『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想(ネタバレ)

アニメシリーズの感想はここに
https://note.com/amege630/n/n61313645e8f6

Filmarksに感想ちょいと書いた
https://filmarks.com/movies/80013/reviews/97957626



以下、ネタバレありで語る。













まず、主軸となるヴァイオレットとギルベルトの物語。
正直言うと、予告観た段階から「最後はギルベルトに会うのかな」と予想できてしまっていた。
だから、二人は簡単には会えないで欲しいな、と思っていた。
あれだけ想い続けた人だからこそ、会う瞬間は最も尊くて最高のカタルシスがないと嫌だなって。
まあ仮に会えない結末だったとしても納得する物語にはなるだろうと思ってたが。

俺は結構、二人の物語を複雑な気持ちで見ていたと思う。
早く会って欲しいと願う気持ちもあるけど、会ったらそこで物語が終わってしまうのもわかっていて、まだゴールしないで欲しい……みたいな。
そのせいか、彼に会える手がかりを得るのも結構早いというか、簡単なように思えてしまって。
彼が生きていることがわかるのはもっと前からだし(後半の各々の葛藤を十分に描くためにはその時間配分が最適だろうけど)。
彼の住む島へ訪れてから、そのままストレートに顔を合わせてめでたしめでたしってだけは絶対にないなと思ってた。
んで、扉越しに話すところで「帰ってくれ」と突き放された時は、辛いと思ったけど、同時に「よしっ」とも思ってしまったのだ。
……最低だが。
俺はヴァイオレットに感情移入していなかったのかな。とにかく、引いて見ていたところがあったと思う。
ただ、会えない理由は彼が罪悪感を抱えていることだったので、早くそれから解放されて欲しい、彼女は不幸になってばかりではないのだと気づいて欲しかった。
全て彼次第だったというか。

その後、ユリスが危篤と知らせを受けて、彼との約束を果たすかギルベルトに会うか葛藤するところとか良かった。
そして「声が聞けて、元気だと知れただけで十分です」と笑顔。
この言わされてる感がリアルだったなぁ。本当は彼女自身が学んだ“裏腹”で、十分などではないんじゃないかと思った。
そうして最後は、彼女の想いを手紙で受け取り、船に向かってダッシュ……と思ったら、彼女、船から飛び降りた!!!????????
まさかでした。船から手を振って「愛してる」をお互い伝える……という感じで終わるのかなと思ったが、確かにそれじゃ物足りないよな。
泥臭いことをするほどに会いたかったということ。
自分の口で「愛してる」を伝えたいけど泣きじゃくって声が出ない彼女の姿が、今までの中で一番人間らしい、一番感情をさらけ出した瞬間だなと思って。最初の頃の彼女からはとても想像できない変化。
ちゃんと言葉に出すことなく終わってしまったけど、それが逆に良いような気もした。

しかし、エンドロール後のカットで思ったのだが、二人は“恋愛”だったのだろうか……?
年の差がある(ように見える)からか恋愛とは思ってなかった。親子愛に似たものだとばかり。
何はともあれ、あの二人には永久に幸せでいて欲しい、というか、そうなるでしょう。絶対。



他に印象的だったシーン。
ユリスが最期に親友と電話するシーンはボロッボロに泣いた。
一人の人の想いを伝えるために郵便社の仲間たちが必死に動き回るところからもう感情掴まれてダメだった。
家族が遺言の手紙を読むところ、弟が無邪気に喜んでいるのは、彼はもう兄の声を二度と聞けないことを理解してないからかなと思うと余計切ない。

兄弟愛の描き方が、ユリスの兄弟とブーゲンビリア兄弟とで並べて描いているというか、それぞれを対比ではなく似ているものとして演出してるように思えた。
ディートフリートが幼少期の弟との思い出を語った場面の直後にユリスのくだりへ繋がったので、少しそういう意図を感じた。気のせいかも知れないが。
ユリスが弟に向けた「意地悪ばかり言ってごめん」は、ディートフリートもまた弟ギルベルトに向けているんじゃないだろうか、なんて想像したり。


で。
そのディートフリートおじさんが、俺がこの映画を観て一番好感度が上がった人物であり、一番感想を話したいポイント。

元々、彼のことがどうも好きになれなかった。
アニメシリーズでの彼は、軍の“道具”とされたヴァイオレットをやたら嫌って、理由もなく蔑みたがる。それがなぜなのかが理解できなくて。
彼女は明らかに成長しているし自分の意思を持ち始めているのは歴然なのに、認めようとせず、斜に構えて嫌味ばかり言い続ける。
んで最後果敢に戦った彼女を少しは理解したかと思えたが、それをハッキリとは態度に示さず、なんか振り絞ったように「生きて生きて、そして死ね」とか言う。
はああああ?? なんなん生きて生きて死ねて。
なんか格好良いこと言った風だけどお前が言っても全然響かねえぞ? ツンデレのごまかしにしても下手くそすぎんだろ(個人の感想です)。
「生きて生きて死ねおじさん」と呼んで一生イジり倒してやろうか。ってくらいに思っていた(個人の感想です)。
彼女を認める気恥ずかしさが拭えずに不器用さが露呈してしまった台詞と考えれば可愛げがあるのだが……それにしても意味わかんなすぎ。生きて生きて死ねは。
んな感じで、どうしても俺の中ではよくわからないツンデレ風ヘンテコ性悪おじさんとしか思えなかった。ごめん。

だが。
劇場版で描かれた彼を見て、その歪んだ性格の理由が少しわかったのだ。
その背景には、少年期の父や弟との関係性があった。

彼は軍人になりたくなかった。しかし自分がそう反抗した分だけ弟は父の機嫌を取るために従うしかなかったことや、(その後ろめたさからか)結局自分も軍人になったことなどから、「誰かの意思に忠実になること」に対して人一倍強いコンプレックスを抱えながら生きることになったのだろう。
だからこそ、ヴァイオレットがギルベルトから命令を求める様を見て「この人形め」と蔑んでいたのは、何よりも自分自身が父の“人形”であり、“道具”であることを思い出してしまうから。
きっと彼女への軽蔑の態度は、自己嫌悪の表れだったのではないか……。
そう思った瞬間に、あの生きて生きて死ねおじさんこそ、最も人間臭くて深みのある人物であるように思えて。

そんな彼はこの映画で、彼女を蔑むどころか、むしろ過去のそういう態度を悪く思っているかのようにめちゃくちゃ気を遣って接する。
序盤の二人の絡みに見られる微妙な距離感というか、少し気まずさの含んだ空気感が、こう……ごめん、ちょっと可愛らしいのよ。おじさん。
これまで散々ひどいことを言ってきた相手でかつ明らかに自分に問題があったと知ってなお接するとなると、リアルにこういう挙動になるのよね……
兄弟の幼少期の所持品を漁る時に、彼女が帽子を手にとって「これも少佐のですか?」「いや、それは俺の……」「……失礼しました」「いや、いいんだ」のあたりとか、んあ~~~~ムズムズする! くすぐったいよおじさん!!
反発し合っていたのに、同じ親しい人を失った者同士として少しずつ心を通わせていく、その過程がとても面白くて俺はニヤニヤが止まらなかったのだ。

彼はホッジンズと会って、「お前に彼女を縛り付ける権利はないだろ」と煽るような言い方をして胸ぐら掴まれてたね。
確かに軍の道具として利用した側だから「お前が言うな」で当然なんだけど、逆に考えれば彼だからこそ言える一言でもある。
彼はヴァイオレットの命令に忠実な姿も見てきたが、「もう命令は要りません」と自立する姿勢もまたその目で見たのだから。
「もう彼女は誰の言いなりにもならないと思う、俺もそれがわかった。だからそっとしておけよ」と言いたかったんじゃないかな。本人も自覚してるけど言葉遣いが汚いだけだよきっと。
そしてその流れで、ある手がかりによりギルベルトが生きていることが発覚する。兄としては放っておくわけがなかっただろう。

そして終盤。ギルベルトに会うことを諦めた彼女が島を離れようとした、その最高のタイミングで彼は最高のタイミングで登場する。
よくぞ来てくれたアニキ!と思った。そして「色々話したいことがあったが、今はお前を麻袋に入れて彼女の前に放り出したい気分だ」と。
おおおおよく言ったぞアニキーーーー!!!! 生きて生きて死ねアニキーーーーーーー!!!!
んでその後、弟に向けて「父の仕事は俺が継ぐ。お前は自由に生きろ」と言い放つ。自らの意思に反して無理して軍人になったであろう彼が。
かっこいいし、実際、死ぬほど弟を愛しているわけなんだな。

こうして俺の中でディートフリートおじさんの株が爆上がりしたことで、映画で印象に残ったことの大部分が彼で占められてしまったのだ。


ごめん、ちょっとどうやってまとめればいいかわかんない。

とにかく全体的に素敵な映画だった。
Filmarksにも書いた通り、気持ちを伝えることの大切さがメインテーマでで、手紙でも電話でも対面でも色々な形でそれを見ることができた。
映像も美しい。特に夕日の沈む海の背景が華々しいほどに綺麗だった。
音も質感がすごかったし、キャラの表情やモノの動き一つ一つが繊細だし。
映画を観たの自体久々だったけど本当にいいものを味わえました。

普通にもう一回観たいわ。

以上、うるさいレビューでした
 

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