シュツーカ


 山で激しい体験をした人の中には、かなり怖い思いをした人も多いと思います。遠くの空でピカッと雷光が走ったかと思うと バリバリバリと音がします。続いてゴロゴロゴロという大きな音がして、山全体が揺れるような感じがします。まるで戦場で爆撃を受けたような錯覚を覚えるはずです。ところが第2次大戦中、本物の爆撃音で連合軍を苦しめたのが、ドイツ軍でした。
 当時、ドイツ軍にはシュツーカと呼ばれる急降下爆撃機があったのですが、これは地上の戦車や施設などを狙って急降下し、爆弾を投下し、味方の進撃を助ける爆撃機でした。
 シュツーカの主脚には、木製の回転ブレードが取り付けられていましたが、これは通常の遅いスピードの時にはどんな音も発しません。しかし、攻撃目標を目指して急降下すると回転数が増加して、恐ろしく不快な音を発しました。この不快な音を空から撒き散らしながら爆撃を繰り返したわけです。そのため地上においては、この音が 爆撃の前奏曲になったのです。人々にとってこの音は、不吉この上ない音だったのです。中には爆撃がなくても、この音を聞いただけで錯乱し、あたふたとパニック状態に陥り、悪魔の咆哮と呼ばれ恐れられていました。
 大戦中、連合軍は、この不快な音による心理攻撃に手を焼くことになるのですが、 実は、この音による心理作戦は偶然に発見されたものでした。ドイツ軍がそのヒントをつかんだのは、第二次世界大戦の初期の頃です。
 ドイツはシュツーカ爆撃機を持つ前、ヘンシェル社の、Hs123、という急降下爆撃機を使っていたのですが、これは1939年、ポーランドへの侵攻の際にも地上軍の援護機として投入されています。この時、Hs123は、エンジン音が毎分1800回転に達すると、不気味な音をあげ始めたのです。そして、この音でポーランドの軍用馬が、パニックになり逃げ回ることを発見したのです。ここから研究を重ねてあみ出したのがシュツーカだったのです。

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