皆さんそうしていますよ
結婚式は豪華になればなるほど式場側は儲かるものです。しかし式をあげるカップル側は、なるべく出費を抑えたいものです。かといって、一生に一度の結婚式、ケチったという記憶は、なるべく残したくはない。そこで花嫁の中には、お手製のドレスを着て心に残るような式にしたいと思う人も多いです。けれども、こんな花嫁の攻略法は、すでに結婚式場側にも確立されているのです。
まず予約係がこう言うのです。
「ドレスは持ち込まれても結構ですが、どうしても地味になります。最近は列席される方も華やかなものをご期待なさいます。皆さんレンタルで借りてお召しになりますよ」
そして、花嫁の心が揺れ始めた頃、予約係はとどめの一言。
「皆さんそうなさっていますよ」
他人と違うのは嫌という日本人の心理を見事についた一言です。
結婚式は、ほとんどの人が初めてです。 式場の人に、こう言われると大抵の人は そういうものか、という気になりやすいものです。結婚式は誰が何と言おうと安く済ますぞ!という強い意思がなければ式場側に勧められるまま、より豪華なコースを選択させられるはめになってしまいます。
この、皆さんそうしていますよ、という強力な一言は、一般の店でもよく使われています。例えば靴屋に行き、どれにしようか迷う。すると、その店の店員がどこから ともなく現れ、
「皆さんこのタイプの靴を選ばれますよ」
すると不思議と、私もこのタイプの靴にしておこうかしら、という気持ちになってしまいます。それは大抵の人は、みんなが買ってる靴なら大きな失敗はないだろうと考えるからに違いありません。人間というものは、他人の行動に同調することで、安心感を得る生き物なのです。
では、外国の人の場合はどうでしょう。 日本人よりは、よほどはっきりものを言う アメリカ人にも、こんなエピソードがあります。
ある一人のウェイトレスが、チップの誘い水として受け皿の上に10セント硬貨を1枚、乗せておきました。もう一人のウェイトレスは、自分の受け皿に25セント銀貨を1枚、乗せておきました。すると2時間後には、10セント硬貨を誘い水にした受け皿には10セント硬貨ばかりが集まり、25セント銀貨の方には 25セントばかり集まったと言います。
個人主義の国アメリカに住む人でも、皆さんそうしてますよ、という暗黙の言葉に安心して同調してしまったのです。