黒猫の祟り【ホラー怪談小説】
これは埼玉県の国道4号線沿いでガソリンスタンドを経営する男性が見舞われた惨劇である。
2年前の夏真っ盛りの8月、仕事を終えた彼は愛車に乗り込み、夜中の国道を自宅へと走らせていた。自宅付近まで来た時、彼は猫をひいた。ひかれたのは黒猫だった。しかも1匹ではなかった。2匹であった。国道の交差点を右折し真っ暗な農道を走行していた彼の車のヘッドライトの光を目がけて、その黒猫達が飛び込んできたのであった。彼は慌ててブレーキを踏んだ。そして車から降りて確かめに行くと、2匹の黒猫がボロきれのようになって重なるようにして倒れていた。 2匹は既に息絶えていた。
彼はにわかに恐ろしくなり、ひき殺した猫をそのまま放置して逃げるようにして車を急発進させ一目散に自宅へ帰った。
その夜から彼は悪夢にうなされるようになった。口から血を流しながらヨタヨタと彼の足元に近づいてくる子猫が、1週間もの間、夢に現れるのである。彼はこれは、あの黒猫の祟りに違いないと確信した。
しかし、祟りはこれだけではなかった。
猫をひき殺してからちょうど1年後、彼は最愛の息子2人を交通事故で相次いでなくしてしまったのである。
5歳の長男が死んだのは、去年の8月のことであった。仕事現場に向かうため彼は車のアクセルを踏み込んだ。それと同時に車の前方を1匹の黒猫が横切った。
悪夢が蘇ってきた。
彼は驚き慌てて車をバックさせた。その途端、
「ぎゃー!」
と子供の悲鳴が聞こえたのである。長男は 即死であった。
それからその3ヶ月後の11月、今度は4つになる次男が、毛の黒い子猫を追いかけて国道に飛び出したところを後ろから走ってきた大型トレーラーに跳ねられて死んだのである。
猫の祟りは、末代まで続くという。彼は現在、次は誰の番だろうか、と戦々恐々としながら日々の生活を送っている。