夏のイギリス旅2024 (4) ヘブリディーズ・ルイス島
ルイス島の中心、ストーノウェイも少し車で走ると街が途切れて、植えられていた緑の木々もなくなり、あとは赤茶けた荒野となる。まるで火星にほんの少しの灌木が茂っているかのような風景がどこまでも広がっている。
島の南に行くともうすこし土地に起伏があるのだが、この単調につづく荒地がいい。なにか地球の肌をじかに踏んでいるような気がしてくる。
その荒野を突っ切るように走る道路を一時間ほど行ったところ、カラニッシュ地区にあるB&Bに泊まる。実はここに泊まるのは二度目、オーナーのグレゴーとは八年ぶりの再会だ。
以前来ときには、着いたらドアに張り紙があって、「他の仕事で留守にしているから、先に入っていて、鍵はかかってないよ」と。中に入るとキッチンにパンケーキがお皿いっぱいに焼かれていた、「食べてね」とメモをつけて。そんな彼がとても気に入ったのだ。
八年ぶりに再会したグレゴーは、BBC放送に料理番組を持って、ヘブリディーズ諸島の伝統料理を紹介するシェフになっていた。
彼はゲール語を話し、英語の字幕がでるというもの。ただヘブリディーズ諸島はゲール語話者の多い地域とはいえ、いまゲール語を日常会話で使っている人どれほどいるだろう。スコトランドでは2000年代に入ってゲール語の継承運動があって、教育に力をいれているということだから、BBCの放送もそのひとつなんだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=aGCcvYNxSx4&list=PLomnEwtqhZDfMmIiWbyNGYHKqPk6R5mRF
グレゴーのB&Bから歩いていけるところにカラニッシュ遺跡という巨石群がある。5千年前のものと言われているから、ケルト文化よりもっと古い、先史時代のもの。
十字に並んだ巨石たちに囲いとかもなく、石に直接触れることもできる。有名な遺跡なのでパラパラと人が訪れて来るけれど、みんな石のあいだを歩いたり、石にもたれたりしながら思い思いに石を感じようとしているようだ。とても静かで不思議な場所だ。
ルイス島には二泊して、戻ったアラプールの港の本屋さんで、ポール・ストランドの写真集を見つけた。ストランドはヘブリディーズの人々を撮っていたんだ。
私にはわかる!(笑)、ヘブリディーズ、果ての島の魅力が。