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寝台列車に乗って出雲・松江へ行く旅 1日目

急な発熱、止まらない咳…
例のウイルスに罹患した恐れがある場合、感染拡大を避けるため社会人の皆さんは出社を控えることだろうと思う。
そんな日は、会社に休みの連絡を入れた後にカレンダーを見て、1ヶ月後が何曜日なのかを確認してみてほしい。
それが金曜日だったら、今の貴方は大事な大事なサンライズチャンスを目前にしている。

サンライズチャンスとは:
現在、国内で唯一定時運行されている寝台列車「サンライズ出雲・瀬戸」の金曜夜出発の切符を降って湧いた病欠休暇でワンチャン狙える状態。

※個人による造語

競争率の高い日程でサンライズの寝台を予約するには、出発日1ヶ月前の午前10時きっかりにネットから予約orみどりの窓口に行く必要がある。
このため大人気の金曜夜出発を狙う場合はたいてい予約段階で有給休暇を1日消費する必要があり、(予約取れないかもしれないのに休むなんて…)とウジウジしてしまうのが人情だが、休むことが確定してしまい外にも出られない状況を逆手にワンチャン狙うとなれば意気込みも違ってくる。
ピンチをチャンスに。解熱剤と咳止めを飲んでウイルスと闘いながらもう一つの戦いにスマホで参戦しよう。
このようにして私は金曜夜出発のサンライズ出雲の個室寝台の切符を手に入れ、それからの一ヶ月は何があっても(私はサンライズの切符持ってるしな…)という一点で心身健康に過ごせた。

出発当日は、職場から帰宅して簡単に夕食とシャワーを済ませてから横浜駅へ向かい、6番線でサンライズ出雲の到着を待った。
待っている間は謎の優越感が止まらず、(みんなはこれから家帰るの?私はサンライズだけど)と心の中でホームにいる全員に話し掛けていた。
22時15分。サンライズがその姿を見せる。

ソロ寝台は最安値・最狭の個室

個室の入口でひとり「キャー狭い!嬉しい!🥰」とか思っている間に、既に列車は横浜駅を滑り出していた。
室内の電気を消してみると車窓にはすごい勢いで移り変わっていく夜の街が出現した。

お布団の中で寝っ転がりながら夜の街を疾走するなどという経験は寝台車でしかできないだろう。
こんなのエモくて楽しくて寝られる訳がない。

今一番好きなコミック「星旅少年」をこの個室で読む。寝台列車というコンテンツが好きな人ならこの作品を好きになると思うし、逆もまた然り。

寝る前にトイレに行った時、ラウンジや廊下で寝ている人達がいて(密航者?)と思ったが刺激しないよう静かにスルーした。

寝るとは言ってもお世辞にも寝心地が良いとは言えない環境だ。モゾモゾしている間になんとなく朝が来てしまうだろうなと思っていたが、なんやかんや3時間くらい寝た。
この短い眠りの中で私は「活字オンリーの夢」という初めての経験をし、シームレスに現実に戻ってきてから「エッ今のは思考じゃなくて夢!?」とたいそう驚いた。

時刻は朝5時。地元・神戸を通過する。

枕の行儀が悪い
この天文台は東経135度子午線の目印

5時半を過ぎるといよいよ外が明るくなり、窓際に置いたものが何でも映えるようになるので、持ち込んだ物を色々撮った。

こういうのはだいたい読んでから行く
ちょっと潰れた朝ごはん
いつも持って行くフィルムカメラ

日の出から少し経ったぐらいの空色はこの世から全ての敵が消え去ったような美しさだった。

時刻は5:40頃

飲料は1リットルのいろはすを持ち込んだが、適量だったと思う。

7時頃に岡山駅でサンライズ瀬戸との切り離しが行われていたが、私は引きこもって過ごした。
このタイミングで下車して広島などに向かうような客も一定数いるらしい。

しばらくして顔を洗うために洗面スペースへ。
途中にあるラウンジに人がいないタイミングだったので少しだけ座っておいた。

遅寝早起きのツケが来て、いよいよ島根に入ったタイミングで一番眠くなったが、楽しみにしていた宍道湖の風景はどうにか拝んだ。

横浜から約12時間の旅を終え、サンライズ出雲は定刻通り10時に出雲市駅へ到着。

個室に自分だけの車窓があるという空間は本当に最高だったが、正直楽しすぎて疲れた。
電源があるので、スマホを充電したまま無限にシャッターチャンスを窺い続けてしまう。おかげで未明から出してはいけない量のアドレナリンが出てしまい、旅行初日にして既にやりきった感を覚えていた。



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