ブブのながいはなし58
ブブが触ってみたつぼみは、ひんやりとして硬い感触がありました。金属のような硬さではなくて、儚い硬さです。ぎゅっと力を入れたら、きっと潰れてしまいます。ブブはそうっとつぼみを何度も触ってみます。不思議な感触でした。生きているよというメッセージが遠くのほうから飛んでくるようでもありました。ここから花が咲くのです。ブブには想像のできないことでした。自力でつぼみを膨らませて、花を開く。なんて迷いのない行為なんだろうと思います。他に道はないのです。ブブは、自分もそうすればいいのだと思いました。考えが一周回っていました。今までいた場所から出てきたのだから、ただ帰ればいいのです。花と同じように、ただ一つの道を歩むだけでよかったのです。でも、頭の中はそうはさせてくれませんでした。ひとりぼっちを憂い、幽霊に会ってとまどい、木の精と会ったら歌を忘れていることに気づいてしまいました。こんなにいろんなことがなければ、何も考えずにただ生きていけたはずです。ブブは、またよくわからなくなっていました。情報の整理がとても苦手だったのです。