プレミアム

※ラスベガス編の予定でしたが、もう少し刻んで書きたくなったので今回はハウスゲーム編となります。

仲間内のポーカーは基本的にちーくろ君の家で行われていました。ちーくろ君は一橋大卒、税理士事務所勤務、妻子持ちというハイスペックですが、仮に何をしても罪に問われない世の中になったとしたら街の女性を片っ端からナイフで刺し殺して死姦するんじゃないかと思えるようなサイコパスなイメージがあります。

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※私の勝手なイメージです

何度かハウスゲームをやる内に、少しずつポーカーというゲームがわかってきました。特に、オンプレイ中に人のハンドを勝手に覗くことが普通じゃないことを知ったのは大きかったです。あと、以前は必ず参加していたT5oのようなハンドを泣く泣くフォールドすることで、私のVPIPは90%→65%くらいまで下がっていたと思います。流行りのタイトアグレッシブの完成です。僅か数回のポーカーで「ぼくのかんがえたさいきょうのプレイスタイル」に辿り着いた私はやはりセンスの塊だと思いました。

ある日、ちーくろ家でいつものハウスゲームが行われていました。その日は山田リン子という昔からのらいつべの知り合いが何故かカレーを作って皆に振舞っていました。とても美味しかったのを覚えています。

その日の私もボトムペアでオールインして3rdペアにキャッチされるなど快調に飛ばしていました。

「なぜいつも誰かと私の1対1になって、決まって私より強いハンドを持っているのだろう?」とある種のイジメに遭っているような感覚に陥りました。でも負けず嫌いの私はしょっちゅうやってくるAやK、そして近い数字や同じ色の2枚で戦いを挑んでは負け、挑んでは負けの繰り返しでした。

そして10万近く負けた状態でのラストハンド。配られた2枚を見るとそれは待ちに待ったプレミアム、TTでした!

しかし誰も参加しないままSBの私までフォールドで回ってきます。せっかくのチャンスが台無しです。でも大丈夫。BBにはさっき驚くほど美味しいカレーを振舞っていた山田リンコがいます。カレーに罪はないが、ここは彼からごっそりいただくとしましょう。レイズ!

すると彼はなんと更にレイズを返してきました。私は目の前に現れた巨大な餌に涎が出そうになりました。なんたってこっちはプレミアムです。念入りにハンドを確認し、意気揚々と更にレイズを返します。もちろん私の狙いは相手のオールインです。なんたってこっちはプレミアムです。

するとこちらの狙い通り山田はオールインをしてきました。こっちがプレミアムとも知らずに馬鹿な奴め。いい気になるんじゃねぇデブが!と音速でコールします。

彼はAAを開きました。真のプレミアムです。

私がTTを開くと彼は小さな声で「っしゃ!っしゃ!」と言いました。

そのままドラマは起きず、山田のガッツポーズと共に私のプレミアムは破壊されました。

こんなことあっていいんですか?普通ポーカー覚えて1ヶ月の初心者を飛ばして本気でガッツポーズしますか?

周りの友達は「これはいいプレイ」と私を慰めてきましたが、プレミアムでまさかの敗北を喫した私の心には響きません。せっかくのカモがポーカーをやめないように必死になってるようにしか思えません。

がっくりと肩を落とした夕暮れの帰り道、私の脳裏に浮かんでいたのは山田の嬉しそうな顔と高々と突き上げた右手だけでした。

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