小説投稿5年間の振り返り、あと寿司打
webに初めて小説を投稿してから5年が過ぎ、寿司打がちょっとうまくなりました。こんにちは、蛙鳴未明です。
2019は去年じゃないのか……今まであまり年数を意識していなかったのですが、5年となると感慨深い。だって、高専生が卒業する年数です。(知り合いは7年通っていましたが)せっかくなので、5年間の軌跡を振り返っていこうと思います。
※以下めちゃくちゃ長い自分語りです。苦手な方はブラウザバックしてください。
・2019-20 調子に乗り、長編をエタらせる
2019年9月16日、カクヨムに初めて小説を投稿しました。投稿生活の第一歩です。
厳密にはその前からアルファポリスをいじったりしていたのですが、完成した作品をあげたのはカクヨムが初めてだった……と……思います、おそらく。
まあ、キリストは紀元元年生まれじゃないらしいし、正確な時期を気にしてもしょうがないのです。とにかく私の投稿暦は「あまいなt」という名義と共に始まりました。
カクヨム甲子園に応募したり、無謀な読書企画をやってあわついたりしながら、9月末、6or7作目となる『食堂』という小説を投稿します。これがいきなりホラージャンルで日間6位をとりました。もう完全に有頂天です。天狗の鼻です。
「自分は天才かもしれない、半年後には総合1位をとって書籍化しているかもしれない! 1年後には直木賞だ!」
アホです。
カクヨムのプロフィールページには『代表作』の欄があります。最も評価を得た作品がそこに表示されるのです。私の『代表作』は、五年間ずっと『食堂』です。つまりその後ずっと、カクヨムのランキングの土俵では鳴かず飛ばずな訳です。
そんなことを知る由もない私は、『食堂』によってブチ上がったテンションのままにホラー掌編をいっぱい書き、長編を構想します。「書籍化するにはやっぱり長編だ」と思った訳です。ろくにプロットを固めないまま投稿しますが、三話で行き詰まり、凍結します。
さすがに練り直し、年明けとともに改作『焔の帝国』を連載開始。『アルスラーン戦記みたいなのを書こう』がコンセプトでした。
愚か者です。あんな名作がほいほい書けてたまるものか。おまけに問題がありました。
実は私、その時点でひと文字たりとも『アルスラーン戦記』を読んでいなかったのです。どんな電波を受信したら読んでもない小説っぽい小説を書こうとなるのか。今となっては想像もつきません。結果的に、『エラゴン』と『グインサーガ』と『蒼き狼』と『ドラゴンラージャ』をごたまぜにしたような感じで物語は進んでいきました。
そして物語は完結しないまま、再び凍結されます。いわゆる「エターナる」「エタる」というやつです。
設定の膨張、物語の膨張、登場人物の際限ない増加、それぞれのキャラ立ち……それらを制御しきれなくなったのでした。pvの上下に一喜一憂し、何が書きたいか分からなくなってしまったのでした。
直後、和風ファンタジーを連載しはじめますが、それも10話で凍結、非公開に。あの当時作品を読み、温かいお声を下さった方々には、沢山の感謝の気持ちと共に、大変申し訳なく思っています。
以降、長編連載がちょっとしたトラウマになり掌編を書き連ねて日々を過ごします。落ち込んでばかりではいられません。いつの間にか二度目のカクヨム甲子園が迫っておりました。
長編で鼻っ柱を折られた私は『食堂』の成功体験を引きずっていますから、「もうとにかく短編、人が狂う話を書こう!」となります。それと純愛をくっつけて、恋愛ものを名乗りました。
これが見事に落選。ド級のカテゴリエラーです。それまで私が恋愛ものだと思っていたのは、耽美幻想ホラーだったのです。
今思えば、悪い結果ばかりではなかった。原稿用紙20枚以上の短編を書けたのは初めてでした。当時のTwitterの相互さんに「耽美においきなさい」とアドバイスを頂き、それは長らく支えになっています。
しかし高校2年生の私にとって、好きな人からの感想の方がずっと重要で、それは致命的でした。「気持ち悪い」とリジェクトされてしまったのです。まるで気分はシンジ君。ここで完全に心を折られ、私の旧劇は区切りを迎えました。
・2020-21 新天地でもぞもぞする
完膚なきまでに叩きのめされた私でしたが、それでも小説は書きたかった。なんてったって、作家は10歳からの夢なのです。しかしカクヨムではもう書けない、そういう心境でした。
ありていに言えば、自分の理想の反応と現実とのギャップに挫け、逃げ出してしまったのですね。そうして新天地に選んだのは「ノベルアップ+」。元から並行して作品を上げてはいましたが、すっかり引っ越そうと思ったのです。
「反応を貰いやすい」という噂があり、それは実際そうでした。カクヨムと比べて小規模ですから、「ニッチで頂点をとれるかも」という打算もありました。「ふつうの小説を書こう」と思いました。私はすっかり自信を打ち砕かれ、認められること、数字を得られること、それに呑み込まれてしまっていたのです。
「反応を貰いながら趣味で続けて、10年後20年後に運よく本が出せたならそれでいい。もしランキング上位にいって、早めに作家になれたらもうけもん」
そういうメンタルでした。去年まで「半年で書籍化、1年で直木賞」などと言っていたのが、えらい変わりようです。新天地への挑戦と、頭の中で何度も唱えていましたが、実質慰めてもらおうとしていたようなものです。
ノベルアップ+もカクヨムも、小説投稿の場として素晴らしいですが、慰めてもらいに行って、素直にはいよしよしと頭を撫でてもらえるところではありません。理想との乖離は当然ですが、それがまた傷を広げました。
・2021-22 書かない
情熱は冷えていき、おまけに受験がやってきて、私はほとんど小説を書かなくなりました。年末までに書いたのは1本だけ。他にも漫然と長編を書き出し、漫然とやめることを繰り返していました。冬眠のようなものです。来年になったら書こう、来年になったら書ける、そればかり繰り返し唱えていました。
桜が咲いて、新生活が始まっても、私はいっこうに書き出しませんでした。色々な負担があって大変だった、というのはそうですが、踏ん切りがつかなかったのはやはり怖かったからなのでしょう。
「また認められなかったらどうしよう。もし自分がつまらないものしか書けない人間だったら――」
そんなおそれがありました。文芸系のサークルに入ったはいいものの、まったく寄稿せず、そもそもサークルにもいかず……「書くこと」自体がイップスに陥ったようで、次第に学業の歯車さえ狂いだし、生活が落ち込みはじめます。
・2022-23 病んで公募に手を出す
秋が深まるにつれ、歯車はどうしようもなく噛み合わなくなっていきました。次第に焦りを覚え始めます。それは存在証明の焦りでした。
「私生活が終わってる。小説も書かない。じゃあ、自分のどこに意味があるのか?」
書き出します。とにかく難しいことは考えず、リラックスして……そうして書いた作品が、ありがたいことに褒められました。
自分の面白いと思うものが、他人にも面白いと思って貰えた――「面白い」というわずかな言葉が、私を再び小説に向き合わせてくれました。
小さな一歩を再び踏み出せたわけですが、同時に大きな躓きもありました。学業の崩壊です。それでも春を迎えるまではまだ楽観的でした。同じ失敗を二度も繰り返すはずがない、という根拠のない自信。それはお約束通りに破壊されました。
書いている時は充実していました。読書も充実していました。しかし、それ以外の日常は虚無です。ゲームに逃避し、虚無感にさいなまれ、アニメに逃避し、またさいなまれ……正直思い出したくはない。それらから逃れ、水面に空気を求めるように、私は公募に手を出します。
初手は「IP小説賞」でした。ライトノベルの序盤を選考する独特の賞です。落ちました。じゃあ、書き直そう。書き直して、もっといい形で世に出そう――その時なぜそう思えたのかは分かりません。おそらく、長編特有の熱病に侵されていたんだと思います。あらゆる面が面白く見える、あの感覚に。
本として出ることがないなら、出すところは決まっています、再出発です。リベンジです。元からずっとライトノベルに挑戦したかったのです。2023年6月、私は「蛙鳴未明」と名義を変えて、『サイケデリックドリーマー』を連載開始しました。カクヨムでは、ほぼ2年半ぶりの新作投稿です。
やってないことを全部やろう、やりたいことを全部やろう、見たことない景色を作ろう――壮大な志で始まった新作長編はひと月ちょっとでフリーズしました。
『ディスコ探偵水曜日』ご存じでしょうか。SF怪奇オカルティック推理超能力バトル探偵小説です。めちゃくちゃ面白いです。完成したサグラダファミリアくらいすごいです。
それを目指した私は、あえなく呪いの無限増殖幽霊屋敷、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスを生み出してしまったのでした。完全に前と同じ轍を踏んでいます。経験も力も、またしても足りなかった。
7月上旬には「長編へのチャレンジを進めながらも、もっと充実した短編を積み重ねて基礎をつくろう」という方向にシフトしていました。同時に、短編での自分の位置を知りたい、という思いもありました。『あたらよ文学賞』の原稿募集の記事が目につきました。
――「今」を生きるわたしたちがつくる文学賞
――面白い今を、もっと面白く楽しもう。
好きになりました。テーマは私の好きな「夜」でした。もっと好きになりました。しかし、なかなかアイデアが浮かびませんでした。
「私にしか書けないものはなんだろう。『今』の私は、一体何が書ける?」
誰にも書けない景色を書けるんじゃないか。少なくとも『サイケデリックドリーマー』では、誰にも見えない私だけの景色を書けていたじゃないか? 書いていて楽しい景色をとことん突き詰めよう――そう思いました。
〆切間際で一気に2本書き上げ、動悸を抑えながら応募しました。ひと月、生きた心地がしませんでした。一次選考の発表記事を読みました。1本は落ちていました。むべなるかな、と息を吐きました。限界までスクロールして、息を吞みました。『ツー・ミッドナイト・ノブレス』の文字がありました。
まさか、と思いました。いやいや、とも思いました。けれどしっかりそこにそれはいました。二次選考発表でも、そこにいました。
また、まさか、と思いました。それが叶ってしまいました。結果は優秀賞。私は部屋を夢見心地でうろうろと歩き回りながら、「私は『今』作家になりたいんだ」と思いました。
・2023-24 〆切に絶望し、函谷関を攻める
そうして迎えた春。しょっぱなからミスります。スケジュールを詰め過ぎました。公募10本、アンソロ3本。他にも書きたいものがいっぱい!
書いても書いても終わりません。倒しても倒しても〆切がある。寝ても起きても〆切がある。無限に立ち上がってくる。まるでゾンビかヒュンケルです。なんなのだお前は……と言いたくなります。しかしそれを決めてしまったのは自分なのでした。
自分を責めながら書くのは効率がよくないので、函谷関を攻めながらどうにか原稿を進めていきました。どうしようもないことに、〆切が明日でも労働しなければならないし、日々の雑事は山積みです。
そうこうしているうちにパソコンがフリーズする。アイマスに狂わされる。『Civilization6』に憑りつかれて300時間失ったりもする……そんなこんなで今に至ります。どうにかアンソロの締め切りをすべて倒し、以下の八本の公募に応募することができました。
4月
#書くしか
第2回「幻想と怪奇ショートショートコンテスト」
6月
日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024(さなコン2024)
神奈川文芸賞2024 U-25部門
第2回「あたらよ文学賞」
8月
第41回「織田作之助青春賞」
9月
第2回「カモガワ奇想短編グランプリ」
第12回 日経「星新一賞」
わたしえらい! なんで生き延びられたのか不思議でなりません。作家のエッセイによくある「〆切地獄」っていうのはこういうものなんでしょうか。それとももっと恐ろしいものなんでしょうか……
今から怖くて仕方ないんですが、〆切に追いまくられるって、それこそ「作家」らしくてちょっとドキドキしますね。不整脈かもしれませんが。
公募の話に戻ると、結果が出ているものについては全部落ちました。 ぱや! 第二回あたらよ文学賞も落ちました。正直めちゃくちゃ悔しいです。嫉妬もします。
「でも、それで作品の価値が落ちる訳じゃないし、きっと届く人がいる。もっと届けられるように改良することだってできるんじゃないかなあ」
……と自らに言い聞かせ、コーヒーに砂糖をぶち込んでいます。
今までの落選を数えると12回。今年は4回。着々とポイントがたまってきています。外食なら、お高めのトッピングが無料になります。
……話題は飛びますが、20ポイントでパフェやどんぶりが無料になるあれ、難易度高すぎないですか? 私はいつも2ポイントで止まります。カードがどっかいってしまうのです。
でも、公募は自分の経験がポイントカードになるので、なくす心配がなくてありがたいですね。あ、今いいこと言えたかもしれません。あと7、8本でいいことあるかもしれません。
……あと7、8体の〆切と考えると、胃が痛い。〆切は嫌いです。原稿は好き好き大好き超愛してる。6年目も、その先も。100年先、もっと向こうまで。ずっとずっと、死ぬまで書いていたいですね。
小説にはあらゆるジャンルがあり、詩歌にもあらゆるジャンルがあり……もっと広く見れば、あらゆる表現の基礎には「かくこと」があります。書くことに飽きるまで、いったい何年かかるのでしょう。今からわくわくしています。
今 寿司打がちょっとうまくなる
最初の夢は「小説家になりたい」でした。今は「小説家になって、一生書いていきたい」です。書くことがとにかく楽しいのです。そのために小説家になるのです。
「原稿用紙にして1万枚書けばプロデビューできる」という噂があります。
文字数に換算すると、だいたい300~400万字です。途方もない数字です。数字でいえば、私はまだデビューへの道を八割残しているそうです。
もう、一生書くしかないのです。なんか、さっきと同じようなことを書いている気がします。でも、大事なことは何度でも言った方が良いのです。
この前、『寿司打』をやりました。ご存じの方は多いと思いますが、簡単にいうと寿司食べ放題でどれだけ元をとれるか、というタイピングゲームです。2年前まで損してばっかりだったんですが、なんと2,000円も儲かりました。
たかが2,000円。本物でもない、タダの数字の羅列です。でも、2年分の2,000円なんです。〆切間際に原稿を回す悪癖が、2,000円稼いでくれたのです。これからも諦め悪く書き続けようと思います。
・おわり!
な~んか真面目な感じになってしまったので切り上げます!
紆余曲折ありましたね~、カクヨムに始まり、ノベプラに行き、書かなくなり、また書き始め。今では短編公募を主戦場に、カクヨムとnoteを作品置き場にしています。へーんなの。でも若人の五年ってこんなもんですかね。まだまだ未熟ですけれど、これからも温かく見守っていただけたら幸いです。
読者の方々、いつも応援してくださる方々、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。読み苦しい点があったらすみません。柄にもなく自分語りをしてしまってお恥ずかしい限りです。「作家なら作品で語れよ」とか言われそうな感じですが、ここはひとつこの記事自体がひとつの作品ということでご納得いただきたく……もっと面白いこと書きたいな。
(おしまい)
関連リンク
・カクヨム
4千字くらいまでの掌編が多いです。気紛れ更新
・SNS
1日1本140字小説を投稿したりしています。メインはblueskyかな。
掲載作全てが光る、読み応え抜群の素晴らしい一冊です。10月には第2回「あたらよ文学賞」の受賞作発表を控えております。テーマは「青」! 有限会社EYEDEAR様のnoteも要チェックです。
個人的メチャ推し企画です。私も応募しました。「書くしかないひとたち」によるエッセイを200篇集めた商業書籍を作ろう、というもの
〆切は12月31日24:00! まだまだ間に合います! ぜひぜひご応募ください!
なんぞの感慨を覚えたら、5年後にもこういう記事を書くかもしれません。その時再会できたら嬉しいです。それぞれ頑張りましょ! ではまた!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?