パーティーに現れる亡霊【ホラー怪談小説】
1995年8月13日のことである。
茨城県水戸市に森山勝二という53歳の男が住んでいた。地元で運送業を営んでいた。毎年夏になると彼は、知人を家に招いて自宅の庭でパーティーを催すのを恒例としていた。その日も会社の従業員や親戚や友人たちを庭に招いて夕方からパーティーを楽しんでいた。
肉を焼いたり酒を飲んだり歌ったり踊ったり陽気なパーティーは夜遅くまで延々と続いた。
午前0時近く、パーティーもそろそろ終わりかけた時だった。
幽霊が現れたのである。それは、勝一の霊だった。
勝一は勝二の4つ年上の兄で、1年前の1994年にすでに帰らぬ人になっていたはずだった。彼は勝二と同じ運送会社で働いていたのだが、その夏の日、配達の帰り道で、トラックのハンドル操作を誤って道端の電柱に激突して死んでしまったのである。その事故の知らせを受けた勝二が病院に駆け込んだ時には勝一は、もうすでに息絶えていた。遺体の損傷は激しく二目と見れぬほどの酷い有様だった。
その日から1年経ち、不意にパーティーに現れた血まみれの勝一。彼は幽霊となって里帰りしたのだろうか。従業員や親戚や友人、そして勝二が懐かしくて帰ってきたのだろうか。庭の片隅にぼんやり佇む彼の亡霊を眺めながら勝二はそう思ったという。
翌年、やはり勝一の幽霊は、パーティーに顔を見せた。それから、次の年も、それから、次の年も。
勝二は、毎年、兄に会うのを楽しみにしている。