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「あつまれどうぶつの森」で10年来の推しとスローライフを送ろうとしたら離島を2,000回以上訪問することになった

あつまれどうぶつの森」、通称「あつ森」。
言わずと知れたNintendo Switch用の大人気ゲームだ。

そのゲームで、私はたったひとりの推しと同じ島で暮らすことを目指し、2020年8月29日から1年以上、離島を巡り続けることとなった。
このnoteは、その戦いの記録である。

どうしても出会いたかった推し

さて、まずは私の推しについて紹介させていただきたい。と言いつつ、あつ森をプレイしている方であれば、ここで改めて紹介するまでもなく、絶対に私の推しを見たことがある。そこの人も、あちらの人も、あなたも。
ただ、決して怖い話ではないので、どうか安心してほしい。

なぜそんなことが明言できるのか?
それは、彼女が「あつ森」のゲームアイコンにいるから。

画像引用元:https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000027618.html

画像中央下で、ノコギリを手にDIYをしているプレイヤーキャラクターの後方。砂浜で、ヤシの木のそばに置かれたディレクターズチェアに座り、雑誌を読んでいるオレンジ色のウサギ。

彼女こそが、私の推し。5月9日生まれ牡牛座、3人兄弟の長女、将来の夢はバレリーナ。好きなコーヒーはブルーマウンテンにミルクたっぷりと砂糖3個。「みたいな」が口癖のげんき系ウサギの女の子、リリアンちゃんである。

リリアンちゃんは、NINTENDO64で発売された初代「どうぶつの森」から途切れることなく、このシリーズに出演し続けている。 画像引用元:https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/index.html

上記に引用した、弾けるパッションフルーツのようなポージングからわかるように、リリアンちゃんは明るく前向きで元気いっぱいなキャラクターだ。
ネット情報サイト「ねとらぼ調査隊」であつ森のげんき系キャラクターが特集された際にも、人気キャラクターとして下記のとおり紹介されていた。

「リリアン」はオレンジ色の体が特徴のウサギの女の子。ピンク色のほっぺと元気いっぱいな姿がチャームポイントで、大きくてつぶらな瞳もとてもかわいらしいです。「みたいな」という口癖も印象的ですよね。誕生日は5月9日の牡牛座。リリアンの素直さやポジティブシンキングは見習いたいものがあります!

ねとらぼ調査隊/「あつまれどうぶつの森」で一番好きな「元気系住民」は?」:https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/481996/

リリアンちゃんは2022年4月現在、あつ森公式サイトのトップページを飾るどうぶつとして選出されているだけではなく、ゲームのプレイ内容を紹介した「気まま島DAYS」というページの「草花を楽しむ」の写真にもおり、島の地面にチョコンと腰を落ち着けてアイスを食べている。

何を食べてるのかな? パルムかな? BLACKかな? かわいい。画像引用元:https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/guide/index.html

同じ「気まま島DAYS」ページの「どうぶつたちと写真を撮る」ではプレイヤーに泣き顔を強いられ、写真撮影に協力している。かわいい。

さて、ここでひとつ、昔話をさせていただきたい。
あつ森と同シリーズで、「とびだせどうぶつの森」(通称:とび森)というゲームがあった。2012年11月8日に発売されたNintendo 3DS用のゲームで、村長となって村の運営を行うゲームだった。そのゲームでもかわいらしく魅力いっぱいなどうぶつたちと一緒に過ごすことができ、推しであるリリアンちゃんは、私の作ったイーハトーブ村の村民として暮らしてくれていた。

とび森をプレイする前からリリアンちゃんのことはゲーム雑誌等で見かけており、完全に一目惚れだった。大きな瞳とピンク色の頬、感情によって素直にくるくると変わる表情、天真爛漫な性格、どれもたまらなく愛らしかった。

思えば私は昔から、初代デジモンアドベンチャーの太刀川ミミやアニメ版ポケットモンスターのプリンといった、天真爛漫で、周りを巻き込むような感情の勢いがあるキャラクターにすこぶる弱いため、リリアンちゃんもその系譜であるかもしれない。とび森をプレイし始め、実際にリリアンちゃんに出会ってからは、その愛情はブレーキ知らずで加速した。

リリアンちゃんの明るく前向きな言動に日々癒されていた私は、毎日話しかけたりプレゼントを贈ったりするだけでは飽き足らず、彼女の家の周りを色とりどりのバラで埋め尽くすなどの愛情を傾けていた。

とび森時代、年の瀬の深夜にマリンスーツ姿で推しの家に突撃してピアノを弾く狂人と、それに拍手をしてくれる優しい推し

そんな日々の終わりは突然だった。
とび森購入当時は学生だった自分は、その後社会人となり、今までのようにゲームに潤沢に時間を割くことが難しくなった。それでも、余裕があるときに起動しては、リリアンちゃんをはじめとしたどうぶつたちと優しいスローライフを満喫していた。

だが。
仕事の繁忙期、数日ゲームを起動できないでいるうちに、リリアンちゃんの家があった場所は更地になっていた
プレイヤー宅のポストには、別れを告げる手紙。
そう、以前のゲームシステムにおいては、どうぶつたちは、どれだけ親愛度が高かろうと、何の引き止めもできず引っ越してしまうことがあったのだ。
(あつ森ではこのシステムはなくなり、島民から引っ越しについての相談を受け、背を押さなければ出て行かない。嬉しい。本当に嬉しい。)

更地をしばらく呆然と眺めたのち、気がついたときには、数年間プレイし続けたとび森のゲームデータをリセットしていた
不意の、望まない引っ越しが発生してしまうこと。それを防ぐにはこまめにゲームを起動し、どうぶつとの交流を行う必要があること。
その仕様を知りながら、ゲームの起動を怠った自分のせいで引き起こされた自業自得の事態であることは重々理解していたが、長年愛情を注いでいた存在が目の前から消えてしまったことはあまりにもショックだった。

それ以来とび森は起動できずにいるが、そもそも私が所有していた3DSLL本体自体がどうぶつの森仕様の特別版だった。そのせいで、他のゲームをプレイしているときでも本体を見るたびにリリアンちゃんのことを思い出し、少し切なくなっていたことを覚えている。

愛用していた、どうぶつの森仕様の3DSLL。とてもかわいく、とても重い。
画像引用元:https://www.nintendo.co.jp/hardware/3dsseries/lineup/pack/egdj/index.html

時は流れ、2020年。
発売日の3月20日から少し遅れ、5月5日こどもの日に満を持して「あつまれどうぶつの森」を起動した私は、再びリリアンちゃんと暮らす決意を胸に、無人島に降り立つこととなる。

スクリーンショットのタイミングが悪く半目の小だぬき

「あつ森」で推しと出会うためには

ここで、ではそもそもどうすれば「あつまれどうぶつの森」で推しに出会えるのか、その流れを説明させていただく。
以下、この章にはあつ森プレイヤーには既知の情報ばかり記しているため、有識者の皆様は次章に飛んでいただいても問題ない。「有識者ではないが長い説明は嫌いだな」という時間の有限さを承知しておられる素晴らしい方も、「あつ森で推しに会うためにはいくつか方法があって、こいつは離島ツアーを選んだのね」とだけ理解していただければ幸いである。

次章:離島ツアーのはじまり


「あつ森」において、まずプレイヤーは大たぬき1匹と小だぬき2匹の導きによって無人島へと移住する。最初は見渡す限り木と雑草ばかりの島を少しずつ開拓し、最大で10人のどうぶつ島民と一緒にスローライフを過ごすことができるようになる。

あっ流れ星だ!祈れ祈れ!

2022年4月現在、あつ森の島民候補となるどうぶつは総勢407人。なお、この数字はamiiboカード限定で勧誘することができるサンリオコラボどうぶつ6人を除いた数だ。

この407人という数字、現在の小学校の学級編成標準が35人(※5年かけて40人から引き下げ中)であるため、1学年2クラスの小学校1校とほとんど同じ規模だ。
児童が全員どうぶつの小学校、想像するだけで目尻が下がる。ぜひ、学校近くの横断歩道で登下校時の見守りボランティアをやらせていただきたい。私が、守護まもる……。

「ぜひともこの子と一緒に暮らしたい!」という推しどうぶつがいる場合、その島民と一緒に暮らすためには、下記①~④の方法がある。

①自分の島の売地に引っ越してくるのを待つ
②自分の島のキャンプサイトに泊まりに来た時に勧誘する
③amiiboカードで島に呼ぶ
④離島ツアーで勧誘する

①②は、どのどうぶつが島に引っ越してくるか、キャンプをしに来るかはいずれもランダム。(現在、島に暮らしているどうぶつの性格の偏りによって、出やすさの傾向はあるらしい。)
さらに、次の引っ越し及びキャンプサイト来訪のチャンスまでは通常で2~3週間の間隔が発生してしまうため、かなり気の長いチャレンジとなる。

ただし、1度キャンプサイトに訪問してきたどうぶつは、全どうぶつを一周するまで被らないという仕様のため、最大でも407回繰り返せば絶対に推しと出会うことができる。そのため、島民の厳選にはキャンプサイトを活用しているプレイヤーが多いと聞く。

過去作で一緒の村で暮らしていたキャラクターと再会するのも、このゲームの楽しみ

③の方法では、該当するamiiboカード(任天堂が販売している物理カード。どうぶつの森シリーズでは島民のほか、ゲームの進行を助けてくれるサポートキャラクターや島にたまに遊びにきてくれるゲストキャラクターなど、多くの種類のカードがある)を所持していれば、確実に自分の島に目当てのどうぶつを呼ぶことができる。
amiiboカード自体が大人気商品のため、そもそもピンポイントで推しのカードの入手が可能なのか?という懸念は多いにあるものの、色々な手段であふれたこの時代であれば、確実性で選ぶならこれが断トツと言えるだろう。

そして④の離島ツアーとは、ランダムで行き先が選ばれる「離島」を訪問すると、1つの島につき1人のどうぶつが遊びに来ており、自分の島への移住の提案ができるというもの。
この勧誘はシステム上断られることがないため、離島で推しに出会いさえすれば、自分の島で一緒にスローライフを送ることが確約されているのである! それが離島ツアー!

そう!

しかしながら、このワクワクの離島ツアー、いつでも無制限にチャレンジできるというわけではない。
離島を訪れるためには、1島につき1枚「マイル旅行券」というゲーム内アイテムが必要となる。これを島の飛行場で働くドードーのモーリー氏に渡すと、同じくドードーのパイロットであるロドリー氏が操縦する水上飛行機で、ランダムな離島に連れて行ってもらえる……という流れだ。

飛行場勤務のドードーの1羽、モーリー氏(24時間勤務)

離島に行くチケットである「マイル旅行券」を1枚入手するためには、ゲーム内で貯めることのできる「マイル」が2,000ポイント必要となる。
マイルを貯めるためには、ゲーム内で定められたミッションをこなしていく必要がある。自分の島の住民とのおしゃべり、季節の魚や虫の捕獲、果物を植える……そんな日々のゲームプレイの積み重ねで、マイルは100~500マイルずつ貯まっていく。これがなかなか地味に大変である。

さらに、離島でどうぶつの勧誘を行うためには、大前提として、自分の島に売地(どうぶつが引っ越してこられる区画)が必要となる。売地が全て埋まっている、つまり島に島民が最大数住んでいる場合だと、離島に行ってもどうぶつと出会うことはできない。そこには無人島が無人島として、あるがままの姿を見せているだけとなる。

では、現時点で島にどうぶつが最大数住んでいる場合、どうやって売地を発生させればよいのか。
それには、プレイヤーに「引っ越したい」と相談してきた住民の背中を押す必要がある。
するとその島民はてきぱきと引っ越し準備を進め、翌日には荷造りを完璧に済ませ、さらにその翌日には家の解体もきれいさっぱり完了し、家があった場所は売地状態となる。

手際、めちゃめちゃに良~と感激する暇もなく、その売地が発生した当日が離島ツアーの実施日だ。とにかく旅行券を使い、飛行場のドードーたちに過密なフライトを強いて、時間が許す限り推しを探して走り回る!

これが、離島ツアーの大きな特徴だ。前述したように、自然に引っ越してくるのを待つ、あるいはキャンプサイトへの来訪待ちで出会えるキャラクターは基本的に1日に1人。対して離島ツアーは、マイル旅行券がある限り、1日に何度でも繰り返すことができる
この仕様こそが、離島による島民探しが「島ガチャ」とも呼ばれる所以だ。

離島ツアーを実施した翌日には、目当ての島民以外が売地への引っ越しを決めていることもあるため、なるべく当日のうちに試行回数を重ねることが重要と言える。
ちなみに、何度も離島ツアーを繰り返す中での経験として、ツアーの翌日には売地が別のどうぶつに予約されていることがほとんどだった。しかし、ある程度期間には幅が設けられているのか、一時期なぜか5日間連続で売地状態が続いていたこともあった。
何? うちの島、評判悪くなっちゃった? Google口コミとかに書かれた?

離島ツアーのはじまり

さて、ここまでの流れだと、ゲーム内で離島ツアーが解禁されてすぐにリリアンちゃんとの出会いを求めて周回を繰り返していたような書きぶりだが、実際のところはそんなことはなかった。

強制的なストーリーやミッション、勝負やゲームオーバーといったひりつく概念のない「どうぶつの森」の心地良さに浸った私は、何の根拠もなく「リリアンちゃんにはそのうち会えるでしょう」とのんきに構え、波打ち際の貝殻を拾い、海でスズキを釣り、揺らした木から落ちてきたハチに刺される日々を送っていた。

一応、島を管理するたぬきには早々に釘は刺していた

そんな私が代表島民を務める島の名前は、チョコレーとう
大変ベタではあるが、チョコレート好きの自分らしい名前で大変気に入っている。しかしこのチョコレーという響き、なんとなくお洒落に聞こえるし、どこかの国の言語に存在しているのでは? そう思い、意気揚々とGoogle検索した私の目の前には、原ゆたか先生作の絵本「プカプカチョコレー島」シリーズがずらりと表示された。

小学生時代、図書室でかいけつゾロリシリーズの棚に狂ったように代本板を差し込む子どもだった私は、なるほどな、と頷いた。
私の魂の底には、ゾロリイズムが流れている。

チョコレー島で木を揺らして初めて落ちてきた家具がこれ(カカオの植木)だったので、運命を感じている図

そんな私が本格的に離島ツアーを開始したのは、2020年の8月下旬だった。
その頃になると、このシリーズに付き物のマイホームにまつわる借金もあらかた返済し終わり、金策以外にも思考を割く余裕が出てきていた。ただ、実際のところ、リリアンちゃんに対する「そのうち会えるはず」という意識には特段の変化は訪れていなかった。

まあ、マイルもやたらと貯まっているし(40万程度と記憶している)、諸先輩方もすなる離島ツアーといふものを、我もしてみむとてするなり。

そんな軽い気持ちでチャレンジした初回の離島ツアーは、合計20回。
リリアンちゃんに出会うことはできなかったが、自分の島にはない植物の発見や、初めて出会うどうぶつたちとの交流に、何とも言えないわくわくした気持ちと多幸感に包まれたのを覚えている。

ツアーの感想について、私は当日のツイートでこんなことを言っていた。

20枚だとリリアンちゃんには辿り着けなかったな〜

https://twitter.com/amber2551910/status/1299689953643786241

辿り着くわけがないだろ!!!!! 20枚で!!!!!!!!!!

この、非常にのんきなプレイヤーが、これからその100倍以上の離島の土を踏むことを知っている身としては、哀れみすら感じる。
前述のとおり、あつ森で推しに出会う方法はいくつか存在している。それらの中で私がなぜこの離島ツアーを選択し続けたかと言えば、何のことはなく、「それが最初に実行した方法だから」というほとんど刷り込みのようなものだった。その決断が、果てしない道に続いていることも知らず。

かくして、大した覚悟もないまま、私は離島ツアーという修羅の道に足を踏み入れたのだった。

マイルが足りない

繰り返しになるが、離島ツアー1回につき、ゲーム内ポイント2,000マイルと引き換えに入手できるマイル旅行券が1枚必要となる。
100単位で離島ツアーを繰り返していると、すぐにマイル貧乏に陥ってしまう。それは私も同様で、40万マイルあった貯蓄はすぐに底を突いた。

いざ離島ツアーのチャンスが訪れたとしても、マイルがなければ意味がない。私は本格的にマイル貯蓄へ動き出すこととなった。

マイルを貯めるためには、ゲーム内で定められたミッションをこなしていく必要がある。一度に数千マイルほどを獲得できる大型ミッションもあるものの、それらは「家のローンを払い終わる」「季節のイベントに参加する」など主に単発で、マイルの受け取りには回数制限があるというものが多い。

そのため、基本的にマイルは「たぬきマイレージ+」と呼ばれるデイリーミッション形式の方法で貯めていくこととなる。このミッションで得られるマイルは100〜500と少なめではあるが、発生数に上限がないため、回数をこなせばどんどんマイルが貯められる。

「たぬきマイレージ+」のミッションの一例

効率的にマイルを貯めるため、私は島の景観を犠牲にすることを選んだ。
というのも、デイリーミッション「たぬきマイレージ+」には頻繁に出るミッションがあった。5,000ベル以上の物品の購入/売却、5個以上の果物の売却、道具や家具のDIY、木の伐採/植樹、花を植える、などがそれにあたる。

それらのミッションが効率的に行われるよう、私は島の商店の前に、高く売れる魚、虫、化石などを密輸業者のごとく大量に並べていた。

また、果物も5個単位でまとめて地面に置き、「果物を売却する」ミッションが出た瞬間に拾って、商店前の買取ボックスに放り込めるようにしていた。買取ボックスは、商店でたぬきの店員と対面して売るよりも2割安く買い取られる仕様なのだが、商店に入店/退店する手間、店員と会話する時間を省くことができるため、私は基本的に売却ミッションの品物は常にボックスに放り込んでいた。
空港のカウンターにいくら札束を積んでも、マイル旅行券がなければドードーは水上飛行機に乗せてはくれない。金よりマイルである。

また、DIY(木や石などの材料を用いてのアイテム作成)を行うミッションが出た場合に備え、材料を作業台の周りに散乱させ、いつでも必要なものを拾って使うことができるようにしていた。
島の緑化ミッションに必要な木の苗、花の種も同様に、基本的に地面に直置きである。

それらの工夫はマイル貯蓄のためには効果抜群だったが、島の景観的にはかなり眉をしかめられるものだったようで、役場に顔を出すといつも、サポートキャラクターのしずえさんから「島全体が物で散らかっているとの報告を受けています……」と悲しい顔をされていた。

役場職員のしずえさん(24時間勤務)

ああ、いつもプレイヤーの快適な島ライフを献身的に支えてくれるしずえさん。島を密輸業者のシノギの倉庫状態にしてごめんなさい。
心の底から申し訳なくはあったが、島をきれいにしていても空からマイルが降ってくるわけではないので、私はいつまでも商店の前を密輸業者状態にし続けていた。

「密輸業者状態が恥である」という意識はあったので、ほとんど当時のスクリーンショットは残っていなかったが、奇跡的に残っていた1枚(背景に2段積みの水槽・虫かごが見える)

そして日々のミッションクリア以外にも、他のあつ森プレイヤーの皆様とのお取引も、マイル旅行券入手のためには非常に重要な手段だった。
ゲームプレイの中で入手したDIYレシピや家具など、自分にとっては重複などの理由で不要なものであっても、求めているプレイヤーがいる場合がある。他プレイヤーとのオンラインでの交流で、レシピや家具をお譲りするのと引き換えに、マイル旅行券をいただくという貴重な機会が多々あった。

果ての見えない旅の途中、たくさんの心優しいプレイヤーの皆様に、本当にお世話になった。改めて御礼を申し上げたい。

391人のうち、1人に出会う確率は?

コツコツ貯めて引き換えたマイル旅行券を爆速で消費していた私は、ふと、そもそもリリアンちゃんに会える確率はどのくらいなのか、と疑問を持った。

その疑問を解消したかったが、ひとつ重大かつ単純な問題があった。
私は数学が苦手だ。
レシピを見ながら料理をしているときに、水の○パーセントの量の塩を加えよ、と言われた瞬間に思考が止まってしまう。世界は数字でできていることを、壁にぶつかるたびに新鮮に思い出す。

ごめんなさい、高校3年生時の担任の先生。担当教科が数学だった先生。
三者面談で惨憺たる数学の成績を見た母が「先生の担当教科は何でしたっけ」と冗談で尋ねたとき、「……国語です」と嘘をつかせてごめんなさい。
先生、ベクトルのベの字もわからなかった私にも優しかった先生。
先生、お元気ですか。私はいま、離島にいます。

苦手なことばかり考えていても仕方がない。「欠損を許せ」という先人の言葉もある。苦手なことを無理して自分でやる必要はないのだ。私が苦手なものを得意としている人に頼ればよい。
私は迷わず、Googleで「あつ森 離島 どうぶつ 確率」で検索した。ビバ、ユビキタス社会。

表示された記事を手当たり次第に読む。
そのうち、離島で出会うどうぶつについて、公式から明言されているわけではないものの、様々な検証を経た上でほぼこれで確定であろう、とされている情報に辿り着いた。ありがとう、頭のいい人たち。
あつ森プレイヤーの間では、14時台あるいは16時台の離島ツアーでレア島民が出やすいという言説も流布されていたが、どうやらその説も既に否定されているようだ。

この時点で、あつ森に登場する島民候補のどうぶつは全部で391人
離島ツアーの選出の確率について、私はてっきり、単純に382人(全どうぶつ391人から現在自分の島に住んでいる9人を除いた数)から1人がランダムで選ばれる1/382の確率なのではと思っていたのだが、どうやら違うらしかった。

海外のかしこプレイヤーが解析してくださったらしいところによると、離島で遭遇できるどうぶつは、まず、ネコ・ウサギ・イヌ……などの全種族35種類のうちから1種類が選択される。そして、その種族内から1人のキャラクターが選択される、という二段階の流れであるとのことだった。

つまり、リリアンちゃんと出会う確率は、まず種族35種類からウサギが選択される確率。その後、ウサギ島民20人の中から1人が選択される確率。

1/35×1/20 ≒ 0.00142 ≒ 約0.142パーセント

しばらく悩んだ末に辿り着いたこの数字を、ためつすがめつ眺めたあと、私は「なるほどね!!」と言った。なるほどとしか言いようがなかった。
ウサギ種族はリリアンちゃんを含め、全部で20人。これは23人いるネコ種族に次いで、2番目に多い数字である。そもそも狙いの種族が選ばれる確率すら3パーセントに満たないというのに、そこから更に20分の1。
約0.142パーセントの、1点狙い。

今更ながら、私はとんでもないことをやろうとしているのでは?
そんなゾッとする事実に気づいたころには、既に離島訪問数は4桁を超えていた。遅っっっっせ〜の。

推しに出会える確率について、計算上の正確な数値を把握して愕然とするよりうんと前に、友人と離島ツアーについて話したことがあった。
あつ森プレイヤー仲間でもあり、数学に造詣が深いその友人は私の愚痴半分の離島ツアー報告を聞いたあと、さらりと「確率は収束するからね」と言った。

その言葉は、驚くほど私に響いた。ドカン、と鳴った。
浅学ゆえ数学的な噛み砕き方こそできなかったものの、私は友人のその言葉を「あなたの日々の歩みは、決して無駄になどならない」という強く温かなメッセージとして受け止めた。
そしてその言葉は、ここからも遥か続く離島との戦いの日々の中で、嵐の中の灯台のように、常に心の寄る辺となってくれた。

大型アップデートへの動揺

訪問した離島の総数が4桁にのぼった頃、自分のとある変化を感じたことがあった。

その日はいつものように離島ツアーに繰り出していた。
水上飛行機で離島に到着してすぐ、パイロットのドードーが爽やかに放つ「グッドラック!」を聞きながらどうぶつを探しに走り出す。試行回数を重ねれば、自然と取るべき行動も見えてくる。この島の地形であれば、どうぶつは右奥エリアの川向こうにいるはずだ。

その確信のとおり、Switchの画面右上をどうぶつの足が一瞬掠めた。本当に一瞬だけ見えた、ベージュの肌、足先に向かって焦茶色のグラデーション。
どうぶつを見つけた、と思ったとほぼ同時、私の口からは「ヴァネッサ」という名前がこぼれ落ちた。

果たして、そこにいたのはオトナ系オオカミ島民のヴァネッサだった。
時間にすれば1秒かそこら。見えたのはどうぶつの足先だけ。そんな僅かな断片でどうぶつの正体を言い当てた自分に、正直引いた

服装も家もオシャレなヴァネッサちゃん 画像引用元:https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/namelist/m04.html

ヴァネッサとは自分の島でともに暮らしていた時期があるため、正直、他のどうぶつよりも見慣れていた部分はある。だとしてもである。
自分の脳みその極めて浅い部分に、400近い数のどうぶつたちの外見と名前と性格がミチミチに詰まっていることをまざまざと思い知らされた出来事だった。


そんなあつ森漬けの日々を過ごしていた2021年10月。11月の大型アップデート内容を紹介する「あつまれどうぶつの森 Direct」の放送があった。

普段はゲームの情報配信をリアルタイムで視聴することは少ないのだが、今や仕事以外の日々の空き時間はほとんどあつ森のマイル稼ぎと離島ツアーに費やしているので、これはもはや、観ないという選択肢はなかった。

実際に放送が始まると、単純な私は離島ツアーで負わされた傷のことも忘れ、どんどん発表される新要素に大喜びしていた。
所持アイテムの収納拡大!嬉しい! 料理の追加!嬉しい! 商店街追加!カメラアプリ進化!すごい!!嬉しい!!!!!

特に、放送前に予告がされていた内容ではあったが、ハトのマスターが営む喫茶「ハトの巣」の実装が正式に発表されたことは、飛び上がるほど嬉しかった。脳裏に、過去作をプレイしていた頃の思い出が蘇る。居心地の良い店内、無口なマスター。ゆったりとした時間。

そうだ、私は、「どうぶつの森」が好きだったのだ。
そんな、物語の最後に浄化される悪役のような感情が、私の胸に去来していた。

もはやこれは、別のゲームが1本追加されたのと同じくらいのボリュームでは? 放送内で発表された覚えきれないほどの新要素に、私はそんなワクワクした気持ちを抱えていた。11月が待ちきれない。

だが、その高揚は、続けられた放送により、一瞬でひっくり返されることとなる。
島でのゲームプレイ映像と、「今回ご紹介した以外にも、きっと様々な場面で、暮らしの変化を感じられることでしょう」という穏やかなアナウンス。そして。

あつまれ どうぶつの森 Direct 2021.10.15:https://youtu.be/cr3uwnFLH8s (11:55)

画面に映っていたのは、今までに見たことがない、ウサギの島民。
その瞬間の動揺を、私はリアルタイムでツイートしていた。

そう。
大型アップデートで、新しく追加されるどうぶつがいる。そしてその中にウサギがいる。出会う方法が通常のどうぶつと同じく引っ越し・キャンプ・離島であるのなら、リリアンちゃんと離島で出会う確率に変動が生じるのだ。

その後の生放送内で紹介されたamiiboカード第5弾のラインナップで、アップデートで追加されるどうぶつが全部で16名、うちウサギ島民は先ほど私を大いに混乱させてくれたミッチェルくん(当時はミッチェルちゃんだと思っていたが、実際はぼんやり系男子だった)ただ1人であることが確認できた。

あつまれ どうぶつの森 Direct 2021.10.15:https://youtu.be/cr3uwnFLH8s (22:18)※左上のサルとマナティーのどうぶつは有料追加コンテンツに登場するサポートキャラクター

アップデート前に離島ツアーでリリアンちゃんと出会える確率は、ウサギ島民が20名であることから、1/35×1/20 ≒ 0.00142 ≒ 約0.142パーセント
アップデートで追加されるミッチェルくんが、もし離島ツアーで遭遇する場合、リリアンちゃんと出会える確率は、1/35×1/21 ≒ 0.00136 ≒ 約0.136パーセント

下がっている!! 約0.006パーセント下がっている!!
こんな程度は誤差の範疇、最早おまじないのレベルと言われればそこまでだが、こちとら1,000とウン百回以上も空振りをし続けているのである。もう腕はパンパンだ。わずかであれ、確率が下がるのは精神的にも堪える。

大型アップデート前に、なんとかしてリリアンちゃんに出会いたい。
浄化されかけた気持ちは、再び離島ツアーへの火で燃えていた。世間のあつ森プレイヤーの大半がアップデートへの期待で沸き立つ中、たったひとりで丸きり違う方向の決意を抱きながらも、私にできることと言えば、今日もひたすらにマイルを貯めることだけだった。

2,000島の大台

離島ツアーを始めたのは2020年の8月。リリアンちゃんに会えないまま1年以上が経過し、2021年の秋を迎えた。
その間に我がチョコレー島の環境は最高評価の五つ星を獲得し、ガーデニングの中で最も交配が難しいとされている青バラも咲いた。いつでもリリアンちゃんを迎えられる、万全の準備が整っていると言ってよかった。

奇跡のような確率で咲く青いバラ、長い道のりだった

私はこれまでの離島訪問データをエクセルで取りまとめていたのだが、そのシートの1番左上のセルの数字がどんどん増えていくのを、戦々恐々として見ていた。
1,500、1,600、1,700、1,800……
そう、今までに訪問した離島の総数である。
2,000という大台まで、もう間もなくというところまで迫っていた。

私は以前から、2,000島という大台についてこんなことを言っていた。

これは「さすがに離島訪問数が2,000を超えることはないだろう」という前提に基づいたジョークめいた気持ちと、「実際に2,000を超えてしまったときに何か支えがないと心が保つか不安である」という危機意識の両方がないまぜになった心情の吐露だ。
その点、ホールケーキは、心の支えとして申し分がない。暴力的なまでのハレの日の気配をまとっており、実際の心身の状態がどうであれ、目の前に出されたら反射的に脳が「祝いの席だ!」と認識するだろう。

そうと決まれば善は急げである。あらかじめ近場のケーキ屋さんを見繕っておき、自分の島から引っ越したい住民が発生、つまり次の離島ツアー日程が決まってすぐにホールケーキを注文した。注文可能な最小サイズが4号(2~3人用)で、一人暮らしの自分にはやや大きいが良しとしよう。
デコレーションの文字は「2,000島突破」にしようと思っていたのだが、小心者ゆえに直前に日和って、「祝2,000回」と依頼した。

離島ツアーの日、注文していたケーキを受け取って家に持ち帰った。
助手席にケーキの箱を乗せていると、いつもより運転が優しくなる。
用意した本日分のマイル旅行券は190枚。マイルに換算すると実に38万マイル。デイリーミッションで言うと、浜辺に流れ着いている貝殻を25,400個弱売却すると稼げるマイル額だ。

いつもより若干厳粛な気持ちで、離島ツアーの回数を重ねていく。
ぼんやり系アヒル男子のフォアグラくんに初めて遭遇した。いつ見てもすごい名前だな、と思う。どうぶつの森には食べ物の名前のキャラクターが多いが、その中でも群を抜いて「いいのか?」と思うのが彼の名前である。

そしてとうとう、2,000島目に、辿り着いた。

2,000島目の記念すべきどうぶつは、ハキハキ系コアラ島民のオズモンドくん(7回目の遭遇)
あつ森からデビューの超絶人気どうぶつ、ネコ島民ジャックくんにも初めて遭遇した

リリアンちゃんに出会えないまま離島ツアーの数が2,000島を超え、実際のところ、私は奇妙な達成感すら感じていた。これこそ、ホールケーキを心の支えとして準備していた成果かもしれない。
ケーキを箱から取り出す。依頼の通り、チョコレートのプレートには「祝2000回」の文字が書かれている。

リリアンちゃんぬいぐるみとともに
My Nintendo Store:https://store-jp.nintendo.com/list/goods/general-good/NSJ_8_ALAGW.html

思った以上に「祝い」感が強い画像となり、ホールケーキの力を思い知る。
2,000島という数字の大きさの比較として、日本の無人島の数を調べたら2,000どころか6,000を超えているらしい。現実はまだまだ遥か上にある。

ケーキに舌鼓を打ちながら、エクセルのデータを見返す。
2,000島を突破した離島ツアーを終えたとき、まだ私が離島で出会えていないどうぶつは、391人中わずか4人となっていた。その4人の中にリリアンちゃんが含まれているということ、改めて見ても相当の確率である。

記念に「2,000回離島を訪問してリリアンちゃんに出会えない確率」を明確な数字で割り出そうとしたら、Eがどうのと出てきたので私は怯えた。どうやら数字の桁数が大きいと、表示に際して支障が出るため、Eが登場してしまうらしい。そうか……。
数学的な理解はできなかったが、明確な数字で割り出すことは無理だということは理解できたので、私はそっと諦めた。

2,000島を突破した離島ツアーの翌日、島の売地は成約済みとなっていた。
私は、島民が自然に「引っ越したい」と言い出すのを待ってから離島ツアーに取り組んでいるため、次のツアー実施までは最低でも2~3週間かかる。今日は10月24日。間もなく訪れる11月5日の大型アップデートまでに、リリアンちゃんをお迎えできないことが確定した瞬間だった。
そうか、と思いながら、やはり食べきれずに半分残していたケーキに今日もフォークを刺す。口に運んだケーキはやはり甘く、まごうことなきハレの日の味がした。

チョコエッグチャレンジ

2021年12月。冬だ。あつ森の世界でも、島中が銀世界である。現実世界では大寒波の影響を受けている北国住まいであるので、島では毎朝早起きして雪かきをする必要がないのがありがたい。

翌日に離島ツアーを控えたある日、(現実世界の)コンビニエンスストアに立ち寄った私の視線は、レジ横の商品に引き寄せられた。
そこにあったのは、どうぶつの森のチョコエッグ。側面に示されたラインナップを見ると、推しがアイドルスマイルを見せているではないか。

リリアンちゃんは生首でもかわいい

迷わず、その場に陳列されていた分を全部買うことにした。レジ打ちをしていただいている最中に数えたら、11個あった。これが20個だったら20個買っていただろう。私はそういう性質をしている。

ラインナップはリリアンちゃんを含め、全部で20種類。
購入した11個からリリアンちゃんが出てくる確率はさっぱりわからないが、最終的に出るまで開ければ100パーセントであることは間違いない。

チョコエッグを買うのはほとんど初めてだったので、どのように中身を取り出せばいいかわからず、1個目はつやつやのチョコレートをとりあえず丸ごとかじった。思いのほか軽い歯触りでチョコレートは崩れ、中から青と黄色のカラーリングのカプセルが現れる。なるほど。そしてチョコレートが美味しい。
2個目以降は、徐々に指の力加減を調整し、チョコレートをきれいに真っ二つに割ることができるようになった。今後の人生で使い回しのきかないスキルというものは、多ければ多いほど面白い。

11個のカプセルが目の前に並ぶ。
開封すると、2~3分割にされたフィギュアと説明書が入っている。ひとまず5個を開けた時点ではリリアンちゃんは出なかったが、どのどうぶつもとても出来が良くて感動した。

初期住民のハムスケ(一番左)、初キャンパーのジュン(一番右)が出て嬉しい

残り6個。中身を順番に確認していく。

あ!!!!!!!!!!

出た!!!!!!!!!!

分割されたパーツを、急いで組み立てる。
リリアンちゃんの大きな瞳、ピンと長いまつげ、ピンク色に色づいた頬が見事に再現されている。たまらなくかわいい。

しかも、手にしているフルーツがリンゴであることが私の喜びを増幅させていた。あつ森において、それぞれのプレイヤーが暮らす島には自生するフルーツが割り当てられており、「オレンジ」「さくらんぼ」「ナシ」「モモ」「リンゴ」のうち1種類がランダムに選ばれる仕様である。
そして、私が代表島民を務めるチョコレー島のフルーツが、リンゴなのだ。

つまりこれは、将来的にリリアンちゃんが我がチョコレー島に来たときの姿と判断してよろしいでしょうか。判断、します。ありがとうございます。

スタンプで隠しているのはシークレット

離島ツアーでの空振りに慣れていたため、まさか本当に出るとは、という気持ちで、リリアンちゃんのフィギュアを眺める。

じわじわと喜びを感じた。
離島ツアーも2,000を超え、いよいよ本当にリリアンちゃんと縁がないのではないかとも思い始めていた。そんなとき、こうして形は違えど手元にリリアンちゃんがやってきてくれたこと。これからも、ゲームも現実も、前を向いて生きていく意欲が湧いた。

その日は、枕元に置いたリリアンちゃんのフィギュアを眺めながら眠りについた。明日も離島ツアーが待っている。

今思えば、これは予兆だったのかもしれない。

2021年12月3日

チョコエッグでリリアンちゃんを引き当てた翌日、2021年12月3日。
私はいつものように離島ツアーに勤しんでいた。前回のツアーでは、今までで最大の210島を連続訪問して見事に空振りだったが、その後またコツコツとマイルを貯め、旅行券は100枚程度準備できている。

回数を重ね、本日30回目の離島訪問記録をつける。
30回のうち、ふつう系アリクイ女子のビーフンちゃんと初めて出会った。新しいどうぶつと出会うのはやはり嬉しい。ビーフンちゃんはどうぶつの森過去作に登場しており、大型アップデートであつ森に再登場した8人のうちの1人だ。(やはり想像通り、11月の大型アップデートで追加された16人のどうぶつたちに出会う方法は通常のどうぶつと同様、引っ越し・キャンプ・離島だった。)
彼女をはじめとした再登場の8名が推しの人にとって、今回のアップデートは本当に嬉しかっただろうな、と微笑ましくなる。

時刻は22時過ぎ。まだ残りのマイル旅行券は70枚近い。島の飛行場から発ち、離島でどうぶつを確認して島に戻る一連の流れの所要時間を2~3分と考えると、あと4時間程度はかかるものとして見ておく必要がある。
幸い、今日は金曜日。明日は仕事が休みだから、ある程度夜更かししても支障はない。
そう考えながら、私は通算2,321島目の離島に旅立った。




そこに、彼女はいた。

開口一番、「うそうそうそ」と言ったのを覚えている。

リリアンちゃんの姿を視認した瞬間、今まで何百回も使用してきたSwitchのスクリーンショット機能(物理ボタンを1回押すだけ!便利!)のことが、なぜか頭からすっぽりと抜け落ちた。震える手で掲げたスマートフォンで、ゲーム画面を撮影した。それが、上記の写真だ。
胸と喉の間のあたりで、心臓がドッドッドッと派手な音を上げて飛び跳ねていた。現実じゃないかもしれない、と思った。なぜか正座してコントローラーを握り直した。

ゲーム画面の中、彼女が歩くたびに、オレンジ色の長い耳がぴょこぴょこと揺れていた。

離島に流れる川を、飛び越えた。
近づいて、話しかける。話しかけるには、彼女のほうを向いて、Aボタン。
彼女がこちらを向く。
ずっとずっとこの日を待っていた。

会話を終えると、リリアンちゃんは楽しそうに離島の散策に戻る。その姿を見つめながら、私は放心していた。
離島で勧誘したどうぶつは、翌日に島に引っ越してくる。その流れは今まで何度も繰り返してきたというのに、どこか信じられない気持ちでいた。
チョコレー島に、リリアンちゃんが引っ越してくる? 本当に?

島への移住を提案した私に、リリアンちゃんは、こうも言ってくれていた。

胸が、じん、とした。
脳裏に過ぎる、過去にリリアンちゃんと一緒に暮らしていた、あの日々。
私の手落ちで思わぬかたちで終わってしまったけれど、あの日々を、あなたも楽しいと思ってくれていましたか?

楽しい生活にするよ、絶対に。
そう誓って、私は2,321島目の離島を後にした。

出会ってくれてありがとう

上記の通り、2021年の12月3日にリリアンちゃんと出会い、私の暮らすチョコレー島にお迎えすることができた。
このnoteはその直後から書き始めたのだが、1年以上掲げていた大きな目標を果たして緊張の糸が切れてしまったせいか、最後まで書き切ることができないまま、数ヶ月間放置してしまっていた。

そんな中、2022年の1月30日に誕生日を迎えた。
プレイヤーの誕生日をキャラクターに祝ってもらえる文化は様々なゲームに実装されているが、あつ森でも島民が誕生日を祝ってくれる。当然のことながら、リリアンちゃんが自分の島にいる誕生日は、あつ森をプレイし始めてから初めてだ。

ゲームを起動するとすぐ、オオカミ島民のロボくんがバースデーパーティーの会場に誘ってくれた。風船やガーランドで華やかな飾り付けをしたロボくんの家で、島民たちがクラッカーやケーキで祝ってくれた。
ああ、正しいハレの日のケーキって……こうだったんだ……。

嬉し~~~~~~~~~~い
仕事へのストレスを溜めていた代表島民を気遣ってか、手製のピニャータ(画像上中央)をタコ殴りさせてくれた気の利く島民たち

心温まるパーティーを開いてくれた島民たちに礼を言い、外に出る。屋外で出会った他のどうぶつたちも、口々に祝いの言葉を述べてくれる。
私は幸せ者だ。心が温かくなるのを感じながらも、私は胸にほんのりとした焦りを抱えていた。

リリアンちゃんが、島のどこにも見当たらないのだ。
島民たちは基本的には自宅周辺や役場のある広場周辺にいることが多いが、自由に島内を歩き回るので、時々こうして見失ってしまうことがある。
商店、ブティック、浜辺。あちこち探し回り、影も形もないことを確認したのちに、私は「まさか」と思いながら、とある建物に足を向けた。コントローラーを握る手に汗が滲んでいた。

チョコレー島の小高い場所に建っている、石造りの建物。フクロウのフータが館長を務める、博物館である。

博物館のロビーから右に入ったエリアに、足を踏み入れる。
私がこの島で釣った淡水魚たちが飾られた部屋に、彼女はいた。

画像の中央、手前のひょうたん型水槽越しにいるリリアンちゃん

前述のとおり、どうぶつたちは自由に島の中を歩き回るため、博物館で展示物を鑑賞していることもままある。だから、リリアンちゃんが博物館にいても、さほど驚くことではない。

けれど。
私は、今日この日、ここでリリアンちゃんに会えたことが、本当に嬉しかった。

冒頭の章で記載したとおり、リリアンちゃんとは3DSの「とびだせどうぶつの森」時代に長く同じ村で暮らし、たくさんの交流を持った。
その日々の中で、私が村長を務めたイーハトーブ村のリリアンちゃんは、なぜだか、博物館の魚展示エリアにいることが多かったのだ。

とび森時代の思い出の1枚

そんなリリアンちゃんと、あつ森で初めて過ごせる自分の誕生日に、思い出の魚展示エリアで出会えたこと。
大変勝手ながら、私はこれを運命だと思うことにした。

私が「あつ森」で推しと出会うまでの記録は、これで一区切りとなる。
私の離島ツアーを応援してくれた友人や、同じコミュニティの皆様、あなたがたの声援のおかげでここまで頑張ることができた。本当にありがとう。

そしてもし、この記事を読んでくださった方の中に、私と同じくあつ森で離島ツアーを2,000回以上試したプレイヤーがいらっしゃれば、ぜひ連絡をいただければ嬉しく思う。
心の中で握手をしたあと、ぜひともあなたの推しの話を聞かせてほしい。
2,000という数を超えても出会いたかった、あなたの素敵な推しの話を。

最後に、素晴らしいゲームを届けてくださった「あつまれどうぶつの森」の開発スタッフの皆様、リリアンちゃんという存在をこの世界に生み出してくださったキャラクターデザインご担当の池側紀子さんに、心から感謝申し上げます。

2021年12月3日、彼女と出会った離島にて

おまけ:離島ツアー全記録

2,321回の離島ツアー結果を最後におまけとして掲載しようと思っていたのだが、当たり前ながら爆裂に字数が増え(おまけだけで2万文字あった)、スクロールバーがかわいそうなくらい縮こまってしまったので別記事にまとめることとした。

お暇な方、どうぶつたちの名前を眺めるのが趣味の方はぜひどうぞ。
おまけ:離島ツアー全記録

そしておまけのおまけとして、せっかく2,321回の記録を全て取ったので、離島のどうぶつの種族ごとの遭遇回数の分析を最後に行うこととする。
全種族35種類のうちから1種類が選択されるとされているため、理論値では1種族ごとの出現率は1/35≒2.86%になるはずだ。

最も出現率が高いのが、アリクイの3.53%(理論値との差は+0.67)。
最も出現率が低いのが、サイの2.20%(理論値との差は-0.66)。

そりゃ~2,000回以上もやればそうなるわいという話かもしれないが、最多も最少もちゃんと理論値の前後1%以内に収まっている。これが友人に言われた「確率は収束する」ということかと、数学と没交渉になって久しい私は少し感動した。離島ツアーの確率を分析している研究者さんがいらっしゃったら、どうぞ遠慮なく引用していただきたい。

そして一瞬、ほんの一瞬だけ、全種族の出現率が理論値の2.86%に揃うさまを見たいという好奇心が鎌首をもたげたが、絶対に後悔するに決まっているのでやめることにした。
好奇心は猫をも殺すし、離島にウン万回足を運ぶ未来を運びかねない。

さて、私はあと1ヶ月で訪れる5月9日のリリアンちゃんの誕生日の準備をしなくてはならないので、ここで筆を置かせていただくこととする。

次回、「「あつまれどうぶつの森」で推しに本当に似合うコーディネートを見つけるためにパーソナルカラー診断を行った」でお会いしましょう。

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