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デザインが切り拓く、飲食店AI革命の未来
こんにちは。
株式会社アンビエントナビに勤めて8年目のデザイナーの杉浦です。
当社は、飲食店×AI領域のコンパウンドスタートアップとして、飲食店をターゲットに様々なプロダクトの開発を行っております。本記事では、私がデザイナーとして「プロダクト開発にどう関わっているか、何を重視しているか」をお話したいと思います。
ターゲット理解
まずは、ターゲットの理解です。
デザイナーがプロダクト開発に携わる時、このターゲット理解を徹底的に行うことが何よりも重要です。ターゲットがどうやってプロダクトと出会い、関わり、利用し、価値を感じるか、それらのユーザー体験を考える時、そもそものターゲットってどんな人なんだろうという理解が、デザイナーには必ず求められます。
では、ターゲットを理解するとはどういうことか?
それは、年齢、性別、家族構成、所在地、収益等だけでなく、普段どんなツールに触れ、どんな人と仕事をし、どんな生活を送り、何を考え、何で喜び、何を生き甲斐に生きていたかなど、様々な顧客情報を収集していくことです。
勿論上記の情報に限らず、ターゲットを理解するための情報というのはまだまだ存在します。
また、ある程度の情報を得ることができた先では、「このターゲットならこんなものが好きだろうな」と想像していくことも重要です。これからの時代に開発されるSaaSプロダクトは、そのほとんどが、顕在化されたユーザーニーズを解決するためのツールではなく、まだユーザーも気づいていない潜在的な課題を解決するためのツールであることがほとんどです。つまり、先程も述べたような「こんなユーザーだったら、きっとこんな課題を抱えているかもしれないな。こんなものがあったら便利だと感じてもらえるだろうな」という想像がプロダクト開発における重要な思考になります。
また、このターゲットの理解がずれると、その先で想定するUXにずれが生じ、UIもずれてしまうことに繋がるため、折角長い時間をかけ開発したプロダクトが、却って飲食店経営を不便にさせてしまうことにもなりかねないので、要注意です。
当社も開発初期の頃は、ターゲットを十分に理解できていなかったことが原因で、間違ったデザインのアプローチを行い、ユーザーテストでの検証の結果、開発し直しになることが何度もありました。ただ勿論、その後何度も開発と検証を繰り返すことで、少しずつターゲットの理解を深めることができました。ユーザーのニーズを何度も社内で確認し、擦り合わせ、実際に検証するユーザーテストや、利用してみた感想を伺うユーザーインタビュー等を行うことが、非常に重要になります。
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では、当社の事業のターゲットとなる飲食店は、どのような特徴があるのか?
まず、当社のターゲットとなる飲食店との最初の接点は、インスタグラムのDMになります。ターゲットの対象となる飲食店は、日本全国各所であり、特に大きな縛りはありません。現在時点での縛りとしては自店のインスタグラムアカウントを運用していることのみです。
つまり、当社としてはお店のインスタグラムからわかるお店の雰囲気や、オーナーの人柄、何を大事にして、何を目指してお店を営業しているか、それらのリサーチから始まります。
「なぜ飲食店を始めたのか」「なんのための飲食店を経営をしているか」「どこを目指して経営をしているのか」など、お店毎にリサーチを行うとその内容は多岐にわたり、とても共通してこれと言えるようなものはありません。ただ一つ言えることは、どの飲食店のオーナー様にも必ずお店を経営している理由があり、できるだけ長く続けられるような努力をしています。では、どうしたらできるだけ長く続くような飲食店にできるか考えないといけません。
ただ、日本の飲食店は3年で30%が閉店すると言われているほど、経営を続けることが難しい業態です。だからと言って対策を打つ時間を作れるかといえばそんなこともなく、毎日の営業を回すだけで手一杯なほど業務量は多く、且つ肉体労働でもあるため、体力が奪われて1日が気づいたら終わってるとそんな状態が現実です。私自身も、当社が愛知県の名古屋で飲食店事業を行っていた頃、お店の店長を請け負っていた時期があるのですが、毎日のルーティン業務は、今でも明確に記憶に刻まれているほど、とんでもなくしんどい思いをしていたことを覚えています。ただ、当時の店長経験があることは、現在のプロダクト開発において、飲食店オーナーや店長の気持ちを想像することに生かすことができています。
また、当社の大きな特徴として、既に提供する予定の顧客が開発前から存在していたことが上げられます。その顧客とは、既に別の自社事業で深い繋がりを持っており、ユーザーテスト等がしやすい関係値だったため、開発当初から細かな課題を発見、対策することができました。その特徴を存分に生かし、非常に早い速度で開発を進められたことも当社の大きな特徴になります。
UXについて
ターゲット理解が定まったら次に考えるべきは、UXです。
ユーザーがどのようにしてプロダクト(当社全体のサービス)と出会い、関わり、利用してもらい、価値をどう感じてもらえるか。
当社のターゲットの特徴としては、提供できるようなSaaSサービスを初めて利用するだろう顧客が半分近くいることです。仮に使ったことがある、有名なシフト管理ツールや、無料のposレジツールなどを、たまたま知り合いづてで導入していたというようなお店がほとんどです。
つまりここで重要になるのは、一言でいうと「シンプルで直感的」であることです。複雑な機能が多く含まれて、どんな課題にも対応できるようなサービスは世の中に多くありますが、当社のターゲットの中には、そういった機能を適切に利用できている飲食店はほとんどいません。むしろ最低限の機能を、若いアルバイトの子やオーナーの息子さんなどに教えてもらいながら、やっと使えるようなお店がほとんどです。
また弊社と関わるまでSaaSサービスを利用したことがないようなお店では、そもそも手書きで売上を計上したり、納品書を紙で管理し続けたり、LINEで集まったシフトを紙にまとめて共有しているような飲食店もあるほどです。だからこそ複雑でなくシンプルであることは、非常に重要なキーワードです。
更にシンプルで且つ直感的であることが、そういったSaaSサービスを利用したことがない当社のターゲットでも使えるサービスとしては必須になります。
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また、当社では冒頭でも伝えたように「AI機能」もプロダクトへ組み込んでいきます。AI機能を実装するにあたってデザイナーとして理解しておくべきことは、AI技術は想像以上の高度な機能を有しているが、その機能をどうUXに落とし込むかを考えること。結局ターゲットとなる飲食店オーナーが使えないと、その高度なAI機能も意味がありません。使えるものにするため、視覚的、且つ触覚的UIを構築し、また、如何に人的サポートをしていけるかも、会社として求められます。つまりデザイナーに求められるのは、技術とデザインのバランスを取ることなのです。私自身、AIのOCR機能が搭載されるツールをどうプロダクトに落とし込んでいけるかをこれまで考えてきました。そこまでを考えて真に価値のある製品を作り上げることができるのです。
UIについて
次に考えるのはUIです。
UIは、どんな機械を通して、どんなカラーを使い、どんなフォントスタイルや画像、グラフが使われ、どんな動きが実現されているのか?を考えます。
UIに関してはほとんどの場合、UXがガッチリと決まっていると、ほとんどUIも決まっていくことが多いです。
無論全てそう言ったわけではありませんが、飲食店DXを目指すようなツール系は、世の中には既に存在するツール系としての基本的なパターンや常識が存在しているので、それをある程度踏襲した上で、当社のターゲットとUXを実現したい場合はどうなんだろう?と考えていきます。
その上で当社のターゲットの飲食店は、日本全国各地に存在しており都内の数以上に地方には顧客が存在しています。その中でもターゲット像として想像しやすい例をあげるとすると、「熊本で居酒屋を1店舗営む40歳の男性オーナー」です。当社ターゲットの特徴として、ほとんどが1店舗、多くても3店舗ほどの飲食店オーナーだという点があります。ターゲットの展望で、お店を全国に何百店舗も展開して、超ビックな社長になりたいという人は、ほとんどいません。またもう一つの特徴として、オーナーはロジックでの決断以上に、これまで関わってきてお世話になった人との繋がりを重視する傾向があります。つまり物事の最終的な決断を感情で決めることが多いということです。
そこから考えられるUIの重視面は、to B向けツールを参考にするというより to C向けツールを参考にすることです。そもそもto Bツールは、ビジネス的な用語が多用されていたり、複雑だけどロジカルな構築のされ方をしているUIになっている特徴があります。ただ、そうではなくto C向けツールのようなシンプルで簡単であるからこそ、「使いやすくわかりやすい」。そして何よりもユーザーのパッと見の感情として価値を感じてもらえる予感のするUIであるべきなのです。
そうなった時に当社が支出管理プロダクト開発時に参考にしたものが、ヘルスケアツールや家計簿ツールです。ヘルスケアツールの特徴としては、難しく感じにくいシンプルなグラフ、ビビッと過ぎないカラーリング、最重要視してる数値だけを大きく配置してるといったものがあげられます。つまり、理解しづらい情報は存在せず、簡単明瞭であり、そして何よりそのUIから感じる感情的な「わかりやすそう」をいかに再現できるかが重要です。
そしてもう一つ参考にした家計簿ツールの特徴としては、カラフルであること、そしてエンタメ的コンテンツやビジュアルがあることです。to B向けツールは色数が絞られたUIが多く、あらゆる情報が綺麗に整理されてます。ただ当社の場合はそうではなく、重要な情報だけをカラフルに、馴染みやすいと感じられるようなアイコンを用いてUIを組み込んでいきます。
また何かしら達成感を感じてもらいたいUXの存在するポイントには、そのUIインタラクション等に画像やイラストを用いたエンタメ的ビジュアルを盛り込ませています。
このように基本パターンを最低限踏襲しつつも、弊社のターゲットの飲食店だからこそのUIを考えて、プロダクト開発を進めることが重要です。
デザイナーとしてのマインド
最後はデザイナーとしてのマインドです。
結論、大事なのは手を動かし挑戦を続けることです。そもそも私自身は当社に所属して8年目となりますが、プロダクト開発だけでなく実に多くの様々なデザイン業務を行ってきました。
通販事業を行っていた時代では、バナーの作成や通販サイトの作成、商品パッケージの作成やロゴの作成など行い、飲食店時代はメニューの作成や、卓上に置くポップの作成、求人チラシの作成やそもそものお店自体の内装デザインも行いました。
そして今の飲食店コンサル事業が始まって以降では、ビジュアルの作成、動画の型の作成、会社HPの作成など、実に多岐に渡るデザイン業務を行ってきており自分は何者なんだ?と思うことさえあるほど、多くのジャンルのデザインをこなしてきました。
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ただ、そのフェーズごとで重要にしていたマインドは、与えられた場所で何を求められているのか。また、次に何が必要か?を考えて行動すること。そしてそれらを考えながらとにかく手を動かすことです。事業会社のデザイナーにおいて、重要なことは質ではなく圧倒的な数です。数をこなす中でいくつ失敗したかが、自身の成長にも会社の成長にも直結します。フリーランスのデザイナーや、デザイン会社のデザイナーでは、最初からある程度の質を求められます。ただ、事業会社は挑戦できる環境があるからこそ、挑戦できた数が重要で、その数が会社からの評価に直結します。
また、なによりもターゲットを通してユーザーに与えられる価値が変わります。
特に弊社は、デザイナーが挑戦しやすい経営モデルになっているからこそ、どんどん挑戦していくべきであり、その数が個人の成長、ひいては組織の成長に直結します。
最後に、デザイナーという職種は評価が非常に難しい職種です。明確に数値に直結したといえる結果が出るような仕事ではないからです。私が思うのは、だからこそどれだけビジネスサイドに関わっていけるかが重要になっていくということです。そもそもコンセプトや営業戦略、経営戦略が間違ってないか?そこに一貫性があるか?それらが適切な上でデザインの仕事というのは存在するからこそ、そこにいかに踏み込んでいけるかがデザイナーには重要だといえます。
弊社は、ビジネスサイドと非常に近い距離でデザイン業務が存在するので、それらが実現できる環境です。私は、その環境を存分に生かし、デザイナーとして、更なる「飲食店×AI領域のコンパウンドスタートアップ企業」の成長を目指して参ります。