ブブのながいはなし29
ブブは暗い闇の中にいるはずでした。まぶたの裏には、気味の悪い光の残像が相変わらずあります。目を閉じていることにもブブは我慢ができなくなってきました。辛抱がないのです。我慢はブブのいちばん嫌いな言葉でした。ブブはそっと目を開けてみます。そうっとそうっと。するとなんだか明るいような感じがするのです。まぶしいくらいにも感じられます。閉じた目の裏より闇の中のほうが明るかったのです。でも何かあるわけではありません。何もないのです。重さと感触のあったはずの闇は目を開けてみたらもう何もないのです。「最初からだよ」どこかから声が飛んできます。ブブにはなんのことか全然わかりません。そもそも目の前の状況すらわかりません。ブブは何もできません。体もカチコチです。「ステップを思い出して」声が語りかけてきます。どういうことなんだろう。ブブにはやはりわかりません。頭で考えるにはもうどうしようもないのです。そうしてまた肩のあたりに重みを感じるのでした。
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