ブブのながいはなし24
なんでこんなに嫌な目に遭うのだろうとブブは思いました。思えば楽しいことなんて一つもなかった気がします。「たのしいってなんだろう」今のブブにはとうていわかりません。「教えてあげるよ」肩のあたりでゆらゆらするものが心に呼びかけてきます。「ひえー」ブブは思わず悲鳴をあげます。「大丈夫、大丈夫。何もしないよ」肩のあたりがじんわりと温かくなります。さっき木に感じた温かさと同じような気がします。足の震えは止まらないけれど、心の震えは少しだけ緩んでいきます。「右足、左足って交互に動かしてごらん」耳から聞こえるというより、心に掛けられる声がそう聞こえます。ブブはもうどうにでもなれと思って、右足、左足と交互に動かしてみます。それに合わせて声の主は、歌を歌い始めます。今まで聞いたことのない響きで、ブブの知っている言葉とも違いました。まるで風の歌のようです。ブブは歌に合わせてステップを踏んでいるのでした。
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