編集者という仕事を分解してみた(1)
編集者の仕事ってどんなだか知ってますか?
『アメガミチルヨ』を作っている最中、私は編集者としてずっと作者のナカソネヒロシさんに伴走していました。それで、この本を作り終わって、読書会をしたり、色々な方から感想を伺っていたのですが…。
「世間では、編集者の仕事って全く理解されていないのかも。。。(ガーン)」
と痛感してしまったので、今回改めて私が出版編集者として何をしてきたのかを、『アメガミチルヨ』を題材に説明しようと思います。
ナカソネさんにも快く承認いただけました。ありがとうございます!
出版編集者についてざっくりと説明しよう!
まずざっくりと、私がどんな仕事をしてきたのかを説明します。
1.絵本コンセプトのブレストや壁打ち相手
2.ナカソネさんから出てきた文章の校正・吟味・提案・アレンジ
3.本文のデザイン制作&ナカソネさんの写真や表紙デザインへの吟味・提案
4.全体スケジュール製作
5.Amazonからの出版準備
6.文学フリマへの出店準備と出店販売
7.広告&SNS告知の制作と出稿
8.在庫管理
9.売上管理・お支払い
大体こんな感じです。
要は世の中にまだ生まれたことのないものを、作家さんと協力してゼロからとことん作り上げ、みんなに知ってもらい、販売して収益を上げる。という一連の流れを全部手掛けているのが出版編集者となります。
もちろん大きな出版社では、それぞれに担当者を付けて効率よく分担するわけですが、私は自分出版社なのですべて一人で行います。
同人誌を作っていると思えばわかりやすいでしょうか。文学フリマにも素晴らしい編集者さんがいっぱいでしたね~。。。(また行きたい。。。)
さて、次は出版編集者ならではかな?と思う、大切なポイントについてちょっと掘り下げたいと思います。
人と人として互いに胸襟を開いて信頼し合うことで作品が生まれる
一番大事なのは最初のフェーズです。
作家さんがいる場合、書きたいことがあっても、なかなかまとまらないことがよくあります。ナカソネさんの場合、去年の7月から週に一度の定期的な打合せを始めたのですが、実際に絵本のお話を書き始めるまでに8か月ほど必要でした。
それまで何をやっていたの?と思うんですが、主に雑談ですww
雑談をするのには理由があります。
まずは、お互いのことがよくわからないところから始めるので、信頼関係を築かないといけないんですね。
雑談をすれば、お互いに1対1で対話することになるわけです。何回か雑談を重ねていくうちに、「この人は人間として信頼できる人だ」と感じられるようにもなっていく。漠然とですが、そうした効果を考えて雑談をしているのだと思います(しょっちゅう道を外れますが笑)。
ちなみに、ナカソネさんが私を信頼できたのは、雑談からにじむ人柄や「深呼吸する言葉」という私が出版した本を読んで共感したからだそうです。
壁打ち相手をするときは、ファシリテーターのように!笑
ファシリテーターというのは、私のイメージでは、相手の世界観を否定せずそこに全共感して、同じ方向を見ながら相手が先に進むサポートをする役割です。
編集者も作者と企画を練る作業をするときには、ファシリテーターとしての役割を果たしています。言うならば「企画ファシリテーター」でしょうか。
内容的なところで言うと、最初のころは雑談がメインです。お互いの仕事の様子を報告し合ったり、家族の話をしたり、AIやメタバースの話をしたり、トラブった話をして笑いあったり…おっともちろんスケジュールや本の作り方の話もしていましたが、割合としては雑談:本づくり=8:2くらいだったでしょうか。
途中でナカソネさんから絵本のシナリオが提示され、段々本作りの話の比率が上がってきました。シナリオのFBやアイディアの追加や相談など。それでもせいぜい5:5か笑
最後、Amazonでの販売日を決定し、文学フリマに出店することが決まってからの2か月は、いよいよデザインに流し込んだり、読者に読んでもらって写真を作り直したり文章に手を入れたりしていたので、3:7くらいに比率が逆転しました。
この間私が気を付けたのは、できあがってきた信頼感を裏切らず継続することと、ナカソネさんが出した絵本の卵を大きく育てるために、ナカソネさん以上にナカソネさんらしさを考えてアドバイスをすること、最後に読者の目線に立ったときの魅力を考えて方向性のかじを取ることでした。
本を出し終わってからナカソネさんに言われました。
「滝さんとは本当に仕事しやすかったです! 感謝♪」
こういう関係性が紡げると、仕事はスムーズに進むようになります。実際、お互い胸襟を開いて人として付き合う関係性ができたあとは、ナカソネさんの方から勝手にアイディアを出したり、物語案を作って見せてくれたりするようになりましたから。
行動で信頼を積み上げる
ちょっと考えてみてほしいのですが、まだ一度も人に見せたことがない作品の卵を、どんな反応をしてくるかわからない相手に見せるのって怖いと思うんです。友達だってきついかもしれない。
編集者はその辺プロですから、ちゃんと受け止めます。前向きにまっとうに建設的にフェアに。でも、そういう心がけを「相手に対して」持っているかどうかは、相手の話を聞いて出てくる私の言葉や感情、態度でしか伝えられません。つまり、「行動で信頼を積み上げるしかない」んです。口八丁手八丁じゃとてもじゃないけど伝えられない。
作品をいいものにするために、まずは作者の中のベストを出してもらう。それが世間の眼鏡にかなってなくても一切構いません。
周囲を気にせず、自分からあふれ出るものを素直に表現できること。それを共有できる素晴らしいパートナーがいること。
こうした関係性を作家と編集者で作れるかどうかが、実はいい作品を作れるかどうかの分水嶺なんです。
・・・
おっと、話が長くなってきたので、続きは次回に回します。
次へのモチベーションにつながるので、もし読んでくださった方がいたら、いいねをいただけるとめちゃくちゃ嬉しいです。
ちなみに今回題材にしている『アメガミチルヨ』はAmazonで購入できます。よかったら手に取ってみてください。
ではまた次回!