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バルーンフェスタ中止! ほぼ観光しない福岡・佐賀旅
世の中には「都道府県別魅力度ランキング」という大変失礼で下世話なランキングが存在しているのだが、九州にある佐賀県という小さな県は毎年その底辺をウロウロしているので有名だ。
もちろんこのランキングの底辺だからといって、魅力が無い県だという見方はあまりに短絡的だ。
だが、要するに佐賀に魅力が無いとは言わないが相対的に選ばれないポジションにあると言われているのだ。
「良い人だと思うけど自分は付き合いたくない」と皆から言われているようなかなしさを私はそこに見る。
そして、本当に正直に言うと私も付き合いたくはない。佐賀行きか北海道行きの航空券が無料と言われたら迷わず北海道に飛ぶ。
そんな佐賀だが、秋になるとモテ期が到来する。
11月の初旬だけは、普段なら長崎のハウステンボスとかにうつつを抜かしている人々がにわかに隣の弱小県に熱視線を向け始めるのだ。なぜならば佐賀インターナショナルバルーンフェスタが開催されるから…!
普通に生きていたら眼科の眼圧検査の機械でしか見ることがないあの気球が大集合するのだ。
こうなると、アクセス自体はけして悪くない佐賀に大量の人間が流入する。それに商機を見出した食品事業者も大量に駆け付けるし、JR九州は列車を大幅に増便するばかりか臨時の駅まで用意するしでとんだお祭り騒ぎとなる。
そんなお祭りに…行きたかったな…
まさかの台風接近により今年は全日程でイベント中止に。
大雨の予報で会場の河川敷のコンディションが歴代最悪の見通しとなったため、10/31の開幕直後に急遽中止が決定されたのだ。
そして私はこの発表時、そうとも知らずに横須賀から船に乗って九州を目指していた———
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そういう訳で、全然目当ての写真が撮れない旅になったのだが逆に珍しい思い出になったのでダラダラ語っていきたい。
10/31夜・東京九州フェリー
私が乗った船・東京九州フェリーは、約21時間で横須賀港と博多港を結ぶ旅客船だ。
夜に乗船して翌日の夜に着くという運行ダイヤなので、別に効率的な移動手段という訳でもない。
単純に船が好きで乗っている人ばかりだと思う。
私の場合はこれに加え、船旅最大の特徴の一つといえる強制デジタルデトックス環境を生かして、買ったものの一向に読む気がせず放置している本を読破しようという思惑があった。
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横須賀のフェリー乗り場には22:30頃に到着。
駅から徒歩で来られる範囲ではあるが、港付近は人通りもあまりないので女子供一人くらいならば拉致しようと思えばできそうな雰囲気があって、ちょっと怖かった。
幸い途中で船に乗りそうな人を見つけたので、2mほどの間隔を保って後を尾けさせてもらった。
出航は23:45で、30分前頃から乗船が始まる。
バルーンフェスタ中止はこの時点で既に速報が出ていたのだが、普通に情報収集を怠っていた私は気付いていない。
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今回予約したのは最安値のA寝台。
東京九州フェリーには雑魚寝席がなく、一番下のランクから半個室空間が与えられる。
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向かい側にも人が来たが、このタイミングでお互いに「アッすみません」と言いながらおざなりに会釈した後は全く顔を合わせることが無かった。
※私の「すみません」には、通路を塞いでいたこととワンチャン誰も来ないかもと期待していたことと相手にも同じ期待を抱かせていた可能性に対する謝罪が込められていた。
出航時間まではとりあえず船内をウロウロする。
慣れている人は揺れない内にさっさと風呂に入っているっぽかった。
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船が動き出すと食堂で夜食が食べられる旨の放送が聞こえてきたので向かい、そばを一杯食べた。
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そばを食べている間にスマホが早くもインターネットから切り離されたが、それも目的の一つだったので私は満足げな顔すらしてスマホを機内モードに設定した。このせいで肝心な情報を丸一日知ることなく過ごす羽目になるとも知らずに。
食後にデッキに出てみると、夜の街は真っ黒な海の彼方へと遠ざかっていた。
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この船には浴場があって湯船に浸かれる。
海が見える露天風呂もあるが、深夜はさすがに何も見えず、代わりに頭上には星が見えた。
就寝時、船はまあまあ揺れていたが不安になる程ではなく、ダイナミック揺りかごという感じだった。
船体が揺れるが船の性能には何の問題もないので安心してほしいという旨の丁寧なアナウンスも3回ほどあったが、ためしに「こんな揺れでひよってるやついる!?いねぇよなあ!?」ぐらい言ってみてほしかった。
11/1・東京九州フェリー
あまり寝た気がしないが、朝になっていた。
食堂の料理の提供時間が限られているので、8時半頃にノソノソ起きて食堂に向かい朝食をとった。
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パンは船内で焼いているのであたたかい
ここからはせっかくの洋上なので、海をチラ見しながら読書していきたい。
窓際に居座ってしばらく本と格闘した。
長らく読む気がしなかっただけあって、本当に体力のいる本だった。気付けばスマホに逃げそうな自分がいるが、インターネットに見放された今、逃げ場はない。休憩を挟みながら取り組んだ。
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主に上の写真にあるなんとも言えない形のイスに座って時を過ごすことになった。
船内にはかなり良さげなラウンジがあったのだが、なぜか眺望ゼロの謎空間と化していたので、ほぼ誰も寄り付いていなかった。
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食堂のランチ営業のアナウンスが聞こえてきたので、機械的に食事へ。
なんとなく学校の時間割で生きていた時の感覚を思い出した。
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アツアツだった
午後も引き続き同じ場所で本を読んで過ごした。
目的の本は無事に読み切ったので、予備の文庫本に手を出している内に時が過ぎる。
ロビーにあるテレビの音がそこそこ聞こえてくるのだが、物騒なドラマか映画をやっていたらしく、定期的にパニック系の凄まじい銃声が聞こえてくるのがシュールだった。
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ディナータイムの食堂は、乗船時間中で最も混雑していた。
満席の場合はフードコートみたいにブザーで呼び出されるシステムになっていて、心理的な負担が少なくありがたかった。
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アツアツだった
船は21時に新門司港に到着。
ここから新幹線の小倉駅まで無料の連絡バスを利用する。バスで隣の先になったご婦人と、お互いに船で食べたものを全部教え合ったりして過ごした。ご婦人も食堂勢だったようだが、食べたメニューは一つも被っていなかった。
小倉駅から新幹線で博多駅へ移動。
この時になってようやくバルーンフェスタの中止に気付いた私は(フーン。じゃあ私って佐賀に何しに行くんだろ)と他人事のように思ってから、さっきのバスでご婦人と「佐賀まで気球を見に行くんです✨」「あら!いいわね🥰」みたいなやり取りをしていた記憶が蘇ってきて死にたくなってきた。
ただ、今回のフェスタ中止はあくまでイベント行事としての中止だ。屋台の出店が無くなったり会場への電車でのアクセスが不可能になるなどの影響はあるが、天候次第で気球の競技飛行は行われる可能性が残っていたため、予定は変更せずに翌日佐賀に向かうことにした。
博多駅から駅近くのホテルまでの道のりは土砂降りの雨で歩道がほぼ水没しており、かなりひどかった。
11/2・福岡
雨の勢いは前日よりやや弱まっていたが、やる気の出ない空模様であることに変わりはなかった。
雨の博多でできることなんて明太子とラーメンを食べることぐらいだろう。
駅前に荷物を預け、とりあえずそれなりの朝食を食べるためマルイの地下にある「天乃」という店に向かった。
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ここからはノープランなので、とりあえず近くのタリーズコーヒーに入って計画を練る。
色々調べた結果、福岡市科学館へ行くことにした。プラネタリウムでも見ようかなと思ったのだ。雨なのでもう観光地とかどうでもいい。
ついでに「特別展「毒」」というのが開催されていたので、それも見学することにした。
この展覧会は、地球上に存在するあらゆる毒について豊富なビジュアルと共に紹介しており、なかなか見応えがあった。
プラネタリウムで上映されている番組はいくつかあったが、一番無難そうな「宙語り2024秋 シン・月世界」というのを見てきた。
だいたいタイトルから想像できる通り、秋の星座の話と月の話を聞かされる。
私はもともと星座というものに対して漠然としたロマンを抱きつつも「ふざけんな笑」という気持ちも同居しているタイプだったが、ここで改めて「うお座」の紹介を聞いたことでふざけんな寄りに傾いた気がする。
「うお座」がどんな形してるか知ってますか?
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これがうお座ですと言われた時、私はなんとなく左向きのエンゼルフィッシュっぽい魚🐠を想像した。星座が生み出された場所や時代に対する考慮はさておき、とりあえずそう見えた。
しかし、星座を考えた昔の人にはこう見えているらしい。
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いくらなんでもさあ、、、
本当に納得できない。どう考えても魚を二匹単位で考える必要が無い。二匹いるにしても形が明らかに不平等なのは一体何。
一応は由来となる神話のエピソードがあるらしかったが、内輪ネタが過ぎるように思う。こんなことを言い出したら星座なんて全部内輪ノリで産出された存在でしかないが、それが現代でも当然の理みたいに居座っているあたり、神話というコンテンツの計り知れない強大さを感じる。
一通り文句を垂れながらもプラネタリウムを楽しんだ後は、バスで移動して一風堂本店にラーメンを食べに行った。
客の5割くらいを外国人観光客が占めており、かなり忙しそうだった。
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もう別に博多ですることはないので佐賀へ移動。
佐賀に向かう途中、駅構内のあらゆる場所でバルーンフェスタ中止が宣告されていて、間違っても気球の飛ばない佐賀などには行かないようにというメッセージ性を感じた。
11/2夜・佐賀
佐賀駅に到着。
駅周りは結構きれいに整備されていて、一丁前にイルミネーションでキラキラしていた。
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駅近くのホテルにチェックインして、駅中の店「CENTRAL BEEF」で買った佐賀県産和牛のローストビーフ丼を食べる。
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旅行先なのにこの日一日何もしていなさすぎて、とりあえずなんか食べとけという気持ちだったので、食後はホテルの一階にあった自販機でブラックモンブランというアイスを買って食べた。
就寝前には、早くも明日午前中の気球のフライトが中止される旨のアナウンスが出ていたので、もう本当に佐賀に何をしに来たか分からない。
ただ、その分疲労も全然覚えていないので、休養だと割り切ることにしてグッスリ寝た。
11/3・佐賀
晴天だが風が強いため気球が飛ばない佐賀で朝を迎えた。
明日の出勤に響かないよう16時くらいには博多からの新幹線に乗る予定だったので、下手に佐賀市から動くこともできない。本当にできることが限られている。
昨日はとりあえずなんか食べとけとか思っていたくせに、急に飯なんかで余計な出費をしている場合かという気持ちが芽生えてきたので、朝食は駅前のドトールで済ませた。
ここの店員の女性が信じられないくらい愛想が良くて、人事的に評価されてほしいと切に思った。
何度でも言うが気球が飛ばない佐賀でできることは本当に限られている。
時間に余裕がある人に対しては、この日県内で開催されている「唐津くんち」というお祭りに行くことをJRが明確に推奨していて、わざわざそのための列車増便まで手配されていたが、私は断念せざるを得なかった。
こうなったらもう、吉野ヶ里遺跡で弥生時代に思いを馳せるしかない。
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日本史の教科書の最初の方にでてきたアレだ。
佐賀駅から3駅先に最寄駅があって、そこから少々歩いたところにある。
広大な敷地内に復元されたムラが展示されていて、思いの外没入感に浸れる場所だった。
この日は私のようにバルーンフェスタにフラれた層が相当数流入していたようで、チケットもぎりの人達が「今日は多い」と話し合っていた。
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竪穴式住居は中に入ることができる。
数箇所入ったが、私一人が中で静かにしている時に「このお家はなんだろう⁉️入ってみよう😆」みたいなテンションで家族連れが入ってきた時の発見された感には緊張させられるものがあった。
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電車で再び佐賀駅へ戻って、佐賀県庁に向かう。
ここの最上階の窓から、佐賀県と形が似ているという一点で招致されたゴジラを見ることができるのだ。
旅先どころか今住んでいる県の県庁にすら行ったことが無い身分なので新鮮だった。
このフロアには単価高めのレストランがあって、法事の服装をした人達や年齢層高めの方々が窓から佐賀を見下ろしながら入店待ちしていた。
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歩いて佐賀駅に戻り、駅構内の店の並びにある「うふふらーめん」でラーメンを食べた。
学生の客が多くて懐かしい雰囲気だった。
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もうねじ込める用事は存在しないので、電車に乗って佐賀を脱出。
博多駅で弁当やおやつを買い込み、新幹線でそれを食べながら帰った。
どらきんぐエースという生どら焼きが本当に美味しかった。杏仁豆腐味のやつが良かった。
気球は運。見られるまで行ってみようと思う。