊団との戦いで失態を犯したこと……フォールンが強さに溺れて恐ろしい力に乗っ取られることもか。
人の過ぎた欲がもたらす結果は、いずれも周りを不幸にし、自分を不幸にする。にも関わらず人は求めてしまう。「欲に動かされる」とはよく言ったもの。
なので「無用な欲を捨てること」……でもいいけど、じゃあ捨ててどうすれば? という疑問が残る。
「無用な欲から解放されること」と考えてみたい。欲に囚われるのをやめて精神的に自由になる。それは生き方が自由になる、ということに繋がる気がした。
ディーンも、アズグレイも、盗賊団も、どんなに力を得たところで、欲の前では囚われの身だった。「人は満たされはしなかった」ことが自滅の道への始まりだとすれば、その教訓が説くのは、何が自分を満たすのかを自分でしっかり見出すこと。
それはつまり、自分で自分の幸せを見つけることと同義であり、自由な生き方を得ること……と考えていいのではないか。
“欲” と “自由”は無関係な二つなので変に繋げたらこじつけっぽくなるけど……何にせよ、自分がいま何かに囚われてるんじゃないかと気づくこと。それは自分の本当の幸せに近づくための一歩……くらいの感覚を持つことは大切かも知れない。
・助け合うこと
誰でも助けは要る。ルナンをたくさん助けてくれたディザだって、ルナンに助けられた。ナックもサヴィアーも、シンディもライゼルもユミもみんな同じ。
そして人々も、町も村も同じ。助け合いがなかったことが人の心に憎しみを生み、更なる悲しみを生み、連鎖した。フィルガルト時代ほどではなくとも、盗賊団や戦士団から始まった“渦”が、今の大陸中を巻き込んでいた。
全ての元凶が伝説の盗賊のように思えてしまいそうになるが、本当のことを言えば、伝説の盗賊だって生まれ落ちた瞬間から悪だったわけではないだろう。育つ過程で何がその者を悪にしたのか誰も知らないだけ。クレイシヴのように。
だから、人を助けようとする心を持つためには、「人に関心を持つこと」……だろうか。無関心でいるのをやめて、自分が弱いとか無知だとかは関係なく、積極的に人と関わりに行き、真っ直ぐ向き合って力になろうとすること。
まさにそれを体現していたのがルナン。彼女はドーグリを盗賊団から守った時から既に「助ける者」だった。そういう意味では、みんなを守るために自分の力を使うというアージェとの戦いで見せた意志を、初めから持っていたのかも知れない。
人と助け合い、そのために人に関心を持ち、人を信じる。自分の幸せと共にみんなの幸せを願う。純真なルナンがそのお手本なのだと思う。
過去を愛し、今を愛し、未来を望む。
偽りの幸せから自由になり、本当の幸せを見つけ出す。
人の幸せを願い、人と助け合う。
Cresteajuの物語から伝わることは、まるで人生哲学そのもの。
……と、自分は勝手に思っています。
ルナンたちが思い悩んだことも、見出した答えも、この世界で生きる自分たちと何ら変わらないと思ったからです。
この三つのメッセージは、ルナンたちが示してくれた、絶望の壊し方。
そして、希望の作り方です。
Cresteaju
PC版(フリーソフト)
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余談……
Cresteaju語りは今回の記事で終わりとします。
この感想日記は、買ってから放置していた期間が長く、自分がCresをどれほど好きなのかぼんやりしていて、やっと遊べるタイミングを機にどこがどう好きなのかをちゃんと明らかにしたくて書き始めました。
Twitterで流れてくるアメクレの話題や素敵な二次創作を遠くから眺めてるだけなのも寂しかったし、自分もずっと語りたい気持ちがあったので、ここで全部言語化できたらなと。
PC版から久々のプレイとはいえ、こんなにもたくさん新たな発見があるとは思いませんでした。同じイベントをロードして何度も見たり、プレイ動画なども見ながらゆっくり書いていったのですが……一つ気づくごとにCresの魅力をまた知れて、さらに好きになれるし、好きでいること自体が嬉しくなります。
大部分はストーリーについての感想でしたが、今まで漠然と好きだった気持ちは決して間違いではなかったのだとわかりました。エゴでやっていることですが、感想を書き綴ってみて本当に良かったと思います。
また、そもそも自分がもっとCresをよく理解したいと思うようになった最初のきっかけは、こちらの赤松弥太郎さんのレビュー文を読んだことでした。
自分が遊ぶとき、何に注目して何を思ったかは、こちらのレビューの影響が大きいと思います。やはり他の方の考察によって新たな視点が増えることは、より作品を好きにさせてくれました。
本当に最高の体験をありがとうございました。
そして新生AMEL BROATもとても楽しみにしています!!