第72回 さぬきdeタヌキ の巻
な、なんと突然の讃岐赴任を告げられるみちざねサン。動揺のあまりとっさにとった行動とは・・・?
道真はある日突然、「天職」である博士の任を解かれ、国守(地方国の長官)として讃岐(四国・香川県)への赴任を言い渡されます。
経営する菅原塾もノリにノっている絶頂期でしたから、これには道真もびっくり仰天でした。 学者から突然、一国の行政の長(政治家)です。
父・是善は長年 学者を続け、晩年は参議(今の国務大臣レベル)に出世、しかし生涯 京の都で過ごしました。
道真も父と同じ道を歩むイメージだったと思います。
自身、「(政治は)私の性分ではない」と言い切っていて、ショックで眠れない日々が続いたようです。(マンガではタヌキ寝入りしていますが)
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エリート学者の道真が畑違いの行政官、しかも地方勤務。
道真研究本の多くはこの人事を「突出しすぎた道真に対する左遷」と結論付けています。
しかし私個人的には逆の推測をしています。
道真ファンだから左遷ではないと思いたいわけではなく、事実関係を並べていくと、左遷にしてはおかしなことが多いのです。
以下、その理由を9つ、書いてみます。
①基経が「左遷」を了承?!
基経が、オキニ・道真のこんな突拍子もない左遷人事を了承するのは考えにくい。(頻繁に公文書の代作を依頼し、また漢詩トモダチでも。) 深い理由があったと考えられます。
②基経が道真に異常に気を遣っている気配が。
官位トップの基経がヒラの道真を公式宴に特別扱いで呼んで個人的な餞別の詩を詠んであげている。その上、後日 自宅でも餞別会をしてあげている。
③格上の勤務地に赴任させている(=特別扱い?)
讃岐は地方といえど格の高い国。歴代長官の官位は「四位」、でも道真は「従五位」。
在任中、たいした成果を上げていないのに昇進させてもらっている。これが左遷?
④副長官が仲良しさん
道真の超仲良しである平正範を副長官にしてもらっている。(この心憎いほどの気遣い!)
⑤讃岐赴任はエリートコース?
のちに参議(国務大臣クラス)として国政の中心をなす人物の多くは地方で現場経験を積んでいる(皇族系はこれに限らず)。例えば、讃岐前任者の藤原保則は、参議にまで出世している。
基経の息子・時平も、現地赴任なしとはいえ、讃岐権守(道真の副長官)になっている。
⑥帰京回数多い!
国司は任期中、1~2回の帰京を許されているが、道真は少なくとも3回帰京している(1回はおしのびで)。
これはやはり特別扱い?
⑦引継ぎせずさっさと帰京
任期満了後は次の国守に引継ぎを済ませてから帰京するのがルール。しかし道真は引継ぎもせずに任期満了とともに即行で帰京している。これでお咎めなし。
道真のことなので勝手に帰京するわけもなく、すぐに帰ってくるように命じられていた可能性が高い。
⑧帰京したらすぐ出世!
帰京してまもなく蔵人頭(=いまの首相補佐官?社長秘書?)に大出世。一気に殿上人、天皇の側近に。
ここで地方の状況を上長につぶさに報告し、改革プロジェクトを準備していたと思われます。
⑨改革は道真案がベース
財政改革は、道真の讃岐での現場経験に基づいたアイディアで進んでいくことから、最初から讃岐赴任は特命的な意味合いがあった可能性あり。