詩 あなたの名
あなたの話し方や音程
あなたの感覚や視線が
私の骨に引っかかって
その違和感が心地良く
折りに触れ声を聴けば
心の底にただ穏やかな
紺色の絨毯がひろがる
でもあなたの名を私は覚えていない
深く静かな水底を持つ
あなたの声をいつでも
思い出すことができる
青の奥に佇む凪の様な
あなたの姿をいつでも
思い出すことができる
でもあなたの名を私は覚えていない
その名を音で捉えても
その名を目が捉えても
私はまた忘れてしまう
今日あなたを夢に見ました
夢の中でも触れ得ぬ程
焦がれるあなたの名を
私は言おうとしたけど
とうとう分からぬまま
夢も終わってしまった
心に残る人の名を私は覚えていない
ただ私は薄闇の海の様な存在を
あなたという存在を知っている
折りに触れ声を聴けば
ただ穏やかに心の底に
紺色の絨毯はひろがる
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その存在を所有したいと思わなければ
その名を呼ぶ必然もないのであろうか